「(与太郎脱退は)ホント、寝耳に水ですよね。
合宿所も5人で予約してあったし」
――今回のニュー・アルバム『倭』を聴かせてもらって、これまで発表してきた作品の中でも群を抜いてソリッドだなと感じたんだけど。
TOSHI そうですね。
KIBA ある意味、ストレートかもしれないね。そのぶん、余計な部分がなくなって、ソリッドに聴こえるというのはあると思うんですよ。
TOSHI 実際、今回のアルバムは全部書き下ろしなんで、制作期間っていうのが、わりとギュッと凝縮されてるし。前作の『future
drug』はライヴでやっていた曲も入れてっていう感じもあったから、わりと期間の幅が大きいでしょ? そういう意味で、その時期のやりたいことっていうのが詰まってるから、そういう風に聴こえるかもしれないけどね。
――実際に曲作りに入ったのは、2001年の……。
KENTARO ちゃんと合宿に入って曲を作ったのは9月半ばですね。
――その時っていうのは、もうメンバーが4人での曲作りだったの?
KIBA そう。ちょうど、その合宿の前夜に、他の細かいことをやりながら“明日から曲作りどうしよう”みたいなミーティングをしている時に、与太郎くんが“ちょっと話がある”と言うことで……。(脱退の話を聞いて)そういうのはまぁ、明日からの合宿に来ても、今後の活動っていう(ことを話す)よりはね、これは4人でやっていったほうがいいだろうからっていうことで、“じゃあ、合宿自体は4人で行く”っていうことになって。ホント、寝耳に水ですよね。合宿所も5人で予約してあったし、“ありゃま!”みたいな(笑)。
TOSHI わりと(脱退の)理由がね、もうハッキリしてたんで、もうどうしようもないなっていう話で(苦笑)。
――それで寝耳に水のまま、翌日から合宿に行ったわけじゃない? 心構えも何もあったもんじゃないと思うんですよ。やっぱり5人でやることを想定していたわけだから。
KIBA そうですね。まぁ、幸いというか、逆に考える間がなかったんだよね。とりあえず、この期間で曲を作るって決めてたので……。逆に“明日から作ろう、作ろう”って言って、僕で言うと歌詞とかもいろいろ考えながら、それを合宿に行って形にしようと思ってたから。とりあえず、それを形にするんで精一杯で、一人足りないからっていう……違和感とかは若干あったけど、それよりは自分のやることをともかくこの期間でやってしまおうっていう感じですかね。
TOSHI 合宿に行くまでに、わりと自分の中で元ネタを作っていくじゃないですか? 頭の中で“こういう流れでリフがあって”とか、何曲かは考えていってるから。そういう意味では、まだ“与太郎くんがこう弾く”とまでは考えてはいないから、べつにそれはそれで仕方ない、と。ギターが一本なら一本で、それでKENTAROに対応してもらって、やりたい曲をやりたいっていうだけで。
KENTARO その時期に曲を作るっていうのは、みんなで決めて個々の作業に入ってたんで、とりあえず、それまで自分の中で貯めてたものをとにかく形にしたいっていうのだけだったんで。メンバーは一人いないけれども、それぞれ、“自分がやりたいって思うことをやれればいいや!”っていう風に考えてましたね。
KATSUJI ある意味、さっきTOSHIが言ったように、書き下ろしでイチから作っていくっていう作業だったんで、ずっとライヴでやっていた曲とかが入ってない。だから、これから新しく作るっていう風になっていったのかもしれないですけどね。“4人で作っていくものや”っていう風に思って、作業してましたね。
――それでレコーディングに入ったのは?
TOSHI 10月の終わりから11月……ですね。
KIBA 基本的には11月いっぱいで。
――そこに至るまでのアレンジなどの作業はどうでした?
KENTARO 曲作りはすごい早かったですね、今回は。
KIBA 以前は、ギター二人で話し合ったり、パートを分担したりしてたのが、一人の作業になったから……。
KENTARO そうですね。『future〜』を出してライヴをやって、貯まってたものをイッキに曲として形にしてから、ギターのアレンジとかはレコーディングに入ってからもやってるんで、期間的には長いかもしれないですけど。もう今回は、曲の大元がしっかりと早くできましたね。
――アルバムとして考えるなら、音を重ねたりすることも含めて、極端にこれまでと大差はないだろうからね?
