経済産業委員会(平成18年4月14日(金曜日))

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009816420060414012.htm

達増拓也委員

まず、PSE 問題について質問をしたいと思います。

四月一日、まさに運命の日であったわけでありますけれども、施行から五年間たちまして、五年の猶予期間を終えた商品についてPSE マークの表示が義務づけられるようになる、その四月一日を先ごろ迎えたわけであります。

経済産業省もいろいろな特別な措置もとり、その四月一日を迎えたわけでありますが、四月一日以降、一体どういうことになっているか。特に、中古品業者、リサイクルショップ等をめぐる混乱が事前にあり、また四月一日以降も予想されたわけでありますけれども、四月十日に、ある県でPSE マークの表示手続講習会というものが開かれまして、それについての地元新聞や主要紙の地元版のところに報道されたものをまず紹介したいと思います。

見出しを拾ってまいりますと、「PSE マークの表示手続き講習会 リサイクル業者ら反発 周知不足など指摘 経産局は「反省」」「経産局担当補佐 業者にひたすら陳謝 PSE 講習会の席で」、そして、「PSE 法 検査態勢不備を批判 業者、国の講習会で」というような見出しが躍っておりまして、なかなかスムーズに四月一日以降を迎えているとは言えないような状況かなと思われます。

こういうことにならないようにと思って私も事前にこの経済産業委員会でも質問に立ちまして、特に、業者の立場から知りたいこと、わからないこと、そういった項目に的を絞って質問し、それは国会としても全国に向かって発信されたのかなと思っていたんですけれども、まだまだ誤解が広くあるのかなと思っております。

例えば、これもある県の講習会の様子を報道した記事に書いてある、その記事の文章を紹介しますが、こういうふうに報道されているんですね。例えば「経済産業省は先月末になって事後検査すればマークなしの販売も認めると発表した。」。事後検査すればマークなしの販売も認める、たしかそういうルールではなかったはずであります。もう一つは「経産省は当面、リサイクル業者がマークなしで販売しても「レンタル」とみなす方針だ。」と。マークなしのものを販売、レンタル契約ではない、販売をしても、それをマークなしで販売した場合はレンタルとみなす方針だ、これも間違いなんじゃないかと思いますが、経産省、いかがでしょうか。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

まさに先生御指摘のとおりでございまして、電気用品の販売に際しましては、電気用品安全法の検査を行ってPSE マークを付していただくということがことしの四月一日から必要になっておるわけでございます。

そうした中で、中古品を扱っている方々におかれまして、その検査機器が必ずしも三月末までに十分に行き渡っていない、直ちに検査をしてPSE マークを付して販売をすることが、準備が整っておられない方がおられるということは実態としてあるわけでございます。

そうした方々から、四月一日に営業活動が一切とまるというのは非常に大変なことなので、そういう場合については、レンタルを活用して、商品を引き渡してもその所有権は留保をする、あるいは、検査体制が整ってから事後的に検査をして、その上で所有権の移転をやるような方式ができないか、こういうふうなお尋ね等があったわけでございます。この点につきましては、私ども、従来より法律自体が販売の事業を規制しているということで、レンタルという方法は可能というふうな確認をしたわけでございます。したがいまして、実際に販売をした上で事後的に検査をするとか、こういうことは、法律上やはり法律違反とならざるを得ない。

それから、PSE マークを張らずに販売したものをレンタルとみなすというふうなことも、これもできかねるわけでございまして、あくまで契約としてレンタルということで渡されたものについては、これは法律違反にはならないですよ、こういうことを申し上げたわけでございます。

今御指摘ございましたように、十分そういったものが伝わってなくて若干誤解が生じているというふうなことも、これは報道なんかもそうでございますし、あるいは事業者の方もそういうふうに誤解をされているという実態があるんじゃないかということでございますけれども、ただいまも先生の方からお話ございましたように、現在、全国でこの法律についての講習会を実施しております。既に千人以上の方がその講習会に御参加をいただいておりまして、こうした法律の手続でございますとか、あるいはその検査の方法についてきめ細かく講習をやっていきたい。今月中で、全都道府県、四十八カ所でやる予定をしておりますので、そうした中で、誤解等もないように、最大限の説明、講習を行っていきたいと思っておるところでございます。

達増拓也委員

私が四月一日前に地元の岩手県の中古品業連合会会長さんに会いましてこのPSE 問題についていろいろ懇談した際に、その会長さんは、とにかく法令は遵守したいんだ、自分たちは法令を遵守したいんだけれども法令がよくわからないということを聞かされまして、本当に、正しい情報が正しく伝わることが非常に大事なんだなというふうに思いました。

