ミュージシャンのための

大工講座

スタジオを造ろう!

僕が修行時代を過ごした80年代のNewYork、そこでは実に多くのミュージシャン達がスタジオを自作していました。自分で自分の音楽環境を作るのは当たり前という感覚です。

日本でも住宅事情が中々厳しいですが、仲間のミュージシャン達もまた、それぞれに苦労しながらも自分の音楽スペースを確保しています。

さて、我家は千葉県の我孫子市に引越をしました。新居は築26年という超年代物で木造2階建ての戸建て住宅です。(我家では「ヴィンテージ・ハウス」と呼んでいます。(笑))

この家を選んだのは意外に都心までの便が良い事、高台で目の前が森の公園、とても静で創作活動&子育てには最適と判断したからです。

ただし、住宅地ですからお隣近所と建物がかなり接近しています。そのままマトモに音を出すワケにはいきません。

当然、それなりの防音を施した仕事のスペースが必要になります。資金さえあればどんな高性能なスタジオだろうと造れるのでしょうが、このヴィンテージハウスの頭金に全身全霊を注ぎ込み、残っているのはローンだけ。でも、


物事は「金をかけるか、時間をかけるか」のどちらかである。...by 俺 (笑)


NewYorkでの学生時代、大工のバイトで生計を立てていた事が数年間あり、その時の経験を生かしてこれまでも部屋のリフォームは自分でやってます。スタジオも過去2回ほど自作しました。

ただ、以前造ったスタジオは交通量の多いバイパス沿いの家で、近所にほとんど民家は無く防音と言うよりも遮音に重点を置いた構造でした。

今回は住宅地のど真中、しかも古い木造住宅にスタジオを造るとなると、かなり慎重に造らなければなりません。

そこで、インターネットで自作スタジオのページを検索して参考にしようと調べました,,,が、なかなか良い情報は得られませんでした。建材メーカーや防音専門の施工業者、防音室を作っているメーカーのサイトでは、大抵防音に関する基礎的な解説などがあり、大変参考にはなります。

しかし、具体的な方法は何も書かれていません。(施行は専門家にまかせておけって言うスタンスですから。)

自分でスタジオを造ってみたいと思っている方は結構多いんじゃないかなと思いますが、意外にこの手の情報はネット上でも少ないですよね。それじゃってんで、僕が実際にスタジオを制作する事で得られた知識、テクニックを惜しげも無く公開する事にしました。(笑)


スタジオ造りはプロが造ってもなかなか難しく、必ずしも金さえかければ良いスタジオが出来る訳でもありません。

僕の知る限り、竣工した瞬間から完璧なスタジオなんて古今東西、見た事も聞いた事もありません。

たとえば、とあるオープン間もない商業スタジオに入ったら、壁にコンクリートで作り付けのラージ・モニターがあるのに、何故かそのすぐ前に別のラージを置いて鳴らしています。「何で壁のラージで鳴らさないの?」と聴くと、「全然ダメなんだよ、せっかく作ったんだけど...。」とエンジニアが泣きそうな顔で言ってました。


かと思えば、NewYorkの某中堅スタジオマンの自作スタジオなんか、防音&吸音材に雑誌を使っていました。壁が一面本棚で、その中にポルノ雑誌がぎっちり詰まっていて、これが遮音&吸音材代わりなんです。スタジオに入ると譜面台に「今日のお気に入りの一冊」を乗せてレコーディングするわけです。(笑)それでいて、音響特性はとってもナイスなスタジオなんです。(笑)


スタジオって単に音が漏れない、入らないでという話ではないですからね。ですから、素人の僕達は何も出来ないと言う訳ではなく、ちょっとした工夫と知恵でオリジナルのクールなスタジオが造れるかもしれません。なにより建築に関しては元々アマチュアなんですから、失敗しても自分が泣けば...まぁ、家族には怒られるかもしれませんが。(汗)

とにかく机上で考えているより「やってみる!」という度胸も時には必要かなと思います。取合えず部屋を半分ぶっ壊せば、ナントカしない分けには行かなくなりますから!。(爆!)あ、でもくれぐれも自己責任でね。


さて、当たり前の話ですが...(必ず読んでね!)

このコンテンツはあくまで僕の全く個人的な経験と数年にわたるバイトで得た確かな(?)技術、思いこみに近い知識とで書いています。建築に関してはおちゃめな素人ですので、これを読んで実際に何か製作した方が物質的、金銭的、あるいは精神的に何らかの被害を被ったとしても何の責任も持てません。



防音性能を上げると言う事は、部屋の気密性を高める事になります。音の問題だけなら良いのですが、その事によって建物の湿度調整が上手く行かなくなると結露やカビの発生、それに壁の内側、柱、床下、天井裏など建物の構造事体が痛んでしまう可能性があります。(第一、ちゃんと換気をしないと中の人間が酸欠で死んじゃいます。) 一般的に素人が手を出すのはかなり危険な事であると言う事もくれぐれもお忘れなく、あくまでも「自己責任」でお願いします。


御質問には判る範囲でできるだけお答えしたいと思いますが、以上のように私は建築家でも何でも無く、いわゆるただのドンバ(ミュージシャン)だと言う事をこれまたくれぐれもお忘れなく。同様に、防音性能など出来るだけ具体的な数値で出したいのはやまやまですが、測定器などは持っていません。卓のインジケーター、フェーダーの値くらいは判りますが、いずれにしろ測定条件がアバウトになりますから「近所のイヌの鳴き声が聞こえない!」とか「隣の家のピンポンを拾ってしまう!」などの素晴らしい表現になってしまう可能性が高いです。(^_^;)


資金がある方、少しでも迷いやためらいのある方、覚悟の無い方、時間的に制約のある方、「自己責任」の意味が判らない方は即刻、専門の業者さんやメーカーさんに相談をしましょう。検索やプレイヤー系の音楽雑誌を見ればいくらでも広告が載っています。

以上のような理由で専門知識をお持ちの方が「ここは違うんじゃないの〜!」と言うような御意見、「こうした方が効果的だぜぇ!」と言うような御指摘は大歓迎ですが、罵詈雑言、誹謗、中傷、陰口、陰謀のたぐいは御遠慮下さい(笑)。

それでは、全国の「ヤル気はあるが金が無い。」クールでファンキーな皆さん、がんばりましょう! 


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