TOSHI まぁ、やることはね。むしろ、差を感じるのはやっぱりライヴですよね。新曲に関しては、けっこう音を重ねてはいるけど、4人で作ったものなんで大丈夫だとは思うんですよ。実際、4人で困るのは昔の曲とか……。やっぱりお客さんは、昔のものを頭に描いてるから、それを望んでくるじゃないですか? でも、まったく同じようには無理なんで、そのアレンジとかを僕らがやらないとダメだ、と。そういう大変さはあるけど、逆にそこが面白味でもあると思いますけどね。
――確かに。今も“4人で”っていう思いがTOSHIの口からも何度も自然と発せられてるけど(笑)、やっぱり今回の曲作りに関しては、全員で取り組んだという意識は今まで以上にあるんじゃない?
KATSUJI まったくないと言えば、ウソになるかもしれないですけど、それでも特に意識してるっていう感じではないと思いますよ。今回は僕の曲も2曲採用になってて、個人的にそういう部分ではいつもよりも貢献できたんじゃないか、と。
――今回の曲を作っていく上で、個々に意識していたことはどんなこと?
KENTARO 僕は激しいのをしたい! っていうのがありましたね。それは制作途中で思ったんですけど。4人になってイチから出直すっていうわけじゃないんですけど、ここからも自分がやりたいことをやれる状況の中でやっていくっていうことで、“自分は一番何が好きなんだろう?”と思った時、やっぱり激しい曲だったんで、そこから広げていくっていう感じで。
KATSUJI 『future〜』以降はライヴが多かったじゃないですか? 『future〜』のツアーであったり、日本青年館での“未来劇薬”であったり、その後もライヴであったり……。そのツアーの時に“ライヴってやっぱりいいなぁ”って思ったんで、そのライヴで楽しめる曲っていうのをメインで考えていったんじゃないかなとは、自分では思うんですけど。
TOSHI 実際、今回、僕が曲を作った時は、今までの自分らのやってきたことの中で、いろんなことをもっと試したいっていうのがあった。それを踏まえたうえで。だから、曲を持っていった時にね、かなり曲的に冒険作であったりとかをけっこうやってみたりをしてるんですよ、自分の中でね。“こんなん、Gargoyleに今までなかったやろう”っていうのをやってみたりとか。ただ、でもそれは今まで15年やってきた自分らの経験とか、ライヴでのお客さんとのやり取りとかで培ってきたものなんで。今出る自分のすべてを出したいなっていう感じで。それで、次を見据えた冒険作をちょっと入れたいというのがチラッと頭にあって、そうやって作っていったという感じですね。
――歌詞的にはどう? 言葉自体がものすごくストレートになってきた印象を受けたけど。
KIBA そうですね。その一つとして、短い期間で詞を書いたので、こねくり回さなかったというのもあると思うんですよね。パッと作って、そのままでいいやって言うとヘンですけど、一番伝えたいことが伝えられればいいなとは思った部分はあって。そんなに、ああだこうだなかったですよ。今回、ボツになったものもあるけど、できたもの自体は時間かからずにできましたね。
――詞を見ても感じたんだけど、けっこう言いたいこともガーッと溜まってたんじゃないの?
KIBA そうですね(笑)。
――前作で言う「似非狩り」の流れみたいな……。
KIBA アハハハ(笑)。
――方向はいろんなベクトルに向いて、いろんな表現してるけどさ。中でも「過激な純情」っていうのは、いい意味でショックだった。“なにくそ、この野郎”みたいなところがストレートに伺えるし。
KIBA そうですね。言いたいことがわかりやすいことはいいことですからね。それはすごくいい感じだと思います。次はまたどうかわからないけど、今回はこういう期間にこういうことを書いたら、ちょうどこういうことが言いたかったっていう。すごく伝わりやすい。
――あと、やっぱり作品としての“新三部作”っていうのは特に意識していた?