さっきの質問のことも、私も四月一日前、前回、この経済産業委員会で同じ質問をしたわけです。というのは、やはり新聞各紙、主要各紙が同じように、マークなしでも販売できるかのような、そういう報道をしたものですから、それは誤解だということを国会の審議の中できちんと取り上げ、きちんとした答弁があっても、なかなかそれが現場に伝わっていかない。これは本当に立法府としてもやはり考えていかなければならない問題だと思います。

そして、レンタルならばいいんだという話が大きく報道され、広まってしまった結果、あたかもマークなしでレンタルするのが四月一日以降の原則だというような、これもまた誤解が広がっているところがあると思います。

先ほどの、ある県の四月十日の講習会を報じた新聞の記事の中にもこう書いてあるんですね。「四月からレンタルの形で中古家電を引き渡し、販売後にリサイクル業者が検査機器で安全確認することになっているが、」云々と、何かあたかもマークのない中古品についてはレンタルで引き渡すことになっているというような報道ぶりがされております。それはこの新聞だけがそう書いているわけじゃなく、その県の業者さんたちもそういう認識になっているようでありまして、ある中古品業者の発言として、レンタルで引き渡してしまってどこに行ったかわからなくなったらどのようにして検査するのかとか、広い県内の地域事情がわかっていないんじゃないかという、あたかももうレンタルしかないみたいな、四月一日以降はレンタルが原則だというような認識が広まりつつあるようなんです。

経済産業省として、レンタルもあり得るということでやっているのでしょうが、レンタルを推奨したりあるいはレンタルが原則だというふうに国として指導をしているわけではないと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

まさに先生おっしゃるとおりでございまして、私どもが申し上げているのは、四月一日時点において、検査体制が整っていない、検査ができない、マークも付せない、こういう方たちがそのまま販売をされるというのは法律違反ですから、こういうのはまず一番避けていただきたい。それに比べれば、要するにレンタルというのは違法な措置に当たらないわけですから、そういう方法を工夫されるというのは事業者の対応として一つの方法ではないかと思うわけです。

ただ一方で、では、そもそも、販売は規制されていてレンタルというのは何で規制されていないのかというと、それは、所有権を持っていて、引き渡し先も把握をしていて、その商品の状態を把握しているから安全規制が販売とは違う扱いをしているのが、レンタルで引き渡してしまってどこに行ったかわからないというふうなことでは実際困るわけでございます。

実際、今現状で、国内の市場なんかを見ましても、検査機器の販売というのは、相当な量が供給をされておるわけでございます。それから、私どもに対する事業の届け出も順調に行われておりますので、逆に言えば、レンタルというふうな形で、これはこれで、今まで販売をしておられた方にとっては、自分の資産としていつまでも残っている、あるいは責任関係が残っているというふうな、必ずしも事業者自身も望まれる取引形態ではないと思われますので、そうした検査機器の普及あるいは法律についての理解というふうなことを私ども最大限努力をしていくことによって、そうした何か緊急避難的な措置がむしろ原則であるみたいな誤解みたいなことは解いていかなければならないし、あるいは実態としても、そういうふうなことではない、正常な取引関係になるようにやっていかなければならない、そのように考えております。

達増拓也委員

いずれ、レンタル契約にしたにせよ、販売の形にするには、後で検査してPSE マークを付さなければならないわけですから、やはり事前に検査してPSE マークを付して普通に販売するようにした方が、これは売る方も買う方も楽だと思うんですね。

ですから、それがスムーズにいくように国としてもやっていかなければならないと思うんですが、今答弁の中で、検査機器が大分出回っているということもありましたし、また私も、一個三千円とかで検査をしてあげましょう、そういうビジネスも今出てきているということも聞いております。

 ただ、中古品業者は零細な業者も多いので、なかなか、機器を自分で買ったり、また一個幾らで検査を委託するのも大変な業者がむしろほとんどではないかと思っておりまして、経済産業省がやると言っている検査機器の貸し出しや、あるいは、ある場所に行けばそこで検査ができるということが非常に大事だと思います。

これについては、先ほどから紹介しているある県の講習会では、出席者から自主検査を行う機器の貸出期間や開始時期などの質問が出されたが、経済産業局は現段階ではっきりしないと回答、このため、全く対応がなっていない、詳しい情報提供がなく混乱が深まったなどと反発したというふうに報道されております。

どうもまだ業者のニーズ、求めに対応し切れていないような感じもいたしますけれども、この機器貸し出しの体制は今どのようになっているのか、また、これからどうなっていくのでしょうか。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

