てんで終わらぬ物語

一本の道
白銀
二つの世界
物語はてんで終わらず
北へ
狐たちの化かし合い。

北へ
北へ?
北へ。

また誰かを傷つけに
北へ
北へ向かう

なんて素敵な光景だろう
神の住む島まであともう少し
なんて素敵な光景だろう
誰もが愛し合っている
必死で嘘をつき合って

気づかない振りをしてるけど
数え歌を忘れてしまったんだ

恐いね、きよ
手を離さないでね、名和眠
なんて素敵な光景だろう
神結、もっと近くにいてよ
ねえ、これが理想だろう?
鬼火、すごく恐いよ。
ねえ、静暮、ほら、カーニバルだよ。
沈黙のメリーゴーランドだ。

まの姉さんと先に行ったんだね、きよ
鬼火ももう行ったよ
名和眠を連れてすぐに行くね。
神結、百人浜かな?

新しい自分になりたいとか
そこではないどこかへ行きたいだとか、
例えば君がそう思ってあせっていたとしても
季節は移り変わっていく
庭先に水を打つ夏が過ぎ
落ち葉を集める秋を越し
一面の銀世界 冬を迎えて
雪の中で人は
気持ちよく目覚め
気持ちよく愛し合い
気持ちよく傷つけあい
気持ちよく忘れる

雪が私たちの肩に降り積もる刹那
秘密の梯子の存在を知った
その先には明日の処女性があった

西から吹く風がすべてを
土深く閉じこめるとして
雪が溶ける頃にまた
椿屋敷の門の前、お会いしましょう