弐〇〇〇年神無月九日 於名古屋藤が丘ミウヂックファーム
赤い蛇 第三巻


本日の演目

薄暮の森―赤い蛇編―

朗読「嫁入り狐」
通りゃんせ
新曲(アカペラ)
母狐(アカペラ)
かごめかごめ変奏曲

 長らくの間雨を報せた天気預報は見事に外れ、
清清しい秋晴れの藤が丘。
待ちに待った羅宇屋所縁のイヴェント「赤い蛇」の第三巻が
行われました。

 今宵も羅宇屋は一番手。
舞台には色即是空の赤布に、仮面画報の煽り文。
壁一面には「赤い蛇」のフライヤーがみっしりと張られ、
何処となく格子戸を思わせます。
少しづつ本日の出演陣のエッセンスを盛り込んだ舞台に、
前興行で使われたSEが流れ、
そして青い着物の静暮嬢が舞台奥の「羅宇屋茣蓙」から
ちらり、と覗きます。
淡い色の着物の名和眠嬢に、振袖姿のきよ嬢。
二人とも楽器を持たずに現れます。
そして繃帯にサングラスで表情すっかり隠した
着流し姿の奇械田→氏。
きよ嬢がドラムセットの蔭へと沈み、
三人が草子を片手に読み始めるは「嫁入りキツネ」。
今宵もキツネの棲まう薄暮の森に迷い込んだ者がひとり…。
奇械田→氏は舞台を去り、続いてアカペラ「通りゃんせ」。
迷い込んだ童女の声か。それとも森の聞かせた幻聴か。
無垢な表情で唄う静暮嬢と、それを追うきよ嬢・名和眠嬢の声が
人まみれの会場に染み渡ります。
口上を挟んで、ここ最近のライヴで披露されているアカペラの新曲へ。
名和眠嬢も参加しての三重唱となったこの曲は、
なおざりに優しく強く、聴く者を包み捕え、切なさを喚起させます。
その後にもう一曲アカペラの新曲が。
「子懐う親心、親懐う子の心」との口上を受けた様な
激情にも似た優しさを唄った佳曲であった様に思います。
徐々に高みを知らしめる様な旋律に乗る静暮嬢の声。
先刻迄の童女の無垢さは影を潜め、艶やかな淑女の声へ。
千変万化の彼女の声に聞惚れていると、
「懐かしい 心の砦を崩す音」と
「かごめかごめ変奏曲」へ。
やがてSEに導かれるように舞台を去る名和眠嬢、きよ嬢。
ひとり残った静暮嬢、舞傘を差したまま
きよ嬢が括ったマイクスタンドの布に
愛おしそうに頬擦りをし、
名和眠嬢の前に咲いた
マイクスタンドの花に接吻をし、
「ありがとうございました」と一言。

鈴と声だけを使ったステヱヂングという
少しばかり特別だった本日の公演。
15分という短い時間ながらも
私が観て来た羅宇屋の興行の中で
本日がいちばん印象深く、且つ
心の琴線を強く弾かれたものであった様に思います。

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