機器の貸し出しでございますけれども、確かに、すべてのブロックあるいは全国をカバーする体制がまだとれていないというふうなことでございまして、これはできるだけ早くやらなければならない、こういうふうに思っておるところでございます。

具体的に申し上げますと、全国で、三月二十三日に四国で開始をして、先月中に四国、近畿、中国でやっておるわけでございますけれども、本日から中部地域で始めておりまして、さらに、来週に入りましたら関東、東北で実施ができるようにしたい。それから、その翌週には日本全国をカバーするような形でやりたい。

それから、今ブロックで中心を置いて一カ所みたいな形でやっていますけれども、これは状況を見ながらさらにその地点数をふやして、近くで借り入れができるというふうな体制を順次とっていきたいと考えております。

したがいまして、今のところ貸し出しの状況はそういうふうな状況でございますし、それから公設試等の協力なんかも仰ぎながら貸し出し拠点をふやす、それから電気保安協会による無料出張サービスに関しましても、来週には開始ができるよう準備をしておるところでございます。

達増拓也委員

そうなってまいりますと、個々の業者さんにとっては、では自分のところにはいつ来るのか、自分の地域ではいつから体制ができるのかということが知りたいわけでありますが、この四月十日のある県での講習会での業者さんの代表の発言にこういうのがあります。「国の出先機関が本県になく、情報提供やきめ細かい対応がなされていないことも問題だ。」と。これは前回私が質問に立ったときも指摘した問題ですが、いわゆる相談窓口問題ですね。相談窓口が地域にない、地元にないということが混乱に拍車をかけているところがあると思います。

そこで、経済産業局の支分署を各県につくれというのは行革にも逆行する話ですので、そうすると都道府県が対応するのかということになりますが、これはある県の県議会議員さんから聞いた話なんですけれども、県に対して、PSE 問題についてぜひ県に相談窓口をつくってくれという話をしたところ、県の方では、権限がないからできないと言うんですね。このPSE 法の施行に関して都道府県には権限がないのでそういう相談窓口はできないという回答、返事だったそうであります。

であれば、例えば、この電気用品安全法に一文、一条、都道府県はこの法の施行に関し所要の措置をとる責務を負うとか、特に中古品業に限定してもいいかもしれません、都道府県にこの法のスムーズな施行に関する権限を、あるいは所要の措置をする責務をこの法律に一行入れれば都道府県に権限ができて、相談窓口をつくれるようになるんでしょうか。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

そもそも、今般のPSE の問題に関しまして、三月十四日に支援策を発表したわけでございますけれども、この際に、ぜひこうしたものも含めて周知について協力をしてくださいというふうなことを都道府県にもお願いしたわけでございます。それから、まさに各県単位での講習会なんかの実施につきましても、各種、都道府県の公設試験機関ですとか、こういったところと連携をとりながら、御協力を仰ぎながら実施をしているところでございまして、都道府県においていろいろ御協力をいただくということは私どもぜひともお願いをしたいと思っておるところでございます。そうした中で仮に相談窓口みたいなものをつくっていただけるのなら私ども大変ありがたいことで、それは、そもそも権限がないところが何をやるとか、そんなことを申し上げるつもりは私ども全くございません。

では、法律に責務というふうなことを設けるのはどうかということでございますけれども、一方で、電気用品の安全という問題については技術的な知見等も必要なものでございまして、そういうものについては、私ども安全を担当するところとして責任を持って対処していかなければならない問題でございます。ぜひ御協力はお願いしたいということでございますけれども、それを何か責務という形でやらせるみたいなことを言うのはちょっと私どもからはなかなか申し上げにくいことであろうかと思っておりまして、ぜひその連携協力はお願いしながらやっていきたい、こう思っておるところでございます。

達増拓也委員

今、責務として必ずやれということはなかなか言いにくいという趣旨の答弁だったと思いますが、なるほど、電気用品安全法に一条加えて、電気用品安全法上のそういう責務、権限を都道府県に付与するという考え方でいきますと、電気用品の安全確保というところの権限そして責任が都道府県に行っちゃうことになって、例えば業者さんに、この機器、チェックをこういう感じでやったけれども、これを売っていいですかなんというのを都道府県が聞かれても、さすがにその安全については責任を持ち切れないんだと思います。

ただ、業者さんが求めている相談窓口というのは、そういう安全確保についての相談、電気用品安全法そのものの趣旨に沿った相談というよりは、自分たちの商売についての相談をしているわけでありまして、さあ困った、今までどおりに商売をやりたいんだけれども、どうも今までどおりにはやれなくなったようだ、どうしていいかわからない、あるいは、在庫が積み増しになってきて資金繰りにも困る、何かお金を借りたりもしたいとか、実はそういう経営指導みたいなものを求めているんだと思うんですね。

