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音楽ホール
全然更新しないってのもなんだか。
って事で、四半期チョイぶりの更新です。(オイオイ)
今回は、「ホールの音響について」色々書こうかと。

 音は曲がるものである。

 こういうことを言われてあなたは首を縦に振ることができるだろうか?
 今ひとつピンと来ないのではないだろうか?
 光と同じで「曲がらない(ように見える)」モノであると思っているのではないだろうか?
 ここでは、アインシュタインの定理をやろうとしているのではない。
 空間が歪もうが歪むまいが、「音波」は歪曲するモノである。
 ナニも、特殊な状況に置かなくとも恒常的に変化するモノなのだ。
 ライヴ、コンサートをいくつか見ていると、特にそう思うのである。
 例えば、選挙の時など、街頭でメガホンを持ってでかい声で愚にも付かないことをガナり立てている光景を良く目にする。
 それでも、風が吹いたおかげで少し音の響き方が変わることは誰しも経験のあることだと思う。
 これは、風が吹いたことで、音が軌道を変えたか、音が拡散して音圧が変化したか、反射した音と打ち消し合ったのだと考えられる。
 基本的に音は消えることはない。かき消されているように聞こえるのは人間の耳に聞こえないほどの音圧になったからである。 もしくは、音と音との間に埋もれてしまったかであろう。
 音というのはデリケートなモノなのだ。
 従ってコンサートホールの音響設備は正に音の曲がり方を最大限に考慮している建物である。
 如何に音が効率よく響くか、如何に音を拡散させないか、如何に音を隅々まで届けるか。
 これらを最大限に考えて作るのである。
 もちろん、室内の温度、気圧、湿度、エアコンの風力によって常に音の飛び方は変わる。
 だから多くのコンサートホールの反響板は可動式になっている。
 そして、エアコンが完備しているところも少なくない。
 まあ、反響板が可動式になっている理由は他にもあるのだが。
 音楽のジャンルによって、理想とする反響時間が違うことが上げられる。
 原則として、クラシックでは反響時間は長いほど好ましい。特に室内楽では長ければ長いほど好ましい。残響時間が10秒を越えるところも存在する。
 しかし、ジャズでは程良い長さと言うモノがある。普通のクラリネットの音が2,5秒から3,5秒くらいが好ましいというような話を知人から聞いたことがあるような気がする。
 ロックでは短ければ短いほど良い場合が多い。でないと、エッジを利かせても前の音に埋もれてしまうことがあるからだ。それに、伸ばしたければ、機械(サスティナー)によっていくらでも伸ばせられる。
 あと、アカペラ、もしくはオペラのように人間の声を主体とするときは、少しでも人間の声を残すことが望まれる。しかも、次の音にかぶらない程度にと言う条件付きで。従って、残響時間自体は4秒から6秒でも良いのだが、本当に「余韻」として微かに音が残るくらいでないといけない。
 そういう点では、教会の聖堂なんかはとても良くできていると感心する。
 ヨーロッパの教会の、アーチ(ヴォールト)やドームは伊達や酔狂や単なる力学的建築技術でああなっているのではない。ゴスペルを遠くの信者にまで通すためにああなっているという一面もある。
 さて、話がそれたような気がするので戻そう。
 速度の違う高音と低音を客席に同時に届けるための工夫がホールには必要である
 そこで、反響板や空調が重要になってくる。
 反響板の材質は、木材が多い。まあ、ガラスを使うところもあるみたいだが、基本は木材。石材とか、金属は余り見ない。(ヨーロッパの教会は別にして)
 反射効率の問題だが、余り音を反射しすぎるのも問題があるって事である。
 特に、高音域は反射させずに程良く吸収させて上げないと耳にキンキンした音が残ってしまうのだ。従って、ガラス、金属は余り好まれない。
 低温域はむしろ反射させて上げないといけないのであるが、それがまた難しい。普通の木材だと、中低音域が吸収されることが多いからだ。
 低音域は音波の振幅が大きいので、すぐに曲がってしまうのだ。そこで、反射板の表面に小さな穴を開けておくことがある。
 高音を吸収して低音を反射するためだ。でも、これだと音の中核をなす中音域が弱まるので余りいい方法だとは言えないだろう。
 そこで、エアコンのお出ましである。
 私も詳しくは知らないが、高音を空気の流れによって上手く曲げてあげて、低音が客席に来る時に合わせるように反射させる、と言うことをやるらしい。
 なかなか凝った仕掛けではある、が、いったい設備費用にいくら掛かるんだろう?
 反響板がコントロール室一括制御だとして1000〜2000万、完全な空調設備で1500万、防音設備500万、舞台の照明・音響装置で500万……ぐらいすると思うんだけどなあ。
 反響板がコンピューター制御だともっと値が張るだろう。
 金が掛からないような音響設備はないのだろうか?
 ないこともないだろうが、やはり、先の金額に相当する技術力が求められる。
 例えば、世界文化遺産に指定されている(と思う)ローマのコロセウムがそうだ。ギリシャのテアトレの技術を上手く使って小さな音さえも客席の隅々まで届けられるよう工夫されている。
 が、それはあくまで無風の晴天の状態である。それに、コロセウムだって、作られた当時はやはり贅沢な建築物であったことは否めない。
 こうしてみると、そこら辺に点在しているジャズバーなどもなかなか馬鹿にできないものである。
 それぞれ、金を掛けずに上手く音を生かそうとする工夫が見える。
 みなさんもそういうバーや喫茶店に行ったときなど、店内を見渡してみても良いのではないだろうか?
 その店で、普段どんな音楽をやっているかが分かるかも知れない。

あなたの夢が紡がれますように
 

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