KIBA 終わりっていうか、そっちのほうを考えましたね。前の2作っていうよりも、“これでまた、一回、三部作っていうのを締めるんだよな”というのを考えて。それでTOSHIのアイディアですけど、ここで終わって、“はい、終わり”っていう終わりっていうよりは、“次が始まるんじゃないかな?”っていう終わりにしたいなって思ってて。それはなんか、こう……、原点回帰というか、もう一番最初にバーンって戻るっていうか……。最初のGargoyleの、例えば歌詞で言うと、『禊』とかなら複雑で難解だったのも、その時、バーッと書いただけのような気がするんですよ。それが今回のようにわかりやすいかどうかは別にして。当時も自分ではべつにそんなにネラいがあったわけではなくて、思ったことをダッと書いてみようと思って(詞を)書いてたんで。今回もわりとそういう感じで、書きたいことをバッと衝動的に書いて、そういうところからまた始められるんじゃないかなっていう気がした。まぁ、曲のタイトルとかも含めて、そういう気で書いた感じですね。
――今も話に出てきた曲のタイトルもすごいよね。日本語度が増してきたんじゃない?
KIBA そうですね、今回は。ほとんど全部。カタカナもあるけど。
「『倭』っていうタイトルに持つ意味は、
Gargoyleのルーツみたいな感じ」
――演奏隊に目を向けると、『future〜』まではバッキングのギターとか、いつも二人で別々に録ってたんでしょ?
KENTARO そうですね、だいたい一本ずつ。曲によっては、二本とも僕が弾いたりっていうのもありましたけど、基本的にはアレンジした二つのパートを一本ずつ弾くって感じでしたね。
――今回は、一人でダブルで弾いたわけじゃない? そういうこともあってか、カッチリしててソリッド感も増してると思う。性格が出てるな〜って気もするけど。
KENTARO (笑)。早い曲が多いし、やっぱりそういう部分でタイトさは出したいなっていうのはあるんで。
――それに付随して、リズム隊のサウンドも芯がよりいっそう太くなった感じがしたな。
KATSUJI あぁ、太くなりましたか? 腹が(一同爆笑)。だいぶ痩せたんですけどね(笑)。今回はホント、ロック・ドラムに徹した部分がけっこうあるんですよ。やっぱり、いろんな曲にいろんな要素を入れていくっていうのが好きだったんですけど、ライヴとかを重ねていくうちに“やっぱりロックのドラミングが好きだな”って思いまして。それで、芯の太い音を作ろうと思って、やってみたんですよ。『future〜』の時みたいに、音作り用にバス・ドラムをもう一個付けたとか、そういうことはなしにして、自分のドラムだけで……、まぁ何セットかは組んでたんですけど、録ってみて。リズムとかもホントに正確に刻むだけじゃなくて、呼吸みたいな揺らぎのような部分を付けるように努力したんですよ。それがけっこうロックっぽくなったかなって思いますけど。プレイもあんまり考えすぎず、その場の空気を大事にしてやったところが多いです。すでにライヴとかでやってる新曲の中でも、やっぱり空気感は変わってくるんで、そこでかなりプレイが変わってくるようになったりするんで。(新曲も)ドンドン成長していくんじゃないかなって、逆に思いますけどね。
TOSHI 今回は音色とかもいろいろ試してみて。僕はもうエンジニアの人といろいろ音作りに関して、録るところからというよりは、夜とかね飲むところがついてたんで飲みながらね。それで、やっぱりギターが一本いないっていうところで、ライヴも含めてなんですけど、ベースの音を今までどおり普通にストレートに出すよりは、曲によってはギターのようなベースみたいなものもあってもいいんじゃないかと。それで、今までにない歪みを入れてみたりとか。
――ベースは、一本芯があるところに、作品を作るごとにその芯の周りにファットな成分が増えてきて太くなってきてる。今回は4人で作っててストレートになってるから、そういう部分はより強く感じるんだけど。
TOSHI まぁ、屍忌蛇がいた4人編成時と比べてもそりゃ違うしね。アンプも違うし(笑)。当時はやってるのが精一杯で楽しいみたいな感じで、今はやっぱり、ある意味、ミュージシャンの部分もできてきてるからね(笑)、15年もやってたら。普通はそれが中心だったりするんだと思うんだけど、それが中心じゃないところがGargoyleかなって思うし。
KIBA 聴く人によっては、わからないような微妙なところとかもあるんだろうけど。でも、今、すごくドンドンいい形にはなっていってるよね。
