♪ Gentle3 ライヴ観覧紀〜後編

<言葉は生きている>

プロのライヴを見に行くのは6年ぶりかもしれない
本当に時間が経つのは早い、と云うか過ぎた過去がつい最近に思える
そう言えば最近、コンサートと云う言葉をあまり使わない気がする
ってより、コンサートと云う言葉はダサイ気がする
言葉は時代と共に移り変わる生き物だから
例えばGパンと云う言葉も、かなりレトロな響きも持っている
さすがにボクも、デニムとは呼ばないが、ジーンズと言う
70年代、コンサートって言葉が新しかったが、今はやっぱりライヴだろう
辛うじて、コンサートツアーって呼び名ならまだ生きてる
(ライヴもジーンズも勿論今風のイントネーションで発音する…)

<オン ステージ>

例えば矢沢永吉のライヴでは観客も永ちゃんになる
そこにしか着ていけないような白のスールに“E YAZAWA”のタオル、柳屋ポマードのリーゼント

例えば長渕剛のライヴでも観客に剛がたくさんいる
少し古いが、バンダナに民族風衣装、細身のジーズ、当時のステージ衣装を真似たファン達だ

カッコイイアーティストはファンもカッコいい
そうしてステージの上と下が一体になり盛り上げるのだ、但し、それも若い時だけの特権だろうか?
さすがに拓郎のライヴに行くと拓郎カットにレイバンのサングラス、そんなおじさんはどこにもいない
平均年齢がボクより5〜10歳上の男女は、まさに、いつも会社で見ている上司や同僚そのまんまだ
30年前なら違ってた、観客の多くは長髪に、ジーンズやダンガリー
数少ない雑誌からの情報で得た拓郎ファッションのコピー
つま恋スタイルの素肌に白ベストやベージュのバギーパンツを真似てる奴らも多かった

さて今日は平日なので、ボクは会社帰りに会場へ行くことになる、しかも始めてみる3人のステージ
見に行くオーディエンス側のマナーとして前夜スーツにアイロンをかけた
やる方が真剣勝負なら見に行くこちらだって、気合を入れる
お互い歳をとったが、ダサく、くたびれたオヤジにはなりたくない
ライヴに行った時、見に来ている観客がダッサイと何故か萎えてしまう
○×のファンはカッコいいね…ってのがいいじゃないか

<その日、素の自分からアーティストへ>

チケット予約してから1週間足らずだったがその日は思ったより早くやって来た
朝から何だかソワソワする、前日までリハはやるのだろうか
会場が都内近郊なので、前日彼等は自宅にいるだろう
リハが終った夜、家でギターを弾いたりするのだろうか
家族と一緒にビールを飲んで食事したりするのだろうか
ステージはある意味非現実的な場所だ
普段の自分ではなく、アーティスト○×を演じる場所だ
前日や数日前から気持ちを切り替えたり、気合入れたりしないんだろうか
それとも、ボクが毎朝会社に行くのと同じノリで
「行ってきまーす」って仕事に出かけられるのだろうか?
そんなことが気にかかる、会社に居ても、朝から会場でのリハのことが気にかかる

<9月29日 木曜日 >

開場時間に10分遅れ、いつにない早足で市川市文化会館に滑り込んだ
出演者でも主催者でもスタッフでもないのに、チケットの販売状況が気にかかる
前日、SOLD OUTになっていなかったからだ
売れっ子ミュージシャンのチケットは僅か数十分でなくなるのに
ビッグネーム3人のチケットは足が遅い

 PA(ミキサー)のセッテイングを見たかったので
 観客の写真を2〜3枚撮って会場に入った
 勿論ライヴ中は、写真や録音は禁止なのだが
 ガードマンに聞いたところ、始まる前の写真はいいと言う
 というか、特に指示されていないらしい
 ミキサーは基本的にヴォーカルマイク3本、ギターはライン入力
 それぞれのフェーダーが上がりメインが下げられている

 

