最初から無いもの

最初から孤独だった場合、

それに気づくことは困難だ。



このまぶたのない世界では、

光るものが全てなのだから。



ナキには、

人々を責めることも、

人々に愛されることもできない。



最近では真っ白な漆喰しっくいの壁も、

ナキの前から姿を消しつつあった。




悲しくはない。

怖がる必要も。




ただ、

唯一ゆいいつ愛しいと思えたものにさえ、

自分の愛着が底のみえる程度だったのが残念に思えた。



ナキは、

わずかに残った白い壁をするりとでた。




海がより青く、

美しく見えた気がした。






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