TOSHI 試してみて、ダメだったらやめればいいだけのことで。試す機会があれば、いろいろ試してみたいなって思うし。
――「極東型感染性精神汚染」では、ギター・ソロ前でライト・ハンド奏法をやってるのもそういう表われだったり?(笑)
TOSHI (笑)。べつに難しいことはやってないけど。でも、あからさまにやったのは初めてかな。実際、スラップのほうが難しいよ。
KIBA でも、あそこは見せ場やね。
KENTARO 意外と(Gargoyleに)そういう曲がないんですよね。ドラム・ソロがあって、ギター・ソロがあって、ベース・ソロがあって……。で、曲を作ってる時に“ここ、ベース・ソロ”、“ここ、ドラム・ソロ”って言って、なんか作ってきてほしいっていうのを伝えて。レコーディングの時まで、何もなかったんですよ。それである日、スタジオに行ったら、TOSHIさんがライト・ハンドしてて。もう、かなりビックリして(一同爆笑)。
TOSHI いろいろ考えてはみたんですよ。コードも勝手に付けていいって言うし、どうしようかな? と。リズムは止まってるから、もう“これでもか”っていうぐらいソロ然としたほうがいいのかなぁとか。でも、そういうのって今までやったことなかったし。わりと僕のベース・ソロって、バックが鳴っててメロディを弾いてるっていう感じが強いんで。だから、ソロ然とした曲にしてしまおうかな、と。わざとね。
――全体の音像や音の定位で言うと、『future〜』もそう感じたんだけど、ヴォーカルがスコーンと前面に出たような感じになってません? それは、べつに演奏隊の音を引っ込めてるわけじゃなく、全部がキッチリと聴こえた上で、分離よく聴かせてるというか。しかも、今回は特にヴォーカルへのエフェクトも少ないでしょ?
KIBA ええ、そうですね。でも、『future〜』の時はむしろ、演奏の中にいるような感じを出したかったんです。今回は前面に出てる感じはあるかもしれませんね。歌は基本的にはストレートに、っていうか。『future〜』まで……、『natural』以降ぐらいかな? いろんな歌い方を試したりして、“こういうのはできるな”とか“こういう曲にはこういう歌い方が合ってるな”とかいうのも、すごくいろいろ試せて。まぁ、それのほうが1曲1曲の楽曲はよくできた部分とかもすごく多かったと思うし。今回は楽曲自体、全部書き下ろしっていうのもあったし、ともかく全部ストレートにやりたいなと思ってたんで。曲によっては、もうちょっとソフトに歌ったり、ナチュラルに歌ったほうが合ってるんだろうなとか、いろいろあったんですけどね。まぁ、例えば、『natural』より以前に、そういうストレートな歌い方で全部アルバムの曲を収録してたのと、今とはだいぶ気持ちは違うのね。それはたぶん、それしかできずにそれをやっていた自分と、他もできるけど、やっぱりこれがいいと思えた自分との違いかな。昔のアルバムとかでは、“それしかできないんだから、これをキチンとやってればいい”ぐらいの感じでやってたんですけど、『natural』からいろいろ試して、『future〜』ぐらいで“ある程度できるな”と思った時に、録りながらですけど、今回は普通に歌ってみたいなと思った。
――そういう要素が合わさって、今回のアルバムはアタック感も強いんじゃないかな。
TOSHI なるほど。
KATSUJI たぶん、全員がすごい自己主張が激しいんで。それはプレイにも音にも。それをエンジニアが封じ込めるように頑張ってくれたと思うんですけど。なおかつ……、そういう音って塊になりすぎると広がりがなくなる気がするんですよ。それをうまいこと広げさせてくれたのが、やっぱりエンジニアの力もすごく強かったなとも思うんですけど。
――Gargoyleの曲って予想しえない転調があったりしたけど、今回、そういった部分はあまりないよね。ロック・バンド然としたストレート感だなって気がすごくする。
TOSHI そうだね。逆に「失われた時代〜Lost Generation〜」の三連に展開していくところとか、純ジャパメタみたいなところは(一同笑)、やってておもしろかったけどね。じつは、Gargoyleには今までこんなのなかったなっていう。
KIBA やってそうで、やってないんだよね。
TOSHI そうそう。で、リハで遊びでやってみて“これで行こか”みたいな感じで(笑)。そういうのは逆に新鮮。
――そういう意味では今回は、トータル的にストレートでソリッドな印象があるけど、突き詰めてみると、いつの間にか自然と盛りだくさんになってた?
