ヤクザ石日記(2)薬瓶

「病院で処方箋をもらったから、それを取りにきて欲しい」と、足の弱い老人から電話がかかってくる。
それで取りに出向き、うちに戻って調剤し、また届ける。
いっしょに歯磨きと洗剤などを頼まれることもしばしば。

しかし、その老人は独り暮らしではない。家には子供夫婦がいるし、中学生や高校生の孫もいる。

「いつもすまないな。この紙を薬局に持っていっておくれ。時間がかかるようなら、届けてもらうようにする。薬局には予め電話しておくからね。」 こんなことを家族に言えないようだ。

家族に気をつかって遠慮しているのか、仲が悪いのか。

その家族の中でも、嫁はどうなのだろう?
共働きしているようだが、通勤途中に薬局はあるというのに、義理の親の面倒はみられないほど忙しく疲れているのだろうか。そして、それをダンナはどう思っているのだろう。

その家に薬を届けると、その嫁さんも孫もいる。
オレは笑顔で薬を渡しながらも、「どんな事情があるかしらんが、おまえらが動けよ!」と心の中で呟いている。

病院の前にあるチェーンの薬局ではするはずもないサービスが可能だからこそ、そんな患者さんもうちを利用してくれるわけで、そのことは十分承知している。

しかし、家族ってこんなものなのだろうかと、世間知らずのオレは思うのだった。

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