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1.人間モドキ 対 人間モドキモドキ

モドキは今日一日、一人だった。
寂しがりやのモドキにとって今日は、きつい一日だった。
そして夜、寂しさのあまりテルキに電話しようと、受話器を取った。
すると、だれかが話しかけて来た。もちろんダイヤルは回していない。

「オレは人間モドキモドキや、お前は今、寂しい、休みたい、眠たい、やりたい、腹へった、ビール飲みたい、帰りたい、とちゃうか?みんなわかってんねんでェ〜、プー!」
人間モドキモドキは、えげつない大阪弁で、最後に屁までこいて、モドキの心の中を全部、言い当ててしまった。

モドキにはめずらしく、一瞬言葉を失ってしまった。
その沈黙につけこんで人間モドキモドキは
「どうや、ズボシやろ、ズボシでっしゃろ、うめボシ、ケツ毛、プー!!」

「ハッ!!」モドキは気がついた。最後のしょうもないシャレと、ケツ毛とプーでわかった(プーは、モドキの口グセだった)。これは人間モドキ自身、そう、モドキ自身の声だったのだ。そうとわかったモドキは落ち着いて言った。
「オレは、この欲求を満足さすために頑張ってるんやんけ!! ワレ!! 頭を二つにワレ!!」
すると人間モドキモドキは受話器の向こうで二つにワレてしまった。

そして、後には「プーーー」という音が残った。



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2.人間モドキの「タイヤもんど」

モドキは久しぶりに荒野のアスファルトの道の上に現れた。草木が風にそよぐ音が懐かしすぎていやだった。
ここへ来るとモドキはいつも胸がキュー!と苦しくなって、たいへんいやだった。
それは、モドキが生まれた場所だからだ。

暗く重い気分になったモドキは、イモムシになって這いながら、アスファルトの道を登って行った。4キロほど登った頃か、前方からタイヤが一つ転がって来た。それは、真っ黒で、攻撃的で、殺気さえ感じるほどだった。

それは、近づくにつれてどんどん大きくなり、速度を上げて来た。明らかにモドキを狙っている。

モドキは逃げた、逃げた、しかし、なかなか進まない。
「あっそうや、イモムシのままやからや」
気がついたモドキは焦ってしまって次はカメになった。これも大失敗だった。

アホなことをしている間にタイヤは一段と大きくなり、もうあたりが暗くなるほど近づいていた。モドキはたいへん焦りまくって、次はダチョーになろうと考えた。
「うん!これなら速い、逃げられる!!」と思った瞬間「キーン」耳鳴りがして、スローモーションのように時間がゆっくり流れだした。
そう、もう遅かったのだ。

巨大なタイヤはモドキの足を捕らえた。「ゴリッ!!」とにぶい音がした。タイヤは着実にモドキの身体にのしかかっていった。
「グリッ!! ガリッ!! ビチャ!!」内蔵が破裂して飛び出た。
「グチャ!! グチョ!!」「ボコッ!!」頭まで完全に砕け、脳ミソがうまそうに流れ出た。モドキの身体は、毎週水曜日の生ゴミのようになった。あたりは、まったく何もなかったように静まり返っていた。

何時間、過ぎただろうか、地熱でアスファルトは熱くなってきた。その温度で生ゴミのモドキは溶けだし、アメーバーのように、ドロドロになった。

アメーバーのモドキは、アスファルトを流れだした。そして、アスファルトのひび割れた部分から地面にしみ込んでいった。アリさんの巣を通過、卵を5個吸収した。カブトムシの幼虫、腐った木、ネンバン岩、貝ガラ、アンモナイト、どんどん地中深くしみ込んでいった。そしてあらゆるものを吸収し、ついに、マグマに達した。

マグマが苦手なモドキは急いで地上に向かって上昇した。すごいパワーですごいスピードだ。

そう、モドキは完全によみがえっていたのだ!!
地上に出る途中、アリさんがほれぼれしながらモドキを見送った。

地上に出ると大観衆がモドキを迎えた。すごい歓声、拍手だ。
見まわすと、いるわ、いるわ、モドキの友だちが、石、クギ、ブランコ、カエル、カメ、ヤドカリ、犬、猫、トンボ、ザリガニ、ウンコ、テルキ、田中、保坂、手、輪ゴム、バット、ギター、タブラ、カルマンギア、ダヨーンのおじさん、ほか、そして、タイヤ。