 
 エフェクターのラックはよく見えなかったがコンプとEQリバーブ程度だろう
 各エフェクターにドラフティングテープで名前が書かれている
 宇崎の「RYU」と言う文字だけが読み取れた
 

 

驚いたことに緞帳が開いている、これはボク的には嬉しい演出だ
黒いステージバックに椅子やマイクがセッティングされ、スタンドにギターが立っている
ギターアンプはなくモニタスピーカが2基づつ置かれている、否応無しに気分が高まる
そして、、、

<午後19時10分>

定刻より遅れること僅か、、、
静かなインストの曲が流れ、3人が登場、椅子に座りギターを取る
宇崎が「こんばんわ」と挨拶、世良が曲に合わせて小さな音でリードを弾き遊んでみせる
座り位置は右から世良、宇崎、岩城
3人の衣装、スタイルは…

【世良】
黒いノースリーブのTシャツにカーキのカーゴパンツ、茶色のワークブーツ
黒地に白模様のバンダナを巻き、右手に赤いリストバンド
男がこれから闘うって井出達になっている
ツイストの頃より太ったが、相当鍛えているのか、腕が丸太のように太い
【宇崎】
黒地に白模様のシャツに黒くタイトなパンツ
筋肉質で、鍛えて実年齢より20歳は若い肉体を維持してるんだろうが
バックが黒いこともあり、少し頼りないほど細く見える
頬もこけ、特に足は、世良の上腕よりスレンダーに見えるほどだ
【岩城】
真っ白いシャツに色のかなり落ちたタイトなジーンズ、薄茶色のウエスタンブーツ
半透明茶系のサングラスに髪の毛が半分ほどグレイに見える
3人共ブラウン管を通して見るのとほぼ同じ、イカした“Gentle3”だ

ギターは…
【世良】
ナチュラルカラーのGibson J-200
マーチン000スタイルに見えるノンピックガードのモノ
J-200にトラブルが出た時用のGibson J-45
ストロークではJ-200、フィンガープレイではマーチンを使用
ピックアップは、サンライズのS-2と思われる
ギターにジャックの改造はなく、サウンドホールから下方向へ
シールドが出てバックに周り、手元の机上に小さなプリアンプがある
全てワイヤレスで、左足のボリュームペダルで、曲間のチューニング等に対応している
世良のギターサウンドは全曲ステージ向って右のPAから出力
【宇崎】
テレビ等でも見かけるボディー薄めのエレアコ
エレガット、つまりナイロン弦、昔で言うところのクラシックギター
いずれもピックガードがついていないタイプで、エンドピンジャックからシールドが出ている
宇崎のギターサウンドは全曲センター定位でPAから出力
エレアコのサウンドは、硬質でシャリンとキレのいいモノ
箱鳴り感は薄く、中高音部のヌケがいい
エレガットはパワフルで全域に渡り響き渡っていて
宇崎特有の腕を大きく振る激しいコードストロークにも対応
【岩城】
黒いつや消しのオベーション
予備用赤茶色のエレアコ
二人のミュージシャンの脇を固め、ヴォリューム的には3割程度
岩城のギターサウンドは全曲ステージ向って左から出力
彼はCDも何枚か出していると言うがギタープレイ的には素人
3人のアンサンブルがかぶらないような個性のギター選択だ

<演出>

全体的なサウンドは世良と宇崎のギターで作り
世良は間奏でのリードギターもまるでエレキのようなプレイ
アコギの3弦は巻弦で太いのだが、チョーキングも多用し、力強さと繊細さを織り交ぜた、多彩な演奏
そのサウンドは1〜2弦が特に生っぽい、ハイコードがややエレキチックな響きになるところが残念
驚いたことにフィンガー用に使ったマーチンの音が素晴らしい
小さなボディーから豊な低音と切れのいい高音が見事に出ていた
コードストロークから間奏でリードに移っても全体のヴォリュームが変化しないミキシング
単純に1本分の穴が開くはずなのに、その減衰が感じられない

