弐〇〇〇年師走九日 於本八幡ルートフォーティーン


本日の演目

新曲(アカペラ)
春爛漫
我三界に住み処なし
夢十夜
明鏡止水
夏蝶

 かるーい、そこなし、ありぢごく。
つまさきだちであおぐばびろん。
よどみすぎててわからない。
わたしのすがたはみにくいですか?

いつもの幻想的なSEに乗せて、ステヱヂに現るメンバア。
しぐれ嬢は撥をくるくると煙管のようにあしらいながら、
本日の口上。
その出で立ちはいつもよりいかばかりか崩れた印象で、
荒びが強烈な婀娜となって見えます。
名和眠嬢は薄桃の着物に、
きよ嬢は破壊田→Tシャツ、腕には包帯。
そして、淡々とアカペラの新曲。

さくらがふる、さくらがふる。
さくらがふる、さくらがふる。
ぎおんのよるにはるがさく つきはおぼろにひがしやま
かすむよごとのかがりびに
ゆめをいざなうびゃくやのもり
ひとのこころにすくうおに ほのおはぢつとほをそろえ、
しょせんうきよのざれごとと、すぎゆくときはとめられぬ
さればこそ、
ときをしていま、びはらんちょうにまう。
はらはらと、さくらがふる、さくらがふる。
こよいもよぞらにはるがさく。

続いてやおら草紙を開くしぐれ嬢。
よみえがるように口上が流れます。
そこに繰り返される桜の散る描写はまだ遠き春の姿を
ちらつかせ、静かに降り積もっていきます。
ここでしばしのおまつり、と
「春爛漫」「我三界に住み処なし」と所期の曲を披露。
琴弾きに臨むきよ嬢をお扇子であおいだり、
ひょい、ひょいと動き回るしぐれ嬢は童女の如く。

げきぢょう、ぼうとく、よくぢょう、ふきょう。
うかびあがるりそうきょう。
しんじつひとつあかつきにきえ、
ときをしていま、びはらんちょうにまう

「夢十夜」。
遊びつかれたしぃちゃんは、ゆったりとそのうたを歌います。
アコヲディオンの音色は月の如、鮮やかに夜を照らし
その音色を奏でる名和眠嬢に寄り添うてみるしぐれ嬢。
つかの間の安らぎに身をたゆたえ、
再び口上。

たのしかったきおくまたまぼろし。
びじんはむげんにみだれまう。
いくとし、いくよ、かぞえうた。ぼせいがそらをおおうよる、
しきゅうがうごめくおとがする。

闇の中に赤い傘が揺らめき、「明鏡止水」
そして不穏なギターの音色から数え唄「夏蝶」へ。
三重唱が会場に響き、溶暗するようにしぐれ嬢の、歌声。

おかえりにはおきをつけなさい。
かえりはこわいというでしょう。
おににあったらめをふせて、しずかにさきをいそぎなさい。
きつねにあったらめをとじて、けっしてふりむいてはいけません。
けっしてふりむいてはいけません。

お別れを暗示する口上に、重なり合うSE。
今宵はこれにてお開きのようです。
幾ばくか突き放した感のある今宵の興行には、
夜道でふと遭遇した鬼火のような寂しささえ感じるのでした。

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