そこでテルキがしゃしゃり出て来て、モドキに「何か一言!!」
モドキは目を赤くして答えた。「へーこいて、プー!!」
「オー久しぶりに、へーこいて、プーが出たぞ!!」とテルキ。
「オー久しぶりや、久しぶりや、それに、磨きがかかっとる!!」とすごい歓声。
「やっぱりモドキは、へーこいて、プーや!! しぶいのー!! たまらんのー!!」とテルキ。
そして改めてモドキが大きな声で言った。「へーこいて、プー!!」
すると、大観衆にじわじわと広がっていった。
「へーこいて、プー!!」「へーこいて、プー!!」すごいうねりだ。
そしてテルキが悪のりして、言わんでもええのに合いの手を入れだした。
「へーこいて、プー!!」 「あっそれー!!」
「へーこいて、プー!!」 「オー!!」
「へーこいて、プー!!」 「あっよいしょ!!」

そして夜遅くまで「へーこいて、プー!!」は夜空に、ひびきわたっていった。



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3.ひまわり娘

「お宅、顔色悪いですネ」モドキが医者に言った。
すると、医者は微笑みを浮かべて、モドキに言い返した。
「あたりまえですよ。僕は身体を太陽から守っていますから」と優越感さえ感じる口調で言った。
そうなのだ。日焼けは、シミ、ソバカスの元で、メラニン粒子のバランスがくずれ、シミになり老化が進むのである。これをヨシミと言う。

モドキは医者が避けている、そのヨシミになんとなく親しみをおぼえた。そして、モドキは空に向かって、友だちのひまわり娘を呼んだ。
「ひまわりムスーメ!!」独特の言い回しにリバーブがかかり、空高くこだました。すると雲の上からひまわり娘が、シミ、ソバカスだらけの元気いっぱいの顔で勢いよく、駆け下りて来た。医者は、汚いものでも見るように、ひまわり娘を見た。

モドキが言った。「この、ひまわり娘は、ちゃんと死ぬ。お宅は・・」と言いかけたが、モドキの言葉をかき消すように医者が言った。「わしは、長生きがしたいんじゃ」
冷静な医者にしては、珍しく「したいんじゃ」ときた。モドキは、いらだった。この医者は、勘違いをしている。健康に生きることと、長生きすることとは違うのだ。そして、モドキは、この医者を死なないようにしてやろうと思った。この医者の時間的存在の線を切ったのだ。

医者は、時間を越えて生き続けた。そして、142才の時に横断歩道で車にはねられた。頭蓋骨、あばら骨、骨折、足首ねんざ。医者は死なない。頭は、側頭部がへしゃげ、血が流れて、胸は、ふくれ上がり、足は、びっこをひいて生活を続けた。

医者のもとへ治療に来た患者は、医者を見て全身の毛を逆立てて、飛んで逃げた。そして、一人も患者が来なくなり、医者は、メシが食えなくなった。半年ほどメシを食っていないが、医者は死なない。

医者は自殺しようと、いろいろやってみた。睡眠薬をがぶ飲み、首つり、飛び降り、ガス自殺、そして、包丁で全身を切りつけた。

医者は死なない。左目が飛び出て、頬のあたりまで垂れ下がり、腸は地面を引きずり、時々踏んでつまづいた。そして、一ヶ月ほど経つと、ウジがわき出した。腹部を這いまわり、医者はくすぐったいので、ウジをはらいまくったが、ウジの方が速く、ほとんど全身を這いまわりだした。遠くから見ると、医者の身体は波打っていた。
そして、それからも医者は、永久に生き続けた。

一方、ひまわり娘は、健康に元気よく生き、気持ちよく、生き生きと死んだ。そして、ひまわり娘の種からは、第二のひまわり娘がシミ、ソバカスだらけの顔をした。
                        (日焼けのしすぎには気を付けよう)



