今週の名曲

このコーナーでは、毎週「交響曲「協奏曲・組曲」「小品」の3作品を紹介していきます。

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交響曲 第41番 ハ長調 K551「ジュピター」 作曲者:モーツァルト

第1楽章 (Allegro vivace)
  第2楽章 (Andante cantabile)
  第3楽章 (Menuetto : Allegrotto)
  第4楽章 (Finale : Molto Allegro)

 モーツァルトの最後の交響曲です。晩年自分の死を察し、その気持ちをこの曲に表したような、なんともいえない旋律が特徴です。ただ、彼の曲はチャイコフスキーと違って、自己的な解釈はあまり取り込まないので、実際「死」を意識していたかはわかりません。

第一楽章はいきなり第一主題からはじまります。ベートーベンの「運命」もこの形式をとってますよね。モーツァルトがこの後の音楽に与えた影響の大きさがわかります。繊細な第二楽章も聴き所ですね。

第二楽章は彼らしい、ゆったりとした曲なんですが、細かな32分音符が多用されているので、決して「遅い楽章」であるという印象はうけないと思います。

第三楽章はまさにこれがメヌエットというメヌエットですね。

そして第四楽章、壮大すぎます。トランペットと弦のメロディがたまりません。

僕が中学一年の時(だったかな)にはじめて聴いた交響曲・・というか、はじめて買ったCDがこのモーツァルトの41番なんですが、まだなんにも音楽を知らないなりにどっぷりはまったのは、この曲が持つ魅力が相当なものだったんでしょうね。

MIDI (第1楽章) (第2楽章) (第3楽章) (第4楽章)

 

ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35 作曲者:チャイコフスキー

第1楽章 アレグロ・モデラート(序奏部)モデラート・アッサイ 
第2楽章 カンツォネッタ・アンダンテ
第3楽章 アレグロ・ヴィヴァーチッシモ 

 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ですが、実はこの一曲しかありません。その理由はわかりませんが、この曲を作曲する際、ロシアのヴァイオリン奏者コテックに楽器の技法上の問題について意見をとり入れたりして技術的に万事遺漏のないよう作曲されました。ところがこの作品を当時高名なヴァイオリン奏者であったレオポルド・アウアーに捧げたところ「演奏不可能」という一言でしりぞけられ、その後1881年12月チャイコフスキーの親友アドルフ・ブロドスキーの独奏で初演されるまでの3年間、世間に出ることはなかったようです。

初演は・・というと、これも散々なものだったらしく、チャイコフスキーは、すっかり意気消沈したのですが、初演者ブロドスキーは少しもひるまず、その後も各地でこの曲を積極的に紹介したため次第に真価が認められました。ついにはアウアーまで、過去の非を認めて自ら進んでこの曲を演奏するようになりました。

現在はアウアーのカット版で演奏されることが多いですが、しばしばノーカットで演奏されることもあります。

MIDI

 

オラトリオ "メサイア"より ハレルヤ 作曲者:ヘンデル

第一楽章:アレグロ・モデラート

ヘンデルの最も有名な作品で,「第9」,「くるみ割り人形」と並んで年末に頻繁に演奏される曲です。初演は,1741年にダブリンで行われていますが,彼の死後もモーツァルトをはじめとして,いろいろな編曲が行われ,多くの版の楽譜が出版されています。

個人的にあまり宗教的な音楽は好きでないのですが、これはだれでも聴いたことがある曲でしょう。

この曲が作られたころヘンデルのいたイギリスではつの革命を終え市民層が台頭し始め、国家権力の弱化に伴って宮廷音楽が衰退し、劇場音楽へと移行している頃でした。気品に満ちて崇高ですらあるヘンデルの音楽はまさにこの時代の変化に対応し、オラトリオという「宗教的な主題を持ったオペラ」をつくっていきました。オラトリオはバッハの曲のように教会音楽で演奏されることを想定していません。このことも、メサイアが世界中で愛好されている理由になっているといえそうです。

