1999 Highfield Award

●新作部門・金賞

Cibo Matto - Stereotype A

Cibo Matto Stereotype A
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Cibo Matto Working For Vacation
ニューヨーク在住日本人女子2人組。今回はバンド編成になっており、ショーン・レノンもメンバーの一人(ベース、他)。ヒップホップ、ボサノバ、ヘビメタ、プログレなど様々な要素が混在していて、ただ聴いて気持ちいい音響としても最高だが、さらにその上、楽曲の良さが際立っている。これほど新鮮なメロディを紡ぎ出す本田ゆかの才能には恐れ入るばかり。羽鳥美保のヴォーカルも力強さの中に微妙な色気があり、これまた良い。聞き逃していたデビュー作「VIVA! La Woman」(ミッチェル・フルーム&チャド・ブレイク絡み)も素晴らしかった。

写真下はアルバム未収録2曲を含むシングル。
Working For Vacation / Everybody Loves The Sunshine(Roy Ayers のカヴァー)/ Vamos A La Playa


●新作部門・銀賞

XTC - Apple Venus Vol.1

XTC Apple Venus Vol.1
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7年振りの新作。第一印象としては、地味だなぁ、クォリティが高いのはわかる、でものめり込めない、ウキウキするようなポップ感覚が引っ込んでしまってる、とガッカリ感があった。高度で複雑な曲作り、オーケストラ・アレンジが重要なウェイトを占めていることもあって、コステロ&バカラックのアルバムを聴いた時と近い印象を受けた。やはり「Painted From Memory」が今では愛聴盤になってるのと同じく、これも聴けば聴く程その美しさに感動する。全曲のデモ・ヴァージョンを収めた盤も出て、そのボーナス・ディスクで曲作りの過程を作者自ら解説したものもかなり面白い。

XTC の変名プロジェクト The Dukes of Stratosphear CD の最後を飾る名曲 "Pale And Precious" には、もろに "Good Vibrations" な部分があるが、メインであるスローな部分は新作に通じる雰囲気があるように思われる。「Oranges & Lemons」の "Chalkhills & Children" しかり。(近年の XTC はアルバム最後に壮大で感動的な曲を持ってくる傾向にある)


●新作部門・銅賞

Ron Sexsmith - Whareabouts

Ron Sexsmith Whareabouts
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一曲目からいきなり涙腺直撃(そういやデビュー作もだったな)。ますます曲作りに磨きがかかり、ミッチェル・フルーム&チャド・ブレイクの音作りがいつになくオーソドックスなこともあって、普遍的な歌ものアルバムに仕上がった。この人は声の魅力も大きい。


●新人賞

Sixpence None The Richer

Sixpence None The Richer
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Sixpence None The Richer There She Goes
米国のグループ 女一人男二人。ヒットした "Kiss Me"(名曲)は、爽やかなネオアコ風ポップでヴォーカルはフェアグラウンド・アトラクションを思わせるが、アルバム全体を聴くと、一筋縄では行かない。曲が切れ目無しに続いていったり、スペイン語(?)の変拍子プログレがあったりする。コクトー・ツインズ辺りのニューウェーヴ的臭いも感じられる。大部分の曲を作ってる Matt Slocom は侮れない。

写真下は The La's の "There She Goes" をカヴァーしたシングル。この曲、手持ちの輸入盤アルバムには未収録だったが、国内盤と現在出回っている輸入盤には追加収録された。
There She Goes (LP version) / There She Goes (Ben Grosse mix) / Kiss Me (acoustic version)


●再発/発掘部門

The Collectors' King Crimson Vol.1

The Collectors King Crimson Vol.1
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聴いた回数としてダントツなのが、この3枚組。日本版は編集されて短くなってるとか、些細なことが気になり、夏の暑い時期にクリムゾンの音の悪いライヴ・ブート類を各種聴きまくる羽目になってしまった。

参考のため、このポニーキャニオン盤とDGM通販盤(バラ売り)との相違点について書いておくと、大幅に違うのは「Marquee 1969」で、1曲("Epitaph")丸々カットされている他、ボーナス・トラックに入ってる全くの未発表曲 "Trees" が頭3分で唐突に切れてしまう(DGM盤は18分位)。美しいコーラス("Islands" の原形とも思われるメロディ)の後、マクドナルド&ジャイルズの "Birdman" の原形、さらに "A Man, A City" のインスト部につながるという、あっと驚く展開があるらしい。音が極悪で仕方なかったのだとしても、これをカットされたのは非常に残念。「Jacksonville 1972」では "The Sailor's Tale" のドラムソロが4分ほどカット。他にも3枚共全体に曲間部分が細かくカットされているようだ。

日本版を聴く限り、カットに気付かないよう自然に編集されているから、これはこれでいいかな、と思う。マニアじゃなければ、これで充分。内容的には「Marquee 1969」が最高(音は最低だが...)。「Bremen 1972」はジェイミー・ミューア入の貴重なスタジオ・ライヴで、1曲目はかなり長い即興。3曲目("Larks 1")はビート・クラブのビデオで出たことがある。モノラルだが、音質は3枚中最高。


●映像部門

The Beach Boys - The Lost Concert

Beach Boys Lost Concert
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1964年3月14日、テレビ用スタジオ・ライヴを登場から退場までノーカット収録の全9曲22分。生々しくて良い。マイクの振り付け(ムーン・ウォーク?)と二音サックス・プレイ(笑)、デニスの力強いドラム、ブライアンがリキむ“パパ・ん〜・マーマー”に笑みがこぼれる。トゥトゥトゥッというコーラスは "All Dressed Up For School" と同じだ。国内版には当時の映画の予告編をボーナス収録。これも楽しい。これで「T.A.M.I. Show」の意味が初めてわかった(笑)。

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