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4.マヨネーズ

キミは、小さい頃から、マヨネーズが好きだった。何でもマヨネーズをかけて食べた。

ご飯、漬物、チョコレート、ブドウ、カレーライス、みそ汁、おでん、おはぎ、かき氷、そして、何もない時は、マヨネーズだけをチューブごと口にくわえて、ズズズーッ!!と、まるまる一本を吸い上げた。さすがにその時は、頭がキーンとなって痛く、クラクラした。

そう言えば昔、チューブに、ドロドロのチョコレートが入っていて、それを、ズズーッ!と吸ったりして、何がうまいのかわからないが、それで口の中をいっぱいにして、ニチャー!と笑ったりなんかして、たいへん気持ちの悪い食べ物があった。そして、最後は、チューブのケツを破って開き、ベロベロなめたりした。そういう気持ちの悪いのがキミは好きだった。
「女の子」と書いて、「好き」となる、マヨネーズ。

キミは、天ぷらを腹いっぱい食べて「食い過ぎて、気持ち悪い」と言っているヤツに、「豚の白身のブルブルのヤツを、ドンブリ鉢にいっぱい食べたら治るでェ」と言った事があった。
すると、そいつは「エッ!?」と言った後、想像して急に吐きそうになり、キミは、どつかれた。しかし、結局そいつは吐いて、スッとした。キミは、そいつの吐いたヤツを鉄板で焼いて、マヨネーズをかけて、、、、、、

キミは、カゼをひいた時に、セキをしたらタンがからんで、生ガキのような、緑色のタンが口の中に出て来たので飲み込んだ。そして、ハナをすすると、ズルッ!と黄色いヤツが口に入って来た。これまた飲み込んだ。そういう事を繰り返していると、胃ぶくろが、ハナやタンでいっぱいになった。そして、ゲップが出た。

そして、キミは、透明の容器の中に、ハナやタンがいっぱい詰まっている、マヨネーズがあればいいのになァ と思ったん!!



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5.人間モドキの「エ〜〜〜〜〜!?」

モドキは、そこは大平原で、遠くにはエアーズロックのような、エベレストのような、生駒山のような、たいへん美しい山並みが連なっている。そして、その大平原には、この世のものとは思えない色づかいの花々が咲きみだれ、金色のウブ毛で包まれた妖精が、オーロラのように舞っている、という夢をしゃがんで見ている、という夢を笑って見ている、という夢を風呂に入りながら見ている、という夢を肛門に指を突っ込んで見ている、とおもろいなと思って起きていた、という夢を見ていた。

そして、その妖精の身体がモヤがしだいに晴れてくるように透け始め、そして消えてしまった。モドキは悲鳴に近い声で叫んだ。
「オーイ!! 待ってくれー!!」

夢が覚め出した、「ハッ!!」と気が付くとしゃがんでいた、「ハッ!!」と気が付くと、モドキの顔は笑っていた、「ハッ!!」風呂に入っていた、「ハッ!!」モドキはやっと目が覚め、肛門に突っ込んでいた指を抜いた、「ハッ!!」本当に目が覚めた。

そして、モドキは飛び起きてキャンバスに向かった。モドキはあの妖精を描こうと思ったのだ。モドキは調子よく描き始めた。しかし、モドキは何か不思議な気分になって来た。モドキ自身、描いているという実感がなかった。筆が勝手に、完璧なタッチで夢に出て来たそのままを、スラスラと描いて行くのである。そして、アッという間に、あのなやましい妖精がキャンバスによみがえった。そして、なぜか、妖精の手に筆を描きだした。

その筆の先端部分を描いていると突然、モドキの筆が止まり、かなしばりにでもあったようになり、眼球までも動かなくなってしまった。すると、今度は、妖精の筆が動き出した。逆に妖精がモドキを描いていたのだった。

妖精は遊び出した。モドキの顔に、○×などを描いて、ケラケラ笑った。モドキは動けない。次は、モドキの股間にキンタマとチンポを描いた。モドキは動けない。そして、ご丁寧にも毛まで描いて腹をかかえて、苦しそうに、涙まで流して大声で笑った。
モドキは心の中で思った。「しばいたろか!!」

