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ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15


概要

ブラームスの前衛的作品

 この曲は,初演時には大変な不評を買ったという記録が残っている。どのような不評かといえば……

 というものであるから散々である。

 これらの批判は,当時の常識から言えば,まったくもってその通りであろう。ピアノ協奏曲の演奏時間といえば20分〜30分台のものがほとんどであるが,この曲の演奏時間は何と50分である。特に第1楽章が22分を占めるが,これは第1楽章が極端に長いといわれているチャイコフスキーの第1番第1楽章をしのぐ長さである。また,当初から「ピアノ助奏つきの交響曲だ」という指摘が多かったように,これだけ内容が重くてピアノが目立たないというのも異例だった(もっとも,ブラームス自身最初は交響曲として作曲していたようであり,この指摘もあながち的外しとは言えない)。
 しかし,上の理由のうち2つには,「ピアノ協奏曲にしては」という条件がついていることにも注目したい。決して曲の出来が悪いという訳ではなく(それでも第2番や4曲の交響曲には負けるかもしれないが),ただ当時のピアノ協奏曲の常識を外れていたに過ぎないのである。

 常識を外れているという面から見ると,もっと変わっているところもある。

 つまり,当時のピアノ協奏曲としては極めて前衛的な作品だったのである。ブラームスの作曲態度は,保守的な形式のうちに新しいものを秘める……というものが多いのであるが,この曲についてはあまり保守的なところは見られない。
 これは,新しいピアノ協奏曲への「提案」だったのであろう。ただ,これを当時無名の作曲家だったブラームスが発表したということに,どうやら初演時の不評の原因がありそうだ。

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