世界はひとつしかない。 ひとつしかない世界の中で僕はひとりだ。 ひとつのなかのひとり。 漆喰しっくい の家の前には、 僕が始まったときに出来たという海がある。 いつも吸い込まれそうなほど青くて、 ふいに思い出してしまうぐらい悲しい。 僕の始まりがそんなに悲しかったのだろうか? 果ての無い空は、 今の僕をも悲しんでいるのか? 漆喰しっくいの家の前には、 僕が始まったときに出来たという海がある。 海は今日も 僕を許してはくれない。