MCは主に前半を中心として岩城が担当、さすがに俳優だけあって、その喋りは上質だ
しかも彼のキャラクターが作られたものではなく、まるで普段の生活のように思えるナチュラルさ
ドラマやトーク番組で見るのと同じ岩城独特のイントネーション
1週間程前に練習中バイクで転んで左足の靭帯を痛めたが
スポンサーがついたので、今後3年間レースに打ちこむという
退場の時もスタッフにエスコートされ少し痛々しかったが…
そんじょそこらの50代、だらしなく腹を出してる中年とはまるで違う

いや、そこらの50代も別の意味では頑張っている、厳しい企業戦争の中で毎日戦っている
立場が違うので、その仕事上腹は出ててもかまわないのだ
いや、腹が出てるほうが貫禄があり有効な場合だってある
ちょっとダサくて愛嬌がある方が、商談が上手くいくこともある
今月、売上1億を必ず達成しなければいならない課長と同じ、岩城はその仕事上腹が出てはいけないのだ
毎日トレーニングを欠かさず、人を魅了する肉体維持も彼の仕事だ
一般企業で働く男と、俳優やミュージシャンは価値観が別種の人間だ
それは人生や幸せに対する価値観がずれてると言う意味ではないが、、。

宇崎のMCも気取らず、実に感じがいい“ですます調”ではなく“ため口系”なのだが楽しい
年上ネタをメインとして、最近ギックリ腰をやったとかの話で
花束を受け取る時も、大げさに腰をいたわり歩き、会場を爆笑の渦に巻き込む
クールなルックスとのギャップが魅力だ
後半「みんな一緒に歳とろうかぁー!」と言ったのが心に残った
確かにボクラは永い地球の歴史の中で
偶然同じ時代を生きている、ほんの一瞬、僅か70〜80年、不思議だ

選曲は、観客にやさしい考えぬかれたものだった
ダウンタウンブギウギバンドやツイスト時代のヒット曲
誰もが知ってる、唄えるものばかりを選んだ演出
ソロになってからの曲や最新の曲を唄いたいのは当然だろうが
ボクだけじゃなく多くの観客がそれらを知らないだろう
しかも、これは3人のユニットだ、3人別々のファンが来ているに違いない
新曲はソロのライヴでやればいい
ここでは誰もが知っている看板曲を披露することが最良の選択だ

<セットリスト>

知らず知らずのうちに
ロックンロールウィドウ
身も心も
夢先案内人
サクセス
銃爪
あんたのバラード
スイートメモリー
オーヤンフィフィが唄った曲?
世良の90年代ソロの曲
沖縄ベイブルース
港のヨーコ       (曲順は不明 記憶のため不確実)   
(アンコール)
燃えろいい女
夜空ノムコウ

ヴォーカルはやはり、世良の声量、迫力が特出していた
ツイスト時代からの独特なマイクを横に外し口を歪めるシャウト
ステージ向って右に座っていたため
左向きにマイクを外し、客席正面を見据えて叫ぶ
声が出過ぎるため、コーラス時はとくにオフマイク気味にしていた

宇崎のヴォーカルは腹の底から涌き出るような低音とシャウト
来年からは年金ミュージシャンだと言って会場を笑わせていたが
とてもそんな歳には見えない艶と輝きだった

サクセスもよかった、身も心もも、夢先案内人も…

全部良かったでは始まらないので、敢えてベストを選択すると
ロックンロールウイドウ
これは鳥肌が立った(宇崎メインヴォーカル〜山口百恵に書いた曲)
元々アップテンポのこんな曲が個人的に好きなことが大きいが
お馴染みの激しいギターのリフとブレイク後3人のハモリ
「カッコ カッコ カッコ ばかり先走るぅ!」ってフレーズだ
唄い方、メロディーを少し変えて新鮮さを吹き込んだアレンジがニクい

港のヨーコ
これはウケを狙った小話風、当時ラップという言葉はなかったから
「ちょっと前なら憶えちゃいるが、、、昨日の朝ご飯が思い出せない」岩城が会場を沸かす
確かに人間ある年齢になると、記憶が途切れる、特に固有名詞が出て来ないと彼は言う
若い人はわからないだろうが、まったくその通りだ、そして、誰もがやがてそうなる