KIBA うん。パッと聴いた感じは、やっぱりガーッとストレート。歌い方とかがずっと一本なところがあって、そうなってると思うけど。
――今も話に出た「失われた時代〜Lost Generation〜」はイベントでもやってたけど、聴いて一発で覚えてしまうキャッチーさがあるよね。
KIBA なるほど。「失われた時代〜Lost Generation〜」と「神風ギャング団〜自爆遊戯〜」で、1曲目をどっちにするか、けっこう悩んだ。
――その「神風ギャング団〜自爆遊戯〜」も含めて、曲タイトルはおもしろいね〜。
KIBA おもしろいでしょ? これに関しては、神風特攻隊的に……。生きる死ぬの話をずっと書いてるので、その自分が生きてくっていうのは死ぬことでしょうと思ったのね。それを縮こまらずに、ヤンチャにやっていきたいなと思って。死ぬってわかってるからって、それでヘコんでいくんじゃなくて、だからこそ、もっともっと暴れ回りたいな、と。
――「がちゃ×がちゃ」とか、タイトルはスムーズに出てくる?
KIBA わりと出てくるねぇ。もう言葉が止まらないですね。
――歌詞は、全体的に“痛い”なぁ。ケツを蹴り上げられてるみたいで。
KIBA あぁ。自分を蹴り上げてる部分もあるんだけどね。歌詞を書き終わってみて、たぶん自分の今のテーマで思ったのは……。例えば、(ヘヴィ・)メタルもそうだろうし、バンドの形態としてもそうだろうし、生き方としてもそうかもしれないけど、周りの世界とか今の時代とあんまり相容れないところもあるし……。それをやっちゃったら損じゃない? と思われるところも多い。言い方はおかしいけど……、負けるのわかっててやるところもあるだろうけど、でも、やるべきことはやるっていう風にやっていきたいよなって、自分で思ったんですよね。自分が“こうだ”って思ったことなら、もうそれをやって、それで負けるが良しぐらいの。なんか、そういう感じがすごいあって。そういうのを歌詞にしたかったんだろうなと全部終わってから思いましたね。
――“いつ何時でも誰の挑戦でも受ける”みたいな部分は、ぜんぜん変わってないでしょう?
TOSHI そうそう。今回のイベント(“狂い咲きサンダーロード”)とかで、いろいろなバンドとやってみても、僕らは僕らの色で、向こうは向こうの色を出してる。それがぶつからおもしろいんであって。一緒にやっていきましょうよっていうんじゃないんだよね。そこは真剣勝負。
――逆に、ジャパメタ・トリビュートみたいな、サウンド的に一緒にくくれそうなイベントに出ても、やっぱり突出した色を持っているっていう。
KIBA これをやってるぶんには、たぶん、他の人とも同じようになることはないと思う。今、(ヘヴィ・)メタルの人はすごい狭いからね、レンジが。そのマニアックなものの中でウけようと思うと、それをしないといけないんだろうけど、僕らはあまりそういう気がないから。
――もはや、けっこう楽しんでやっちゃってるところもあるんじゃない?
KIBA あるね。あと、これさえ続ければ。負ける時まではやる、と。
──なるほど。アルバム・タイトルだけど、『倭』と言えば、歴史の教科書で見た『魏志倭人伝』が連想されますが、メンバーそれぞれにとっての“倭”っていうのは?
