犯罪行為である北朝鮮の
紙幤偽造をどうしてかばうのか
北朝鮮の偽札をめぐる韓米間の対立が深刻な局面にさしかかっている。
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スーパーノートは北朝鮮で印刷され、北朝鮮政府の保護のもとで外国駐在の北朝鮮公館を通じて各国に持ち込まれ大量流通させているとされる。
北朝鮮が製造したという100ドルの偽造紙幣だけを「スーパーノート」と呼ぶ。北朝鮮が製造した偽札の中でもスーパーX、スーパーZなど他の偽装紙幤はレベルが低く、スーパーノートとは呼ばない。 アメリカ合衆国シークレットサービスは「北朝鮮製スーパーノート」を公式には「C-14342」と名付けている。
韓国にも偽ドル札が氾濫しており、ほとんどがスーパーノートだと2005年末聯合ニュースは報道した。
“北朝鮮は6か月ごとに偽装紙幤の欠点を補完し、すでによほど高性能の機械でなければ、確認が不可能なほど精巧になっている”とされる。そのため、北朝鮮での外貨の流通は米ドルからユーロに切り替えられた。
米国側は、「インタリオ
(intaglio) 」と呼ばれる超精密凹版印刷機が、北朝鮮によって取り引きされており、米国の造幤局で使うスイス製の
「インテルリオカラー」という機械を輸入した事実なども確認したという。[「要出典」をクリックされた方へ]
スーパーノートは89年ごろから出回り(米国は1989年にフィリピンで初めてスーパーノートを見つけたが、北朝鮮高官の業務に関連した荷物のなかから発見した)、
これまでの回収分だけで4900万ドル(約57億円)相当にのぼる。しかしこの金額では外貨獲得がおろか、印刷コストの回収すらできないため、
発見されずに現在も流通するのは1億ドル分以上ともみられる[「要出典」をクリックされた方へ]
しかし、今までに米政府が示した北朝鮮関与の根拠は「状況証拠」にとどまり、北朝鮮は「貨幣を偽造したことも、
いかなる不法取引に関与したこともない」と主張している。
更に2007年1月6日にはフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングが、
北朝鮮の現在の技術では絶対に不可能な事を理由として挙げ、“製造にCIAが関与か”と報じた。
米国が提示した関連証拠についてでさえ見解を異にしているからだ。米国は「北朝鮮にも説明する用意ができている」と自信をのぞかせている。
しかし韓国政府は「決定的証拠がない」と米国に同調できない姿勢を示している。
米国は連日高位当局者たちが北朝鮮の偽札製造、流通は事実だという点を強調している。
6カ国協議の米国側代表であるクリストファー・ヒル国務省次官補も「北朝鮮の偽造ドル紙幣を見たことがある」と述べている。
「北朝鮮が紙幣偽造に必要な特殊インクをスイスで購入した」「昨年の摘発金額が1千万ドル」という証拠も出している。
しかし韓国政府は米国から聞いた北朝鮮紙幤偽造に関する説明を公開していない。
ヒル次官補が韓国特派員に「駐米韓国大使館がよく知っていること」と話しているが、大使館側は口を閉ざしたままだ。
もちろん政府のこのような態度が問題だ。
米国務省関係者は「韓国政府は北朝鮮の弁護士の役をやめなければならない」と話す。
駐米大使館関係者も「本国政府に北朝鮮の紙幣偽造を認めないという雰囲気がある」と吐露したという。
このような発言は北朝鮮を刺激しないように紙幤偽造問題にはかかわらないようにしたいという発想を韓国政府がもっている証だ。
北朝鮮を刺激しないためには犯罪も覆い隠そうと思ってはいけない。犯罪は犯罪として指摘し、是正を要求しなければならない。
犯罪をかばおうと思うとき、われわれがかぶる対外的打撃を政府は考えたことはあるのか。
ほかの国家の貨幤を偽造することは「戦争の正当な理由」になるほどの深刻な問題だ。