MIDI

 

交響曲第9番ト短調,D.759「未完成」 作曲者:シューベルト

第一楽章:アレグロ・モデラート

第二楽章:アンダンテ・コン・モート

 「未完成」といえばシューベルトですが、未完成な交響曲はいっぱいあるんですよ。ブルックナー:交響曲第9番やマーラー:交響曲第10番があります。なぜ「未完成」のままになってしまったのか、それはだれも知るすべはないのですが、映画「未完成交響楽」から知ることができます。

 シューベルトが自作の未完の交響曲をピアノで演奏しているところへ、令嬢カロリーネの笑い声によってその演奏は中断されてしまい、彼女はそれを後悔し、夏の間、シューベルトを姉妹の音楽教師として雇ってもらい、やがて恋仲となります。カロリーネの結婚式に駆けつけたシューベルトは完成した交響曲をピアノで弾くのですが,第3楽章の途中の以前彼女が笑い声を上げた場所で、カロリーネが叫び声を上げて気絶してしまうために弾くことができなくなってしまいます。そして彼は、その後のページを破り捨て、「わが恋の終わざるが如く,この曲もまた終わざるべし」と残りのページに書いた・・・というものです。

 実際、第3楽章まで着手していたのは事実なんですが、その途中から「さすらい人幻想曲」の作曲をはじめています。未完の曲は友人のヒュッテンブレンナーに送られ、40年も保管された後に世に知られることになったんです。

 つい最近までこの「未完成」は、第8番だったり第7番だったりしたのですが、今では9番に落ち着いています。8番はかの有名な「ザ・グレイト」です。なぜこんな番号かあやふやなのかというと、番号の付け方の基準、つまり「作曲された時期」で番号を付けるのか、「楽譜が発見された時期」なのか・・・があいまいだったからです。

MIDI(第二楽章)

 

組曲「展覧会の絵」 作曲者:ムソルグスキー
  ラヴェル編曲をオケでよく聴きますが、もともとはピアノの曲です。しかもこの曲の編曲をした人はラヴェル以外にもたくさんいて、その編曲もオケからバンドまで様々です。

 この曲は、ムソルグスキーの友人の画家であったガルトマンの急逝とその遺作展をきっかけにして生まれました。その7年後の42才でムソルグスキー自身も没し、この作品は忘れられてしまうのですが、約40年後、パリで指揮者クーセヴィツキーの依頼でラヴェルがアレンジしてから一躍オーケストラの主要なレパートリーとして定着しました。もしラヴェルの天才的な編曲がなかったら、たぶんこの曲はマイナーな作品として忘れられていたかも・・・。

MIDI

 

ボレロ 作曲者:ラヴェル
   ラヴェルの生涯最後の舞踊音楽。イダ・ルービンステイン夫人の依頼で書かれたものだけど、彼はほんの習作のつもりで書いていたそうで。

 この曲の特徴はなんと言っても同じリズムとその旋律が繰り返されることだろう。最後の8小節まで繰り返されるこのメロディは、主題と副主題に分けることができるが、この2つの繰り返しはなんと19回も続いている。しかもその間間奏や展開は全く入ることなく、楽器の組み合わせが変わるだけなのだ。まさにこの曲は今で言う「Dub」の究極型形式ではなかろうか。

このような曲調なので、指揮者や楽団によってその善し悪しは大きく左右されやすい一曲。

MIDI

 

交響曲第5番「運命」 作曲者:ベートーヴェン

第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ

第2楽章:アンダンテ・コン・モート

第3楽章:アレグロ(スケルツォ)

第4楽章:アレグロ

 交響曲第5番《運命》の印象的な冒頭部の着想について、ベートーヴェンは、「運命はこのようにして扉を叩く」と表現してます。友人で弟子でもあったカール・チェルニーによると、ベートーヴェンがウィーンを散歩していた時に聞いたホオジロのさえずりがこの旋律のヒントになったとも言われています。真相がどうあれ、出だしのこの数小節とそれに続く激しい感情に満ちた交響曲は、聴覚の衰えが進行してゆくことにおびえるベートーヴェンの苦悩といらだちを物語っている様にさえ聞こえます。

