このブログでは色んな政治家を痛烈に批判することが多い。が、バカにすることはほとんどない。しかし一人だけ例外がいる。
それは韓国の大統領・盧武鉉くんである。
この人物に限り、批判だけでは追いつかない。というか、どうしても批判を通り越して、皮肉や嘲笑の域に達してしまう。それだけこの政治家は、規格外のスケールの持ち主なのだ、その水準の低さが(笑)
先週だったか、テレビの報道番組に民潭(民団)の幹部が出演していた。おだやかな
風貌と口ぶりのこの幹部は、「総連との和解」に反対で、盧武鉉くんの対北朝鮮政策を厳しく批判していた。
で、インタビュアーが「どうしてそんな人物を韓国民は大統領に選んだのですか?」と
訊ねるとこう答えた。
「盧武鉉大統領が誕生してしばらくたってから韓国に行った。タクシーに乗ると盧武鉉
大統領の話になった。そして運転手はこう言った。『盧武鉉はキズ物だった。でも選挙のときはそれに気づかなかった。今になって欠陥商品であることが分ったが、今さら
返品できない。任期が終わるまで我慢するしかない』と・・・」
まあ、盧武鉉くんのこれまでの言動や行跡を見てみると、このタクシーの運転手が言う「欠陥商品」という表現に頷いてしまう。
しかし、大統領制は怖い面がある。「欠陥商品」でも任期が来るまで使い続けなければならない(笑)
2003年2月に大統領に就任した盧武鉉くんの余りのひどさと不人気ぶりを見て取った
野党は、2004年3月「大統領弾劾訴追」を可決する。が、韓国民の野党に対する反発は予想外に強く、逆に盧武鉉くんの人気が急回復。結局、野党は、直後の総選挙で惨敗を喫する。
このとき私は、韓国民は「盧武鉉という個人」ではなく「大統領という地位の不可侵」を支持した、そう思ったものである。
ところで、長らく20%台前半をウロウロしていた盧武鉉くんの最近の支持率はどうか?
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【ソウル15日共同】韓国社会世論研究所は15日、全国で13日に実施した世論調査で、盧武鉉大統領への支持率が18.2%と過去最低を記録、与党、ウリ党の支持率も15.1%と2003年11月の結党以来、最低になったと発表した。
同研究所は「政府与党への批判が高まっていることが(5月末の)統一地方選で確認
され、与党内で政界再編が提起された。国民の不満に不安が加わり、支持率が最低水準まで下落した」と分析した。
同研究所の調査では、盧政権発足直後の03年5月には盧大統領への支持率は48.4%、与党が大勝した総選挙直後の04年5月には50.1%を記録。昨年後半からは
ほぼ20%台に低迷していたが、10%台まで転落したのは初めて。
盧大統領支持、最低の18% 国民に不満
(2006年06月15日
西日本新聞)
ついに支持率が2割を切ってしまった。もうどうしようもない、と普通は考える。それでなくとも、5月の統一地方選挙における与党の得票率はわずか21%にすぎず、79%もの有権者が野党に投票した。常識的に考えればもうギブアップである。
ところが、規格外のスケールの持ち主である盧武鉉くんはまったく違う。彼は最近、こう語ったそうだ。
「消費者が支配する政治、消費者が支配する市場を作ることが改革の真にあるべき
方向だ。そして消費者主権を実現するためにはメディアの公正な情報提供が何よりも
重要だ」(2006/06/15
朝鮮日報【社説】)
この発言を、朝鮮日報の【社説】は次のように解説している(抜粋)。
消費者が支配する「市場の原理」とは、消費者が見放した商品は市場から淘汰されるというものだ。消費者が支配する「政治の原理」も同じだ。この場合、消費者が「不良品」だと判定した政治や政策は市場を追われる。
しかし大統領がこうした明快な原理を受け入れ、「現政権の政治・政策に不良品判定が下されたので、これまでの政治路線を変え、政策も取り下げる」という決意を表すために「消費者が支配する政治」という話を持ち出したとは思えない。