したがって米国がどうしてこの問題をもって北朝鮮を寄せつけるのか注視しなければならない。
この過程でわれわれの安保のために韓米協力は必須だ。それにもかかわらずわれわれが北朝鮮の肩を持つ印象を米国に与え、
韓米協力に影響を及ぼした場合はどうなるか。
政府は今、この対立がが引き起こす事案がどれだけ深刻かを認識してほしい
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北朝鮮のドル偽造の疑いをめぐる韓国と米国政府の
視覚の差がますます深刻な様相を見せている。
ライス米国務長官は20日、ワシントンを訪問した鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官に「(北朝鮮の紙幣偽造問題について)
米国は不法活動に対する法執行次元で措置をとるのみ」とし、偽造紙幣問題は交渉や妥協の対象ではないという点をはっきりと主張した。
国務省のクリストファー・ヒル東アジア太平洋担当次官補もこの日、韓国特派員と会い「自分の目で北朝鮮が作った100ドルの偽造紙幣を確認した」
とし「われわれは証拠をもっているし、(韓国)外交官らにすべてブリーフィングしたので直接聞いてほしい」と言った。
そして「米政府は米国貨幣を保護する義務があり、どんな国でも自国貨幣が偽造された場合、それにふさわしい措置を取るのではないか」と反論した。
米財務部は16日、韓日中3国と東南アジア国家、欧州連合(EU)会員国など40カ国代表を招待し、北朝鮮の紙幣偽造疑惑についてブリーフィングした。
この席で財務部は北朝鮮の貨幣製造用特殊インクと用紙購入の実態、北朝鮮入金口座から発見された偽造紙幣の金額などを証拠として提示した。
しかし駐米韓国大使館関係者は「米国が具体的でかつ決定的な証拠を提示していない」とし「ブリーフィングに特別な内容はなかった」と強調した。
北朝鮮外交官が偽造紙幣を持っていて検挙されたり、特殊インクを購入したということなどは状況証拠にすぎないというのだ。
これに対して匿名を要求した米行政府関係者は20日「韓国は北朝鮮の弁護士の役をすることをやめなければならない」と非難し、
米政府が偽造紙幣問題を扱う韓国側態度に不満を持っていることをほのめかした。
またほかの関係者は「本国(韓国)政府ではわれわれまで北朝鮮の紙幣偽造の疑いを認める場合、
6カ国協議に否定的影響を及ぼすのを憂慮する雰囲気がある」とし「しかし米国が強く責めるので、
中間にいる駐米大使館が難しい立場」と話している。
一方、潘基文(パン・ギムン)外交通商部長官は21日前後、定例ブリーフィングで「韓米両国は北朝鮮紙幣偽造問題に関して緊密な情報交流をしている」と述べた。
また「麻薬や紙幣偽造など超国家的犯罪行為については国際社会が共同で対処する義務をもっている」とし
「北朝鮮が偽造紙幣を作ったのが確かなら明らかな不法行為で、直ちに中断されなければならない」と付け加えた。
これと関して外交部当局者は「まだ『北朝鮮が偽造紙幣を作った』と確実に言えるほど政府の立場は整理されていない」と説明した。
ワシントン=キム・ジョンヒョク特派員 <kimchy@joongang.co.kr>
チェ・サンヨン記者
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〜北朝鮮の「公共事業」〜
前回、北朝鮮が、スマトラ沖地震・津波の被災国への援助として、15万米ドル(1575万円)というはした金を出すと表明したことを取り上げた。
これは、韓国の俳優ペ・ヨンジュン(ヨン様)一個人の、同じ趣旨の寄付金額の半分という少額で、
しかもヨン様などの有名人の寄付金額が報道されたあとに北朝鮮国営通信が報じたため、かえって
北朝鮮の「金欠症」が際立つ形となった(各国・有名人の援助・寄付金額 順位表は → こちら)。