妖精は長い間笑って、やっと笑いがおさまると、その落書きを消してモドキにキスをした。すると、かなしばりが解けた。しかし、モドキはまだ茫然と妖精を見ていた。

そして、妖精は自分の方へモドキを誘うように手招きをしたが、モドキは恐怖心があってどぎまぎとしていた。すると妖精は「はようせい!!」としょうもない事を言った。
モドキはしょうもない事が好きなので、おもしろくて笑い出した。
「ムフッ!ムフフッ!ムハハハハハ・・・・・・!!」モドキは驚いた。
今、笑った声が全部、活字になって口から出て来た。そして、キャンバスに吸い込まれて行った。そして、最後の「ハ」が口にひっかかり、モドキも最後の「ハ」といっしょにキャンバスに吸い込まれた。

そこは大平原で遠くにはエアーズロックのような、エベレストのような、生駒山のような、たいへん美しい山並みが連なっている。そして、その大平原には、この世のものとは思えない色づかいの花々が咲きみだれ、金色のウブ毛で包まれた妖精が、オーロラのように舞っている。
そして、その妖精の身体がモヤがしだいに晴れて来るように透け始め、そして、消えてしまった。モドキは悲鳴に近い声で叫んだ。
「オーイ!! 待ってくれー!!」

モドキは目が覚めた。



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6.目の出る男

目の出る男がいた。
目の出る男と言っても、ただの出目ではない。最高2メートルも出るのだ。

その目は、伸び縮み自由で、曲がったりもする。
それで、周りの人たちから「カタツムリ君」と言われ、人気者だった。わかっていると思うが、カタツムリと言っても両目はちゃんと開いている。
平常は普通で出そうと思えば自由に出すことができる。ただ難点は、驚いた時と性的に興奮した時に、意志とは関係なく飛び出るのである。
女とやっている時は、女の顔の前で目がグニャグニャと動いているので、女に気持ち悪がられた。
公園を歩いていて、すごい量の犬のウンコがあり、それを見て驚いた瞬間、目がウンコに突き刺さったということもあった。

カタツムリ君は何でも見れた。前を向いているだけで、前後左右上下を見れた。
タンスのすき間にケシゴムを落とした時も、なんなくそのすき間に目を伸ばし、モノサシで取れた。人ゴミの中でも目を伸ばし、潜望鏡のようにあたりを見わたせた。
女子トイレも上から下から見れた。自分の肛門も鏡なしで見れた。そして、ちょっと目を肛門に入れてみた。直腸のヒダがよく見えた。その時、へんな気分になった。肛門に目が入っている感触と、内臓を見ている視覚、そして、そのままマスターベーションをした。それは今までにない感覚でやみつきになった。それをいかし、女とやる時に自分のモノの代わりに目を挿入した。女は見られると興奮するらしいが、それが奥の奥の子宮の内部まで見られているというので異常に興奮し、カタツムリ君は大モテだった。

そして、病院からスカウトされ、胃カメラのバイトをした。金がおもしろいように入って来た。金は儲かるし、女には大モテ、そして思った。オレは何でも出来る。何でも見ることが出来る!!

カタツムリ君はキャバレーで、ホステス5〜6人に囲まれ、天下を取った気分で大騒ぎをしていた。ときどき得意の目で、女の子のいろんな所をのぞいていた。
そこへ、一人の盲目の老人が現れた。その老人は、座頭市のごとく、カタツムリ君の動かす目を、持っていた杖でピシ!ピシ!と、正確にはねのけた。カタツムリ君は驚いた。当然のごとく目は老人の方へ飛び出た。老人は、それまでもはねのけた。今度は、まわりのホステスの目が飛び出そうになった。
老人は、静かにカタツムリ君に言った。
「プー!あっ!ごめん、ごめん、おほん!あなたは外観ばかり見ていて、人の心をまったく見ていない。そういうヤツは、目噛んで死ね!!」カタツムリ君は思わず、目を噛んで死んでしまった。

目出たし、目出たし。