前回に引き続きファースト・アルバム「Are You Experienced」セッションの後半部分から始まり、そろそろセカンド・アルバム「Axis: Bold As Love」に入ろうかという移行期。
【通しNo./曲名/時間/収録アルバム名/録音日・場所(演奏者、ゲスト、オーバーダブなど)】
Purple Haze
【No.31】は不自然な位相のステレオでイントロ途中から始まり、間奏からはモゴモゴと無気力なバック・ヴォーカル(左右チャンネル)と終盤の早回しギター(右チャンネル)が極端に大きくバックの演奏が小さくミックスされ、最後いきなり切れる。
【No.32】はリード・ヴォーカルが生々しいモノ・ミックス。途中でバック・ヴォーカルが大きく入ったりバックの演奏が中途半端に消えたりして最後はフェイドアウト長め。
【No.34】は、間奏のギター・ソロは正規ヴァージョンと同じようだがヴォーカルと一部のギターが別テイク。バック・ヴォーカルが不気味。エンディングがかなり長めに収録され、早回しギターのオーバーダブは無し。ここで終盤に聴けるギターはその早回しされる前の状態なのだろうか。
The Wind Cries Mary
インストの別テイク【No.35】はステレオで左右2本ギターが入っていて、正規ヴァージョンでは聴けないギターの絡みが全編に渡って味わえる。
この曲は元をたどればギター奏法も含めカーティス・メイフィールドの影響が強いのではないだろうか。 半音階で上昇する特徴的なフレーズはマイルス・デイヴィスが1968年の「キリマンジャロの娘」所収 "Mademoiselle Mabry" で引用するが、実際の仕掛人はギル・エヴァンスという説が有力で、後々への繋がりはここから既に始まっている。
I Don't Live Today
【No.37】ステレオでダブル・トラックのヴォーカルが入る take 5(エンディングが長め)以外はモノラルのインスト・アウトテイク。
Remember
【No.39】は完成に至るまでのドキュメント。すべてモノラルで最後のテイクのみヴォーカル入り。完奏すると次は "Manic Depression" へ取り組もうとしているのが聞こえる。
Manic Depression
【No.41】は順番が入れ替わっているようで、初めにヴォーカル入りの完成テイク、その後にインストの未完成テイクが続く。歪みまくる奔放なギターが聴きもの。モノラル。
May This Be Love
別名 "Waterfall"。正規ヴァージョンではヴァースの一節のみダブル・トラックになるヴォーカルが【No.44】では終始シングル、【No.45】では終始ダブル。【No.44】はエンディングがわずかに長い。【No.45】では曲前半にギターが一本多く、正規ヴァージョンには入っていないフレーズを弾いている。(「The Complete Are You Experienced Outtakes」収録の "unknown mix" は正規ヴァージョンと同じに聞こえる)
Highway Chile
【No.47】は最後まで完奏するステレオ・ミックス。ボックス用に新たに作られたようだが広がりはそれほど感じられない。
Are You Experienced?
【No.48】はシンプルな一発録りのデモみたいなインスト・テイク。
【No.49】を聴くと逆回転ギター・ソロが実際どんなフレーズを弾いていたかわかる。とはいうものの、これは正規ヴァージョンをただ逆回転再生しただけかも。妙に音が悪いのも怪しい。
She's So Fine
【No.51】はノエルが投げやりに歌う初期テイク。バックのコーラスが入らない。演奏自体は正規ヴァージョンと同じようだ。
Taking Care Of No Business
"My Friend" に近いリラックスしたニューオリンズ風お遊び曲。元はジミの歌とギター、がやがやノイズ(酒場の雰囲気を醸し出す)にタンバリンだけだが、ずっと後にチューバとサックスがオーバーダブされたのが【No.54】。1987年に(1988年説もあり)チャス・チャンドラーがノエルとミッチを呼んで、ジミの未発表曲数曲に新たに音を被せるセッションが行われた。結局当時はリリースされずお蔵入りとなったが、だいぶ後になって「Valleys of Neptune」で一部が日の目を見た。
Mr. Bad Luck (Look Over Yonder)
上記のオーバーダブ・セッションで取り上げられたうちの一曲。「Valleys of Neptune」でオーバーダブ・ヴァージョン【No.57】がまず公開され、その後「West Coast Seattle Boy」で元のテイク【No.56】を蔵出し。一年半後のリメイク【No.58】では "Stepping Stone" のリフに似ている中間部が付け加えられる。ここから年月を経て全く別の曲へと発展していくのかと思うと感慨深いものがある。元を辿ればファースト・アルバムのセッションで録られた【No.55】が原型と思われるのだから、まるで大河ドラマだ。
Cat Talking To Me
【No.60】これも1987年オーバーダブ・セッションから。元々のインストにミッチのヴォーカルを新たに被せている。「Valleys of Neptune」からのシングルでこっそりと正式リリース。なお、ハーフ・オフィシャル「Message From Nine To The Universe」に入ってる "Lonely Avenue Jam" は【No.59】と同じ。
If 6 Was 9
【No.61】はモノラルの初期ミックス。正規ヴァージョンでは削除された中間部分(1:30〜1:50)が余分に入り、足踏みの音が大きめ。長めに収録されたエンディングで吹き鳴らされる笛はエフェクト処理される前で、生に近い音だ。
last updated: 2013.4.2
Part 3 に続く
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