Last Update:8th,Dec,'00(Fri)
音楽ホール ジョン=レノンってどんな人だったの?

 今回は音楽史から見たジョン=レノンという存在です。ナンか、久しぶりに音楽評論らしいネタだよねえ。
 はっきり言って、わたしはビートルズを聴かない。同様に彼の曲も聴いていない。伯父にもらった「Imagin(Album)」があるだけ。それも1年に1回聴くか聴かないかだ。
 こんなんが音楽論を振りかざしてジョン=レノン様を取り上げようなんて烏滸がましいとお考えの向きもあるかも知れない。……ある意味それは、正しい。
 しかし、ある意味では正しいとは言えない。だって、みなさんビートルズに直接影響を受けてるでしょ? それじゃ本当に突っぱねた視点では見られないって。
 客観性至上主義ではないけど、レノン今日の信者音楽理論に沿ってレノンを論じるのは無理があるよね。今回わたしはレノン礼賛を書きたいわけではないから。

 さて、彼はいったいどういうアーティストだったろう?
 簡単に言ってしまえば、音楽業界における産業革命に携わり続けた人間、と言うことが出来るだろう。
 誤解を招くのを承知で書くと、それまでの音楽は多かれ少なかれ「家内制手工業(マニュファクチャー)」であった。どう云うことかというと、「量産」が必ずしもできるものではなかったのだ。
 それまでの音楽は主にコンサート、ライヴによって成り立ち、一つ一つの曲に沢山のテクニックが詰まってたため、一期一会で同じ曲でもその都度微妙に違っていたのである。例えば、マンハッタンで聴く「Let's Dance」とカーネギーホールで聴く「Let's Dance」は全く別のモノであったのだ。
 しかし、ビートルズなどのグループサウンズはその常識を変えた。一つ一つの曲が怖ろしく単純化され(当時の常識で)、いつでもどこでも全く同じ曲が演奏できる。つまり、「Love Me Do」はリバプールであろうがロスアンジェルスであろうが東京であろうが「Love Me Do」なのだ。
 当時これが音楽として受け入れられなかった理由は至極当然である。「サウンドスケープ理論」の支配が続いていた時代であり、その時その時鳴っている色んな音がその場の雰囲気と共に音楽に寄与すると強く考えられた時期だからだ。実は、「ライヴ(コンサート)」と言う言葉はフリージャズ全盛のこの時期に出来た言葉である。
 そしてまた、それまでの難しい音楽理論をあらかたゴミ箱に送ってしまった。ボンボンで伝統主義者のポールに比べてジョンの曲の作り方は悪く言えば粗野、よく言えば格式に囚われない奔放なモノだった。つまり、音楽をより大衆に近いところにまで引き寄せたのだ。
 それまでは、ポール=アンカやニール=セダカ、エルトン=ジョンのように深く音楽を修めた人が綺麗な曲を作ってナンボだった。
 しかし、ジョン=レノンや同時期に活躍していたストーンズのミック=ジャガーは違った。それまでの音楽に合ってようが合わなかろうが、「ノレる」サウンドで有ればそれを積極的に取り入れていった。ビートルズの場合、その結果出来た曲が「Help!」であり、「Come Together」だと言える。
 この親しみやすいサウンドが現在のロック・ポップスの全てのルーツと言われる所以であろうと思う。

 さて、ここまでは総論だったが、ここからはより発展させたい。
 ジョン=レノンの音楽とはイデオロギー的に見たら紛れもなく「大英帝国」を体現した物であり、既にそれは過去の遺物とも言うべき物だ。
 だからこそビートルズはインドのシタールを自国の楽器のように扱おうとしたのであり、インドの音楽家達はその深淵な調べを聴かせて彼らにシタールを諦めさせたのだ。今やUKの音楽情勢はアイリッシュや北欧系、オランダやイタリアのユーロサウンドにジワジワと押されている。
 トルコではタルカンなどのポップスシンガーがトルコの音階を取り入れて一大ブームを起こしている。今更「国民楽派」と言うわけでもないが、いっちょ日本も民謡に回帰してみては?
 最近津軽三味線が若年層に人気が出て来ている。ギターの速弾きに似たところが買われているのだろう。しかし、それだけでは不服だ。日本には能・狂言の謡いや浪曲、民謡、都々逸が有る。
 今国内のミュージックシーンで流されている音楽はどれもビートルズ、ストーンズのブリティッシュを源流とするアメリカで熟成されたロックもどきでしかない。
 そんなパッチモンを聴くぐらいならわたしは本物のユーロポップスを摂取したいところだ。
 そんなわたしの心を最近掴んでいるのが、「民謡」である。「アリラン」もハマるし、「南部俵積み歌」も心の琴線に触れる。
 もっと本来の「Forksong」に戻っても良いのではないか?
 話がナニか妙な方向にねじ曲がったが、20世紀最大の遺産であるジョン=レノンを考えるついでにこんな事を考えてみた。

あなたの夢が紡がれますように


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