 この曲で最も知られている、弦楽器の”ダ・ダ・ダ・ダーン”という4つの音のリズムは、奇しくも「運命」の完成から4半世紀後に発明されたモールス信号の国際符号の『V』に対応しており、第2次世界大戦中この4つの音は「ヴィクトリー(勝利)のV」を表す合図の音になりました。フォスターが「交響曲5番は、かつて人類が聞いたことのない、最も崇高な騒音である。」といった意味も、ここに通じていたのかもしれません。

この交響曲は、第一部【呈示部】第二部【展開部】第三部【再現部】第四部【終止部】というまさに『起承転結』な構成になっていますが、この再現部はまさに第一部のRemixとも言えます。また”ダ・ダ・ダ・ダーン”は、我々が通常イメージする旋律線とは違い、どちらかというと同音の連打で伴奏系と言えます。それが、主題として用いられていることも、この楽曲の大きな特徴ですね。

MIDIでは各楽章のいくつかの場面がわかれて収録されていますが、これらを頭の隅に置いて聴いて頂けるとうれしいです。

MIDI

 

組曲「惑星」作品32 作曲者:ホルスト
 組曲「惑星」では、太陽系9つの惑星の内、「地球」と「冥王星」を除く7つの惑星の名がつけられた曲で構成されてみます。太陽系の一番外側を周る「冥王星」は、作品が完成した1916年の時点で未だ発見されていなかったのため、この組曲の中には含まれてないです。作品は実際の惑星の並びとは違って、次のような順で演奏されます。


 
第1曲:火星 - 戦争の神
Mars, the Bringer of War. Allegro

第2曲:金星 - 平和の神
Venus, the Bringer of Peace. Adagio - Andante - Animato - Tempo I

第3曲:水星 - 翼のある使いの神
Mercury, the Winged Messenger. Vivace

第4曲:木星 - 快楽の神
Jupiter, the Bringer of Jollity. Allegro giocoso - Andante maestoso - Tempo I - Lento maestoso - Presto

第5曲:土星 - 老年の神
Saturn, the Bringer of Old Age. Adagio - Andante

第6曲:天王星 - 魔術の神
Uranus, Magician. Allegro - Lento - Allegro - Largo

第7曲:海王星 - 神秘の神
Neptune, the Mystic. Andante - Allegretto

 

 特に有名なのは「火星」と「木星」ですね。

 火星は「戦いの神マルス」に称えられていて、昔から「戦争をもたらす星」ともいわれてきました。曲は全曲を通して、ティンパニと弦による4分の5拍子の力強いリズムが執拗に繰り返されています。この特徴あるリズムを背景に3つの主題が展開します。

 「木星」は全7曲の中で最もスケールが大きく、通常のオーケストラ編成では4本のホルンもここでは6本に増強されるなど、壮大なオーケストレーションによる祝典的な音楽が展開されます。ホルストはこの曲について、「木星は一般的に歓喜を表すとされていますが、ここに描いた音楽は、国民的な行事、もしくは宗教的な祝典に結びつくような、儀式的な喜びを表現したつもり。」と記しています。

MIDI(火星) MIDI(木星)

 

行進曲「威風堂々」第1番 作品39-1 作曲者:エルガー
  エルガーの最も有名な作品の一つ、行進曲「威風堂々」は全部で5曲が書かれてます。「威風堂々(Pomp and Circumstance)」という原題は、シェイクスピアの『オセロ』にあるオセロの台詞から採られたものとか。
 第1番は1901年に作曲されています。中間部(トリオ)の旋律はイギリス国王エドワード7世の耳にとまり、後に「戴冠式頌歌」にも用いられてからは英国の第2国歌として今も愛唱されています。まさに「ロイヤル」というイメージの旋律ですよね。

MIDI

 

 

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