海と冬


ナキの始まりと共に、

果ての無い空から、

突き抜けるほど青い涙があふれた。



人々は混乱し、

世界の揺りかごである産土うぶすなに助けを求めた。



産土うぶすなは押し寄せるしずくの波から人々を守るため、

己を大きく揺り動かし、

遥かなる底へと、自ら地を掘り進んだ。



やがてその穴は地の底に突き当たり、

世界の半分以上を飲み込む大きさとなった。



その周りに積み上げられた土山つちやまは

天に届くほどの高い山脈となり、

人々はその外へと時を急ぎ、逃出にげいでた。



ナキの出現から7日ものあいだ、

青すぎる涙は世界に降り続け、

口を開けて待っている地の底へと積もっていった。



やがて涙が止み、

人々が高らかな場所から穴を見下ろすと、


アポロの風により波ができ、

アポロの光により青さを増した涙があった。



人々はそれを『海』とした。



海は世界を飲み込んでしまうほどの広さと、

世界を凍えさせてしまうほどの悲しさをもっていた。



人々はその悲しみを『冬』とよんだ。








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