むしろ大統領の言いたかったことは「消費者主権を実現するためにはメディアの公正な情報提供が重要だ」という部分にあると思われる。つまりは1500万人の有権者がメディアの不公正な報道により与党の政治と政策を見誤ったということだ。結局「だから自分は5・31統一地方選の結果に承服できない」という姿勢を表明したに過ぎない。
つまり、「消費者が支配する政治、消費者が支配する市場」においては、「消費者が
見放した商品は市場から淘汰される」べきだが、5月の統一地方選の結果は「メディアの不公正な報道により(消費者が)与党の政治と政策を見誤った」ためだから、「自分も自分の政策も市場から淘汰されるべきではない」「むしろ淘汰されるべきは不公正な
報道をするメディアだ」と盧武鉉くんは言い張っているのである(笑)
まあ、政治の世界は一筋縄ではいかない。素直さや率直さが「政治家としての長所」とは一概に言えない。ときには開き直りもプロパガンダも必要である。
が、民主政治においては、それにも「限度」というものがある。盧武鉉くんの、「民意は
メディアの不公正な報道によって作られたもの」という言い分は、独裁者の開き直りに
等しい。
朝鮮日報によると、盧武鉉くんに批判的なメディアが多い中、テレビ局とインターネットのポータルサイトだけは盧政権に好意的であるという。インターネットは「政権の捕虜になった」と評され、公営テレビについては「軍事政権時代よりもっとひどい」と言われている。
前出の「消費者が支配する政治」発言も、その「政権の捕虜」であり、親盧武鉉であるポータルサイトの代表を招いた大統領府昼食会でのことだ。
選挙の結果は「メディアの不公正な報道のせい」と開き直る一方で、政治的影響力を
行使しやすい公営テレビやインターネットのポータルサイトは自陣営に取り込み、露骨な政権擁護報道をさせる。が、それについては口をつぐむ。
まさに独裁者の発想と手法である。
ところで、与党陣営が統一地方選挙で惨敗した原因の一つが、歯止めのかからない
経済情勢の悪化であるという。
盧武鉉くんは典型的な「富の再分配」「結果の平等」重視派である。彼が、ソウル大学や富裕層が多く住むとされる江南地域に敵意を燃やしてきたことは有名だ。
昨年の9月にも、ハンナラ党の朴槿恵代表との会談で、「ソウル大学に通うことそのものが機会につながる社会で、ソウル大学の60%を江南(カンナム)地域に住んでいる学生が占めているという現実は問題がある」と述べている。
実際のソウル大学の入学者に対する江南地域出身者の比率は12.2%(2005年
ソウル大学入学管理本部)。にもかかわらず、60%という数字をねつ造してまで「格差」を問題化する。
この、富裕層、エリート層に対する憎悪にも似た敵意が、「江南地域の特権層」=「不動産投機で利益を手にする階層」という妄想を生み、これが「不動産の過剰所有者に対する課税強化と、その税収による低所得者用住宅の建設
」という政策につながった。
しかし、この政策に不動産投機を抑制する効果はなく、逆に経済情勢をますます悪化させ、結果的に中間層の盧武鉉及びウリ党離れを促進したというから皮肉なもんだ。
盧武鉉くんの「反日」意識は強烈で、100年前の「親日行為」を弾劾し、その子孫から
財産を取り上げるという、およそ民主主義国家では考えられない愚挙を連発してきた。
一方で、盧武鉉くんの義父は朝鮮戦争当時に北朝鮮側に立って戦った。そして、韓国人兵士13名を殺害し、金日成から英雄として表彰を受けた。
この事を記者から訊ねられた時、盧武鉉くんは「何か、不都合はありますか?」と回答した(爆笑)
100年前の「親日行為」を弾劾し、50年前の「容共・殺人行為」は正当化する。
「反日」「容共」「反ソウル大学」「反エリート」「反富裕層」。
「偏った理念」を優先し、現実には「無為無策」。
韓国のタクシー運転手ではないが、盧武鉉くん、やはり「欠陥商品」であることは間違いない。
民主主義を標榜する国家で、こんなリーダーが存在するのも珍しい。
盧武鉉くんの任期が切れる1年8ヶ月後、韓国民が次に何を選択するのか、興味を抱かずにはいられない