最初から孤独だった場合、 それに気づくことは困難だ。 この瞼まぶたのない世界では、 光るものが全てなのだから。 ナキには、 人々を責めることも、 人々に愛されることもできない。 最近では真っ白な漆喰しっくいの壁も、 ナキの前から姿を消しつつあった。 悲しくはない。 怖がる必要も。 ただ、 唯一ゆいいつ愛しいと思えたものにさえ、 自分の愛着が底のみえる程度だったのが残念に思えた。 ナキは、 わずかに残った白い壁をするりと撫なでた。 海がより青く、 美しく見えた気がした。