<スキー場が見える街 札幌>

ボクは札幌にいた、少年の頃憧れた‘その街’にいた。
地下鉄が走り、デパートや地下街もある、欲しいものは何でも売っている。
動物園があり、野球場があり、区役所があり、、、
夜になっても駅や街角に人が溢れてる、、。
全てが、子供の頃過ごした町と違ってた。
ただひとつなかったのは、仕事だけだった、、。

当時、ベビーブームで18歳人口が最も多かった世代のボクは
受験戦争でボロボロになり、曲りなりにも工業大学を卒業し、一部上場の大企業に就職した。
しかし、規模が大きければいいだけで選んだ会社は、空しかった。

やりたい仕事が見つけられなかったボクは
たった2年で、将来の安泰と果敢ない両親の期待を、道端に捨てた。
16年間、青春を犠牲にした勉強で辿り着いた、最大の目標だった筈の“いい会社”は
無用の巨大組織に変わった。

そして、‘幸せ行きの切符’だった工業大学機械工業科卒の卒業証書は
僅か2年で、ただの紙切れに変わった、、。

......想えばボクは、憧れの街札幌へやって来たんじゃなく
ただ姫路から逃げ出した負け犬かも知れない。
そんなボクに、札幌の風は冷たかった、、。

具体的にやりたい事がひとつもない
プライドだけが邪魔をして、中途採用募集の会社に入りたい会社が殆どない。
だいたい目につくのは、誰でも知ってる有名企業
職種もバラバラ、志望動機も不順だらけ
こんな男、誰も採用する訳がない。

苦し紛れで選択してしまった会社が、さらに悪かった
今想うと、よく3年近くも辛抱したものだ
いつか夜明けが来るって、想いたかった
働いてる時間以外は、全て寝ているだけだった
この頃、全ての風が、ボクに逆らって吹いていた、勿論ギターにも触らない、、。

仕事中の車の中から、『磐渓スキー場』のナイターの灯りが見えた
ただ見えただけで、スキーの事は一度も考えなかった
クリスマスを祝った事もなく、除夜の鐘を一度も家で聴く事はなかった

その頃は気付かなかったが、想えば日本はバブルへと向かっていた
そして、ボクの人生もまた何処かへ...

家を出てから12回目の引越しが、すぐそこに迫っていた
新年早々、雪の千歳空港に立っていた

嗚呼、ボクはいったい今度は何処へ行くのだろう、、、つづく

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