題名が示すように,この曲は第1楽章と第2楽章のみが完成され,第3楽章の途中までが作曲された状態で放棄された未完成の交響曲である。しかし,この曲の人気は他の完成された7曲よりもはるかに高く,またそれだけ内容も素晴らしいものである。
未完成の交響曲については,他にもブルックナーの第9番,マーラーの第10番,チャイコフスキーの第7番,ベートーヴェンの第10番などが存在する。しかし,「未完成交響曲」といえばほとんどの人がシューベルトの作品を想像するだろう。これだけ有名な未完成交響曲は異例である。
また,ロ短調という当時はあまり使われなかった調性を採用していること,また「未完成交響曲」が最後の作品ではなく,その後に巨大な交響曲「ザ・グレイト」が書かれているという点で見ても異例である(つまり,この曲は作者の死によって作曲が中止されたものではないということである)。
シューベルトが作曲を中止したのは何故だろうか。この謎を解く手がかりは,途中まで作曲された第3楽章のスケルツォにあると言われている。第3楽章のスケルツォは,すでに完成されている2つの楽章に比べると明らかに内容が劣っている。また,第1楽章,第1楽章共に3拍子で,第3楽章も3拍子では対照に欠けるという面もある。
仮に,シューベルトがこのままこの曲を書き続けて,第4楽章まで完成させていたとしたら,この曲の評価は現在ほど高くなかったかもしれない。