つい先日のことだけど、夕方に見慣れない薬剤(外用薬)が記された処方箋を持った患者さんが来店した。
うちに在庫が無かったので、近隣の同業たちに電話で確認してもどこにも在庫がないし、夕方だったのでこれから卸に発注しても翌日納品になってしまう。
継続している慢性病の薬なら、患者も手持ちに余裕があるから、明日取りに来てもらうことで納得してもらえるのだが、その薬剤は皮膚の潰瘍部位の肉芽形成をするもので、要するに、ただれた皮膚にすぐにでも塗布しなければならないもの。
困った!
仕方がないから患者さんには事情を説明し、家に待機してもらい、卸までこちらからそれを取りにいって、一時間後に患者さんのお宅に届けたのだった。
その処方箋を発行した医師は、この薬剤を自分のところに在庫していないので、どこかの薬局なら置いているだろう、と、無責任に処方箋を患者に持たせたようだ。勝手なものだね。しかし、医薬分業とはそういうものであることも事実なのだ。
その患者さんはひとりで来たが、見るからに貧弱な体をしていた。35歳の女性だけど、18歳くらいにしか見えない。足はまるで腕のように細いし、要するになんらかの原因で発育障害を抱えている方だった。(処方箋は福祉医療の番号が入っていた)
翌日、その女性がやってきた。彼女はパン屋で買った焼きたてのパンを持って「きのうはありがとうございました」と丁寧にお礼を言った。
それも潰瘍を負った足を引きずりながらやって来たのだ。家族はいるようだが、自分の足でやって来たのだ。
患者さんの立場からすれば、薬局に行けば当たり前に薬をもらえるはずなのに、在庫がないのは薬局の責任、と思うのが普通一般のこと。
(で、なにを言いたいかというと、)
彼女の親は彼女に素晴らしい教育を授けていると思ったのだ。
人に対する真の思いやりというか、真のやさしさというか、そんなことをちゃんと教えてきたんだろうな、と思ったのだった。