TOSHI KIBAからそのタイトルを聞いた時に、僕はたまたま、古い時代の謎っていうやつを解明する小説を読んでたんですよ。もう、すごくタイムリーで。日本人になる前のルーツ……、例えば、大陸から渡ってきて住みついた人が倭になるのか? で、そこから日本になっていったのか? っていうね。そういうのもあって、僕の中で“倭”っていうタイトルに持つ意味は、Gargoyleのルーツみたいな感じ。すごい原点みたいな感じですね。
KENTARO 僕も“倭”っていう言葉だけ聞くと、そういう昔の時代っていうのがパッと頭に浮かぶんですけど、字面で見ると、精神的なものが漢字になったような印象があって。悪く言えば、原始人みたいなイメージかな(笑)。今回のアルバム・タイトルにはすごく持ってこいだと思うんですよ。例えば、“ロックだからこういう格好をしてないといけない”、“革ジャン着てないといけない”とかいうんでもないし、僕らは。音にしても“こういう格好してるから、こういう音してる”っていうわけでもないじゃないですか? あんまり一般的にイメージしてるところと違うところにいると思うんですよ、Gargoyleって。たぶん、写真だけ見た人は音は想像できないだろうし、音だけ聴いた人は見た目は想像できないだろうし。“なんで、これがこう繋がんのやろ?”っていうアンバランスさが、うまく出せてるんじゃないかなと思って。
──しかも“それが俺達だ”みたいな。
KENTARO そうですね。それでしかないって感じですね。
KATSUJI ちょっと難しいことは、僕言えないんすけどね。日本語弱いんすよ(笑)。ま、僕なりに考えるに、イコール
Gargoyleっていうことなんですよね。……ちょっと抽象的に(笑)。
KIBA うお〜っ、難しいこと言ったなぁ(笑)。僕が“これ、どうかな?”って言ったのは、一つは『魏志倭人伝』っていうのがドンピシャかもしれないけど、その頃の野蛮な日本人な感じが、僕はよかったんですね。いわゆる、平和の“和”、和風の“和”とかの雅さでとかはなくて、もっと芯がある日本人の感じ。わりと日本語で歌ってるし、今の日本の現状で僕は生きていて、それが今の日本人に足りないところかな? とも思って。芯が通ってないなと思って。芯が通りすぎて、アルカイダみたいなのになる場合もあるけど(苦笑)。すべてそれがよしっていうわけではないけど、野蛮で芯が通っているがゆえに美しい、みたいな。そういう日本人でありたいなと思って、それで『倭』にしたんですよね。雅な外面的な美しさではなくて、もっと心に芯を通せるようなね。そう思ってタイトルにつけたんですよ。
──今、話を聞いていて、ホントに中身もそういう作りになっていると思ったよ。
KIBA そうだね。歌詞を書いて、こういうタイトルにしたいって思ったんで。
「“もうGargoyleで死んでもよし!”
というところでやっている」
――3月30・31日には4人編成になって初のワンマン・ライヴ“A級戦犯”を行なったけど、新曲も含めて、反応はどうだった?
KIBA 反応はよかったよね。みんな待ってたっていう感じはあったですよ。
――“A級戦犯”というライヴのタイトルにはどういう意味があるの? 「狂い咲きジャングル」の歌詞の中にも出てきてる言葉だけど。
KIBA ライヴのタイトルとしては、メンバーが抜けてですね、自分らでそういう罪とか罰とかがあるんであれば、そういうものも受けようかなと思ってて……。ただ、それが……いわゆる、そんな悪いことをしたという意識ではなくて、どっちかというと戦犯の人っているじゃないですか? 世界大戦の。あの人達もそこで戦わなければいけなくて、戦った状況だと思ったんですよね。その戦いの中で、罪があるって言われたのなら、それは受けようと思ったので、それでなんですけどね。ちょうど「狂い咲きジャングル」の歌詞の中にも入ってるからいいかなって。
――4人でのライヴというのも、すごくスムーズというか自然だったように感じたけど?
