この歌詞はとんでもない残酷なものだ。
恋愛の終局において、男と女では、根本的に感情の持ち方が異なることは、様々なところでよく語られている。
−男はロマンチックに、女々しく引きずる−
−女は泣くだけ泣いて、後々引きずらない。等々...
この曲の歌詞は、女側から「あなたからすれば、私はただの幻だったのだから、目を覚ましなさい」「未練がましい男よ、現実を直視せよ!」と、やさしい旋律で辛辣に語りかけている。しかし、メロディに騙されてしまってはいけない。そして、逆に美しいメロディに乗せているからこそ、この歌詞が非常に生きている。
反論もあるでしょう。
《これは女の強がりであり、素直になれない自分を責めている−のであって、ウラを読みとれないのかい?》
そうかもしれない。いや、作者・尾崎亜美はそのつもりだったと想像する。しかし−
オリジナル当時10代後半の年頃の杏里の歌唱は、初々しく、しかもドライだ。それは、幼児の計算のない無垢なふるまい−の残酷さに似ているような、だから、こんな残酷な歌詞をサラッと歌われると、男側からするとたまったモノではない。それが、リアリティというもの。だから名作なのだ。
ところが、あとでセルフカヴァーした作者の歌唱は、感情過多でベットリとしていて…。(Miles Davisのトランペットが、ノンビブラートだからこそ深い感情を表現出来ることを、一度、彼女に知ってもらいたいものだ)
なぜこんなことを書こうと思ったか。
それは、今日夕飯時たまたま観てしまった、NHK素人のど自慢全国大会の決勝で、優勝した女性が、この「オリビアを聴きながら」を歌っていたからだ。
見事に感情を込めて歌い上げていて、正直ウンザリしてしまった。いや、彼女は勝つためにそのアプローチをしたのだし、現に優勝したのだからそれはそれで良いのだろう。
しかし、なにかチガウンダナァ… 個人的には。このウタは歌い上げないでほしい。
元々苦手な番組なのですぐチャンネルを替えてしまったが。
2001.3