ナキの始まりと共に、 果ての無い空から、 突き抜けるほど青い涙があふれた。 人々は混乱し、 世界の揺り篭 である産土 に助けを求めた。産土 は押し寄せる雫 の波から人々を守るため、 己を大きく揺り動かし、 遥かなる底へと、自ら地を掘り進んだ。 やがてその穴は地の底に突き当たり、 世界の半分以上を飲み込む大きさとなった。 その周りに積み上げられた土山 は 天に届くほどの高い山脈となり、 人々はその外へと時を急ぎ、逃出 でた。 ナキの出現から7日ものあいだ、 青すぎる涙は世界に降り続け、 口を開けて待っている地の底へと積もっていった。 やがて涙が止み、 人々が高らかな場所から穴を見下ろすと、 アポロの風により波ができ、 アポロの光により青さを増した涙があった。 人々はそれを『海』とした。 海は世界を飲み込んでしまうほどの広さと、 世界を凍えさせてしまうほどの悲しさをもっていた。 人々はその悲しみを『冬』とよんだ。
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