まだ八月の終わりだというのに、当日の河口湖周辺は肌寒く、 空は今にも降り出しそうな雲が低く垂れ込めていた… 会場前の入り口周辺には野外ライブならではのリハの音が聞こえてくる、 『嵐ヶ丘』のイントロ、ギターの演奏が始まる、続いてボーカル… かすれた鬼束さんの声が聞こえてくる、そして途切れた… 次々とリハの曲目は進む、主の無い曲たちは虚しく空に吸い込まれる… 以外にも鬼束さんの出番は早かった、 ステージ上に運ばれた、見慣れた丸い敷物で直ぐに判る、 足早にステージに現れた彼女は落ち着き無く歩き回り、そして跳躍する 苛立っているのが離れた客席でも判り、期待と不安が膨らむ… こんな時の彼女には普段以上の何かが起こることを知っている そのままの状態でイントロが流れる… 『嵐ヶ丘』ギターが鳴き歌い始める、彼女の内面が会場に広がるそんな声だった 先程までの不安が嘘のように引き込まれていく… サントリーホールとは違う激しい印象が残る… 二曲目は『イノセンス』激しい感情のままに歌い上げていく そのフラストレーションを爆発させるように彼女は与えてくれた… 『月光』聴きなれたはずのこの曲も新しい一面を見せる 今にして思えば彼女の喉は既に限界を超えていたはずなのに… テンポが変わり羽毛田さんの合図で会場に手拍子が広がる 『We can go』野外ライブの一体感がいつのまにか暗くなった会場を包み込む、 「耳を塞いでも 叫び続けるから」 「羽根を失くしても 私は飛べるから」 その通りに彼女は叫びつづけ、見事に歌い続けてくれた… メンバー紹介、ギターを取り出した羽毛田さんを軽く突っ込む、 「ギターもやるんだ!」あらゆる意味で彼女の支えであることが伝わってくる ラストソング、野外ライブとこの日の彼女にはこの曲が一番似合う 彼女の迫力はどんなに文字を飾っても決して表せない… 夕闇のステージで全身を使って歌いつづける… 傷ついた喉をかばうこともせずに戦いつづけた… 『Beautiful Fighter』 ペインテドブラック |