系統 | 古典派 |
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作風 | 前期: ハイドン風の快活な曲が中心 中期: 情熱的でエネルギッシュな曲が中心 後期: 自然で複雑な曲が中心 |
作曲ジャンル | 交響曲(9曲),協奏曲(ピアノ6曲,ヴァイオリン1曲),ソナタ(ピアノ32曲他),序曲(11曲),声楽曲など,ほぼすべてのジャンルにわたる |
誰もが知っているベートーヴェンだから,あまりくどいことを書くのは避けておこう。
前期は交響曲でいうと1〜2番,まだハイドンやモーツァルトの影響が抜けきらない時期である。中期は交響曲で3〜8番,新しい試みを次々と打ち出すなど,意欲的な作品が多い。一方,後期になると作曲のペースも落ち,内容的にも難しい曲が多くなる。もちろんもっとも有名なのは中期の曲であるが,私は後期の曲も好きである。
ベートーヴェンの交響曲は9曲である。作曲順もほぼ番号通りだと思われるが,ただ第5番ハ短調と第6番ヘ長調「田園」は初演のときは番号が逆だったという話である。元気な第1番ハ長調に対して可愛らしい第2番ニ長調,その名も「英雄」の第3番変ホ長調に対してギリシャの乙女とも呼ばれる第4番変ロ長調,密度の高い展開が特徴の第5番ハ短調に対して緩い構造を持つ第6番へ長調,雄大な第7番イ長調に対して小粒でぴりりと辛い第8番ヘ長調と,第9番ニ短調を除けばだいたい対照的な曲が2曲ずつ作曲されているのが分かるだろう。第9番のペアとなる曲は……第10番ハ短調は近年復元の試みがなされ,第1楽章のみが演奏できる形になった。どうも当初の構想によると,合唱が付くべきだったのはこの第10番で,第9番は古典的な交響曲に収めるつもりだったらしい。
ベートーヴェンは11曲の序曲を書いている。そのうち唯一のオペラ「フィデリオ」の為に書いた序曲が4曲,その他の劇・バレエなどの為に書いたのが5曲である。あとの2曲,つまり序曲「コリオラン」,「命名祝日」は他のものに付随している訳ではなく,独立した作品として書かれている。これが,ベートーヴェンが創始したと言われる「演奏会用序曲」である。
ベートーヴェンの序曲は,最後から2番目に書かれた「アテネの廃墟」と,最後に書かれた「献堂式」以外はだいたいソナタ形式によっている。これはモーツァルト以来の伝統である。
元々ピアニストだったベートーヴェンにとって,ピアノソナタは格別に重要なジャンルだったに違いない。ピアノソナタは32曲あり,他のジャンルの曲を大きく凌駕している。また,形態もさまざまなものが存在する。