はっきり言いましょう。
子供の声というのは、実は、もうそれだけで完成されている、と私は思います。
ただ、それを歌に使うには、少々不安定な要素が数多く見られます。
例えば、音程であるとか、その肺活量だとか、いろいろな物をその小さな体から出てくる声に求められるのだからまあ当然といえましょう。
子供の歌声は、多くの場合、上質のクリスタルのように透明です。そして、淡い消えてしまいそうなはかなさを持っています。
これを使わない手はありません。
しかし、やはり一番の問題となるのは、肺活量がないことに依る問題でしょう。
音程が安定しないことと、長くのばせないことです。
しかし、これらを矯正するには、肺活量を鍛える、つまり、腹式呼吸に呼吸法を変えさせることです。
これは、先に挙げた、子供の歌声の美しさを奪うこととです。
胸式呼吸ならではの美しさ、そして、はかなさを奪うことなのです。
さて、ここで子供の歌い方という物を書いて置かなくてはなりません。
子供は、これが大前提となりますが、「ノド」で歌います。
成長すると、ノドで歌うのは余りよいことではありません。
声量が出ない、掠れる、高いキンキンした声質になりやすく長時間聞くのに耐え難い、などの欠点があるからです。
しかし、子供の「ノド」は違います。
とても柔軟なので、掠れることやキンキンした声質にはなりにくいです。声量が出ないのは残りますが。
では、腹式呼吸の強みはナンなのでしょうか?
声に力強さが出ます。
声をしっかり支えることができ、声量は劇的に増えます。声の音圧を増やすこともできます。
子供の声にはない物ですが、歌を歌う上では大事な物でしょう。
そのために、子供の声を少し鍛えて矯正するわけですが、これがまた難しいのです。
やり方を間違えてしまうと声の良さを潰しかねません。
やり方は様々です。
ノドを開けるという練習から始まって、ノドで歌わせながら腹式呼吸させる練習、声を効率よく響かせる練習、クチの開け方、タンギングの練習。それこそいろいろです。
しかし、一番難しいのは、これらの練習を、声を殺さないようにするギリギリのところでやらなければならないことです。
そうして鍛えた声も、男性の場合は特に、第二次性徴の時に失われてしまいます。
そのはかなさが、子供の歌声をますます美しい物にしているのかも知れませんね。
あなたの夢が紡がれますように
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