新しい生活・聖域を作る

 

 

(1)飼育セットの確認

ペットショップで飼ってきた、里子をもらった、生まれた子どもを巣分けしたといった場合に、そのジャンガリアンにとっての新しい生活が始まります。

家主(ハムスター飼育マニアの間では、飼い主を家主と称します)が最初にすることは、飼育ケージの中に必要なものが全て揃っていて、適切に配置されているかを確認することです。

 

[最低必要なもの] (一般的な飼育ケージでの場合)

     ふかふかマット(3〜5センチ)

     給水器

     巣箱

     トイレセット

     エサ皿

     回し車

ジャンガリアンは巣箱から一番遠い所でトイレ(オシッコ)をする習性があるので、巣箱とトイレセットは飼育ケージの端と端に置くのが良いです。

  この他に、飼育ケージが広いようなら、

     砂浴びセット(個体によりトイレの砂で砂浴びをするものもおり、その場合は不要)

     野菜用の小皿

を入れます。

そして、エサ皿にエサ、給水器に水道水を入れ、受け入れ準備をします。

 

巣箱は、巣箱の中を人に覗かれない向きに置きます。下図(上から見た図)の4ヶ所のどれかのように、巣穴の入り口を裏側に置くのが理想的ですが、

 

それでは巣箱に入っているのかどうか確認しづらいという場合は、横置きでもOK

 

巣箱の入り口を正面に向けるのは、常に中を人に覗かれる状態にあるということになり、ジャンガリアンのストレスになります。ケージの配置上、どうしても正面に向けざるを得ない場合には、トイレットペーパーの芯のようなもので、入り口へのトンネルを作ります。長さは4〜5センチあれば十分です。


 

 

(2)初めてのケージに入れる

初めての飼育ケージに移されると、ジャンガリアンは怯え、一刻も早く身を隠したいと、何かの物蔭に隠れて体を縮めていたり、マットが深く敷き詰められていたら潜って出てきません。ですが、それが正常です。そうした場合に、家主はジャンガリアンを手で捕まえて、ここが巣箱でこの中は安全だよと、巣箱の中に入れて教えたがりますが、それをしてはいけません。

 

写真は初めてのケージに怯えている子ども達。右上の砂浴びセットに3匹、そのすぐ左の物陰に2匹が小さく丸まっている。地下型巣箱併用型なので巣箱はケージの床下にあるが、巣箱への出入り口はまだ塞いでいる。

(地下型巣箱併用での飼育ケージの地上部にはフカフカマットは敷かない)

 

新しいケージに移した直後から最低でも数時間は、ジャンガリアンをそっとしておきます。

どうしても見たいという場合には、ジャンガリアンは視力が弱いので、2メートルほど離れて静かに見守っているのであれば、ジャンガリアンは人が近くに居ることに気が付かないので大丈夫です。

 

ジャンガリアンは、周りに人が居ないと分かり、そして落ち着いてきたら、まずは自分の周囲がどうなっているのかを知ろうとします。それまで身を隠していた場所から少しずつ出て行き、探索範囲を広げ、飼育ケージの隅から隅まで探索し、その中でどこか一番安全なのかを知り、今度はそこを行動の原点にします。最適な隠れ場でありネグラとなる巣箱がケージの中にあれば、人が教えずとも、ジャンガリアンはそこを巣にします。

 

巣箱を自分で見つけ、自分から中に入る、ということが重要です。

 

ジャンガリアンにとっての最適な隠れ家・ネグラは、自分がやっと通れるくらいの小さな入り口があり、その奥には自分の体より少し大きいくらいの小さな部屋がある、暗い巣穴のような部屋です。

ヒゲとか体毛、手足ですぐに周囲が囲まれていると感じられる小さな部屋が安眠熟睡できます。それよりもう少し大きい部屋だと、巣材(ティッシュを割いたものをケージの中に入れておく)を自分で持ち込んで部屋いっぱいにし、自分が入れるだけの大きさの空洞を作り、その中で安眠熟睡します。

もっと大きい部屋だと、いつも外敵を警戒していなくてはならず、安眠熟睡できないのでストレスがたまります。飼育ケージが広い時は、大きな巣箱を入れるのではなく、幾つかの小さな巣箱を入れてやります。(出産育児は別)。


 

 

そして最も重要なことですが、ジャンガリアンが巣箱の中にいる時は絶対に、手で触れたり、取り出したり、あるいは入れたりしないこと。ここに逃げ込めば絶対に安全という聖域を作ってやります。

 

市販品で、木でできた屋根が付いた小さな巣箱がありますが、その中にジャンガリアンがいる時は、絶対に屋根を外して覗いたりしてはいけません。

 

巣箱でしばらく過ごして気分が落ち着いてくると、今度はゆっくりと外の世界の探索を始め、しっかりと、どこに何があるかを記憶します。この探索ですが、ジャンガリアンは視力が弱いので、それぞれのそばに近づき、触れて、匂って覚えていきます。配置を覚えてしまえば、暗闇の中でも、見えているのと同じように平気で行動します。

 

それが終わるまでの数時間は、静かにそっとしておきます。

 

それが終わったら、人はケージに近づいて、声かけをしても大丈夫です。始めの内は、人に気が付くとすぐに巣箱に戻って隠れていますが、声かけをしながら給水器の水を交換したりエサを交換したりしていると、数日から1週間くらいで、ジャンガリアンの方から顔を出して、近づいてくるようになります。

 

(3)リセット

もし何日たっても、人に気が付くとすぐに逃げるようであれば、それはまだ自分の聖域を持てず、ストレスが溜まっていることによります。

 

そうした場合、飼育ケージのリセットをします。

 

一時、ジャンガリアンを別の入れ物に移し、飼育ケージをきれいに掃除します。巣箱・エサ皿・ケージを洗ってよく乾燥します。マットは全て新しいものと交換し、エサも水も交換します。前の匂いが残っていない状態が理想です。巣箱を別の新しいものにすればリセットの成功率はほぼ100%になります。

 

巣箱などの配置も、前と違う配置にして、それからジャンガリアンを戻します。

 

新しい飼育環境にリセットすること自体が多少のストレスになりますが、しかし自分の聖域を持てずにずっとストレスを抱えるよりはましです。

 

(4)巣箱の中を覗きたい場合

木製の巣箱などでは屋根が外れるタイプのものがあります。その場合は、巣箱の天井に透明板を固定して、その上に屋根を乗せます。

透明板の天井があれば、ジャンガリアンは透明板に触れて、そこが巣箱の天井だと認識します。

面白いことに、短い時間であれば、透明板を通して覗かれても、ジャンガリアンは平気です。透明版という天井で囲まれた安全な部屋だと認識しているからで、静かに屋根を取って観察し、静かに屋根を戻せば、依然としてその巣箱は聖域として認識されています。

もしジャンガリアンが巣箱の中にいる時に、屋根を取り、透明板も取ってしまったら、ジャンガリアンは、ここは天井が壊れる安全ではない場所だと認識し、別の安全な場所を探すようになります。他に身を隠す場所がなければ、その巣箱に戻ることもありますが、常に怯えています。