銃爪(世良の持ち歌)
全般に静かに歌う曲が多かったが、この曲では往年のシャウトが聴けた
元来聴かせる、歌の上手いタイプの、生粋ヴォーカリスト
ツイスト時代はギターを持たず、マイクパフォーマンススタイルだった
キーも勿論当時のままで、歳と共に艶っぽくなった歌声は圧巻だ
大体彼がギターを弾けることすら知らない方が多いだろう
桑田もそうだが、バンドではギターの音があまり聞こえないけど
やっぱりプロだ、ふたりとも弾き語りも物凄い

誉めちぎり過ぎたので、少しは意地悪なことも書いておこう
多分、観客の99%は気付かないと思う
何故なら皆金を払って楽しむために来ているからだ
素人ながら、少し音楽をかじっているボクは流す訳にはいかない
世良のギター、特にソロのリードパートでは何回かのミストーンがあった
まぁ、2時間近くやって、気になったのはほんの数回だけど
プロだってミスはある、普通の人は気付かない、気にさせない演出テクもある
まぁ、人間らしくていいか、ミスゼロなら逆に凹むわ⇒自分
MC時のチューニング、、、
特にハイポジションやチョーキングを多用する世良はダウンするだろう
これは現代のテクノロジーで、音聴かせずにできる
敢えてライヴっぽくしてたのか?ヴォリュームはゼロで100%合わせましょ、プロは

<オーディエンス>

 観客は9割が女性
 年齢層は30代〜60代、やはり40〜50代が中心 
 ここでも女性の時代だと、つくずく思った
 平日の都心ランチタイムは中高年の女性達で賑わっていると聞く
 週末のバスツアーも女性達で一杯と言う
 ダンナは会社で神経をすり減らし、疲れている
 女房は元気で優雅におしゃべり
 戦後日本も豊になったもんだ、ボクの両親の世代は違ってたが
 もう女性が男を立てて、一歩引く時代ではないらしい


30〜40代の女性はきっとデビュー当時からの世良ファンなのだろう
髪を茶色に染め、黒っぽい服でおしゃれした人が多く、人生楽しんでるなぁ…って感じだった
アンコールの“燃えろいい女”では(80年代の化粧品会社のCMタイアップ)
サビの ♪燃えろ(バーン)いいオンナ(今ならここはカタカナを使う)
♪燃えろ(バーン)ナツコー(ここは大合唱)
きっとみんな当時あの会社の製品を買いナツコになったのだろう
それぞれの青春を思い出しているかの如く腰を振り拳を突き上げ、今と言う一瞬を楽しんでいた

<終焉〜むこうとこちら>

 2時間はやって欲しいところだが、年齢を考えればこんなとこか
 約1時間半のステージは、アッと言う間だった
 アンコール最後の夜空のムコウを歌い終え、3人は袖に消えた
 ボクは、ステージ、ギターを見るため帰る観客達と逆方向に歩いた
 終った後、場内に灯りがつきそこに来ていた人々が見えたが
 今日は淋しくなかった
 皆イキイキとし、またエネルギーを充電したような顔だった


自分の人生は自分で決めるものだ
自分の毎日は自分で作るものだ
この会場に来ていた誰もが、ステージに上がることができる
ステージにいた3人が観客側の人間でいたかもしれない
彼等はステージに上がることを選び、その為の準備と努力をした
ボクらはステージを見上げる側を選び、生きてきた
どちらにも苦労と幸せがあり、両方の人間がいなければ、社会は成り立たない
厳しいけれど、好きなことを仕事とし一生戦うのもひとつの選択
大多数の平凡な暮らしも捨てられぬ魅力に満ちている
人生は1度きりで、誰しも両方は経験できない、また、与えられた時間もおよそ皆平等だ

 さぁ、貴方なら、どちらを選びますか?
 今からでも遅くはない
 時間を巻戻すことはできないけど
 少し、明日を、その先の未来を変えることは、、、できるはず、、。

 

                                            2005.9.30

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