KIBA うん。ライヴの初めのほうで(与太郎)脱退のことはMCでは言ったかもしれないね。それまでは“4人になりました。頑張ります”ぐらいの感じだったんですけど、こういう風に思ってるとかそういうこともチョロチョロっと、二日間で分けてですけど言いながら。ようやく、そういうのを言っても大丈夫なぐらい、自分達が自然になれたっていうことじゃないですかね、逆に。
――実際、スタジオ・ワークからライヴに移ってどういう印象を受けた。
TOSHI 前とは明らかに違いはあるんですけど……、後ろ振り返ってても仕方ないんで(苦笑)。前を見るしか能がないし、このバンドは。
KIBA ギターが一本ないですからね。“違わないよ〜”って言ったら、その人、耳悪いですからね。そりゃ絶対に違うんで。その違うもんとしてやっていくしかない、と。
KENTARO ギター・ソロとかも所々はハーモナイザーかけて弾いてたりしたし、大丈夫なところもありますけどね。ギター一本になった時、キメなきゃならないところがどうしても減るじゃないですか? 二人で合わせるパートがないぶん。だから、なんかちょこっと遊んでみようって、いろいろ試したりとか。音が薄くなったっていうデメリットもあるんですけど、そうやって自由にその場で変えられるっていうメリットもあるし。それは前向きに考えて、やっていこうかなと思ってますけど。でも、セッション以外のちゃんとしたバンドでシングル・ギターっていうのは、考えたら初めてなんですよね(笑)。それはあまり気にしてなかったですけど、最初にバンドをやりだした頃はシングル・ギターで、オリジナル曲をやる頃にはもう与太郎くんと一緒にやってたんで。もう10何年かはツイン・ギターでやってましたからね……。まぁ、もう馴染んできたっていうか、それ(ギター一人)が最近、普通になってきましたけど。
KATSUJI 後ろから見てるじゃないですか? まぁ、確かに下手に二人いたのがTOSHI一人になったっていうのはあるんですけどね。これはやっぱり、みんなが言ってるとおりですよ。辞めちゃったのを何やかんや言っても仕方がないし、与太郎くんもね、前向いて歩き出してるんですから。俺らもやっぱり、ずっと前向いて前向いてやっていかないとダメだと思います。最初のうちはね、やっぱりライヴの前とか、何かやることあったら、与太郎くんに“朝9時出(発)な〜”って電話しそうになったりして(一同笑)。そういうのはあったんですけど、今はお互いに頑張って生きていこう、と。
――アルバム・リリースに続いてツアーが始まるわけだけど、今回は特に書き下ろしのまだライヴでやってない新曲を引っさげてのものとなるじゃない?
KIBA ねぇ?(笑) それはやってみて、どうなのかなっていうところじゃないですかね。メンバーの4人だけで“こうしたろ”とかっていうのは特になくて。それを全国の人に聴いてもらって、全国の人がどう思うのかを一緒に感じたいというかな。それを持っていくので、一緒に楽しんでください。まだGargoyleを聴いたことがない人でも、まぁ、間違いなくロックが好きな人にはわかりやすいと思いますけどね(笑)。
KATSUJI 一生懸命、ロックしてるバンドは少ないと思うんですけど、俺ら、一生懸命やってるぞ〜みたいな感じですかね(笑)。“こうなれば、ああなるやん”みたいな方程式を見つけてやりがちじゃないですか? そういうところではないところで、俺らは手探りでやっていってるんですよね。前向きにいつもやってるんで。だからこそ、いつもライヴが違うんですよね。そういうスリリングな部分もあるんで、毎回同じ曲をやっても同じ風に聴こえないと思うんですよね。それができるバンドだなって思うんで。
KIBA でも、戦略的なことはあまりないですね。Gargoyleに関しては、ホントに。やりたいことやって、それでダメなら……。なんか“もうGargoyleで死んでもよし!”というところでやってるし。
――もう突き進むだけ、と。
KIBA はい。
TOSHI 実際に観てもらったらわかると思うんですけどね。こんなこと偉そうに言ってるヤツらが15年続いて、なぜここまで来てるかは観たらわかるんじゃないかな。……ただ必死にやってるだけなんですけどね(笑)。一歩一歩というか。
KIBA あれだこれだ、いろんなことをやりながらバンドをやって……っていうんじゃないですからね。これ(Gargoyle)なかったら死んでもよしと思ってやってる。その覚悟みたいなものを、軽い気持ちで観に来てもらうと一番いいかな。
TOSHI そうだね。そして、ツアー(「倭の刻印」)では違うバンドに見える……かも(笑)。どこからでもいいんで、まずは触れてみることをオススメしますよ。
KIBA うんうん。15年、つねに波乱万丈。“もうアカン”っていうところでつねにやってるからね(笑)。でも、崖の上でも走り回るし、谷底でも走り回るし、どこでも同じように走り回るし。状況を作りだすのは自分ら自身だと思うからね。本質的に自分らがやりたいことをやっていくっていう気持ちさえあれば、やれると思ってるので、これからもそういう感じでやっていきたいですね。
TOSHI 俺らの生き様を見てみなよ、と。
■ end ■
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