おそらく北朝鮮としては、これが精一杯の額なのだろう。北朝鮮は経済が破綻状態にあり、ミサイル、ミサイル関連技術(部品)、
海産物(ズワイガニ、アサリ)、衣類(紳士用スーツ)を除くとまともな輸出品はほとんどないし、観光産業も貧弱であるため、
円やドルなど世界で通用する外貨をあまり獲得できない。
そして、被災国への援助は「対外経済援助」であるため、「外貨」で提供しなければならない
(北朝鮮国内の通貨を輪転機で刷ってインドネシアやタイに渡しても、もらったほうは、そんな「紙切れ」では必要な物資は買えないので、
意味がない)。これは北朝鮮にとっては相当に苦しい。
北朝鮮の外貨準備高は不明である。が、韓国の外貨準備高1503億米ドル(03年11月末)、日本の6735億米ドル(03年12月末)よりはるかに少ないのは間違いない
(環日本海経済研究所ERINAのWeb)。
02年の北朝鮮の総貿易額(輸出と輸入の合計)は22.6億米ドルで、これは韓国の3146億米ドルの1/140、日本の6759億米ドルの1/300だ
(『週刊ダイヤモンド』04年9月4日号「特集・金正日の経済」p.33。韓国統一省、日本の総務省のデータから)。
03年には北朝鮮の総貿易額は25.4億米ドルで、7.2億米ドルの貿易黒字があった
(『週刊ダイヤモンド』前掲記事p.40。大韓貿易投資振興公社KORTA、韓国統一省のデータから)。
その貴重な貿易黒字は、北朝鮮が自給できない石油や食糧、工業製品の輸入に使われる。
しかし91年に年間189万トンあった石油の輸入が、03年には67万トンと、1/3に減っている(『週刊ダイヤモンド』前掲記事p.38。韓国銀行のデータから)。
第二次大戦では、日本が米国に「対日石油禁輸」で追い詰められて対米開戦に踏み切ったことで明らかなように、
石油は国家の生命線だ。その石油の輸入がここまで減ったことを見れば、
北朝鮮はもう手持ちの外貨にはほとんど余裕がなく、被災国に援助するドルがあったら、それで石油を買いたいというのがホンネだろう。
つまり、北朝鮮が手持ちの外貨(預金)を取り崩して被災国に援助することは、
どうもなさそうなのだ。とすると、北朝鮮には新たな外貨収入源を開拓する必要が生じる。
が、スマトラ沖地震・津波は突発事故である。事前に予測できないから、たとえば1年前から海産物や紳士服の増産計画を立てて(海外市場で
マーケティングして?)対応する、というわけにも行かない。
04年12月26日の地震・津波の発生から1〜2週間以内に、他国の援助表明に出遅れないように
援助金額を表明しなければならなかったのだから、北朝鮮としては、手っ取り早く外貨を稼ぐ方策をとる必要に迫られていた。
もちろん、北朝鮮製のミサイルや関連技術の輸出など、国家間の大型商談がまとまれば楽勝だ。が、
これには相手国の都合というものがある。北朝鮮製兵器(技術)の最大の輸入国であるパキスタンにしろイランにしろ、
北朝鮮よりははるかにまともな国家統治機構があり、国家の財政支出は予算で管理されている。
北朝鮮から突然「ミサイル10基買ってくれ」と言われて、すぐに買う、というわけにもいかない。
したがって、今回のような「突発事故」にかかわる臨時支出は、兵器輸出では賄えないのだ。
日本の人口が急に増えない限り、海産物や紳士服の対日輸出額を急増させるのも難しいし、
在日朝鮮人のパチンコ屋や焼肉屋などを北朝鮮政府の手先(暴力団)が脅して所得を搾り取って本国に送金させるのも、
すでにさんざんやっているはずなので、急に、わずか数日間で送金額を15万米ドルも増やすのは不可能だ。
【それに、こうした日本からの送金は、日本が拉致問題解決のために対北朝鮮経済制裁を実施すれば、はいって来なくなるか、
または大幅に減る。日本の国会では04年に、対北朝鮮制裁を可能にする法案が成立しており、
その意味で、北朝鮮は04年中から、対日貿易や在日朝鮮人の送金以外の財源開拓を迫られていたはずだ。】