弐〇〇〇年神無月参拾日 於大阪難波ロケッツ


本日の演目

母狐
エログロきつね
夏蝶
水色の涙
夢十夜
明鏡止水
我三界に棲み処なし
新曲(アカペラ)

 青。真っ赤な着物に映えたしぐれ嬢の帯。
子を思う母の気持ちかしぐれ嬢の表情は優しい。
朗読される彼女の声に名和眠嬢・きよ嬢の声と鈴の音が重なり
三重奏となった沈んだ先は海の底。
海底から聞こえたのはきつねの言霊。
「犯した罪気づいても 罰を受ける気などない」

橙。暗い海底から海上に上がると眩しいばかりの太陽。
季節は夏か。
「夏蝶」が狂い飛ぶ。必死に追いかけるしぐれ嬢。捕まえられない。
捕まえられず悲しく瞳を伏す。

青緑。こぼれ落ちた涙は水面に映り、"水色の涙"に変わる。
きよ嬢が奏でる琴の音色はやさしい歌。
ノイズギタアの音は時として静になり心を癒す。
癒しの音色を生み出すきよ嬢の手に力が入る。

桃色。弾き出された音色は蝶のように舞い、舞い降りた先は百合の花。
夜毎に降る星のかけらがきらきらと百合に付着し
"夢十夜"に華を添える。
深く深く静めるしぐれ嬢の手の先にはいったい何があるのか。

ひーふーみー…見つけた。
見つけたのは夜空に大きな真ん丸い円。
その円はくるくるくるくるまわる。
どうやら回り始めたのはしぐれ嬢の番傘。
番傘の上で踊る兎は十五夜お月様見て跳ねたそうな。"明鏡止水"の上で。
喜ぶ兎と三人の姿が重なり合う。
月はやがて雲に隠れて姿を消してしまう。
現れたのは闇?
「あんたの言ってる事全然分からないのよ私にはさっぱり」
しぐれ嬢の気迫の中に物悲しさが窺える。
名和眠上もまっすぐ前を見つめる。
投げかける視線の先は地獄なのですか?
「地獄を見届けよ…」
いいえ。ここは地獄ではなく。
"我三界に棲み処なし"。

緑。再び鈴の音が聞こえ終演の時を告げる。
鈴の音と三人の声が会場内に響く。
「ただ優しさを愛と信じ」
「信じるだけの蜘蛛の糸」
信じるが故に掴んだ蜘蛛の糸は時として裏切りとなるのか。
深く心に刻み込まれる。

暗転。
きよ嬢、名和眠嬢はふらりと舞台から姿を消す。
一人残されたしぐれ嬢は妖しく可憐に舞う。
目の前にぶら下がった千羽鶴の一羽が
まるで彼女に乗り移ったかのように。
一匹の鶴はちょこんとお辞儀をして、
やがて羅宇屋という住処に帰って行った。
桜が狂い咲く季節春爛漫を口ずさみながら
また彼女たちはやって来るであろう。
そんな気がしてならない。

反省とお詫び
かなり偏った私のレポヲトやらを見てくださり有難う御座いました。
私独自の目線で観させて頂いた故レポヲトと呼べるものかどうか
疑わしいのですが、私が見た羅宇屋をそのまま書かせていただきました。
最後に緋櫻天乃嬢、羅宇屋の皆様に感謝とお詫びを申し上げます。

大阪特派員 柚薫 戻る