多分、経営指導ということであれば、これは何か法律をいじらなくても、今の都道府県には経営指導を中小企業に行うそういう権限はまさにあり、このPSE 問題といいますか、それで困っている地域の中古品業者に対してもいろいろな対応が可能だと思うんですけれども、どうでしょうか。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

まさにそうした観点から周知について御協力を賜れば、私どもとしては大変幸いとするところでございます。

確かに、電気用品安全というものを考えた場合に、例えば全国のマーケットに供給している大きな電機メーカーみたいなものと、今回いろいろ議論になって、周知が行き届かなかった中古品を扱っている方々というのを比べてみますと、やはり事業の範囲なんかもかなり地域性を持っておられる事業でございますし、それから、私ども、その周知が行き届かなかった一つの理由が、全国的な団体がなくて地域ごとに、しかし、今回講習会なんかもやってみますと地域ごとにはいろいろな組織なんかもあるようでございます。そういう中で、特にそうした地域に密着した事業に対して地域に密着したサービスを提供する主体である自治体というのが存在するわけですので、私どもとしても、そうした都道府県なんかと今後はよく相談をし連携を深めていかなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。

達増拓也委員

先ほど紹介したある県の例、権限がないので本格的な相談窓口を設けられないという県の場合は、このPSE マーク表示のための講習会、そうした担当は消防防災関係の部局がやっているそうなんですね。まさに電気用品安全法だから、安全のためのことだからそういう消防防災部局がやっているということなんですが、消防防災部局では、中古品業の振興とか、そういった経営指導とかということは権限じゃないのでしょう。

しかし一方で、県には商工労働観光部のような、そういう中小企業振興をやる部局もあるわけでありまして、むしろそちらの方が積極的に相談窓口を設けていけばいいんじゃないかと思うわけであります。直接じゃなくても、商工会議所や商工会を通じて行っても構わないでしょうし、ただ、これは私がある中古品業者さんから聞いたんですが、商工会議所というのはどうもえらい立派な会社ばかり行くところで、どうも敷居が高いなんと言う。ですから、そういう業者さんたちが今、緊急避難、危機的状況にあるわけですから、本当に、国と地方とそこは連携しながらこの危機対応をしていかなければならないと思っております。

さっきの質問は、都道府県としてそういう経営指導のような形でこの問題に対して対応できるかという質問でしたけれども、国としても、やはり中小企業支援の一環という角度からもこの中古品業者の皆さんの苦境に対応していくべきと考えますが、どうでしょう。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

先生御指摘のとおり、今回の関係者の中で中小企業の方々は数多くおられると思いますし、そうした場合に、いろいろな問題点があろうかと思いますけれども、経営上の問題点から申し上げれば、一番多いのはやはり金融問題になることが多いと思います。運転資金等々を中心とした金融問題については、政府系金融機関はもちろんでございますし、信用保証協会の保証なども活用できるところがあろうかと思います。

こういった面を中心とした経営相談につきましては、そういった政府系金融機関自身あるいは保証協会の窓口、それから同時に、各地の商工会やあるいは商工会議所などに経営安定相談窓口というのがございますので、そういったところが御相談を受け付けられる能力があろうかと思います。

必ずしもこういったところにタイムリーに本問題の技術的な問題等々については行っていたかという問題はありますけれども、現時点ではそういう情報も責任ある当局から大分きちっと行っているようでございますので、背景も含めて、こういった資金面、経営面などの御相談に乗り、中小企業支援策で活用できるものについてのアドバイスなどもしていくべきだというふうには考えております。また、そういう体制を整えつつあるように私どもとしては認識をしているところでございます。

達増拓也委員

いよいよ中心市街地活性化法に直接かかわる質問をしていきたいと思いますが、実は、今回のこのPSE 問題と中心市街地活性化の問題が同時に私の目の前に出てきたといいますか、国会で取り上げられるようになったといいますか、日本で起きているといいますか、実はそれは非常に関係のあることだと思います。

といいますのも、中古品業者というのは、結構、町の顔になっていたり商店街の顔になっていたり、そういうケースもあるわけです。おととい視察に行きました宇都宮のオリオン通りにも古着ショップのお店がありまして、格好いい古着を格好よく並べていました。恐らく、そういう古着屋さんやそれから古本屋さんを含めますと、こういう古物商というのはどの商店街にも一つはあるんじゃないかと思います。

したがって、今全国的にこういう中古品業者がピンチだということは、それは中心市街地活性化の観点からいっても放置できないし、今回のこのPSE 問題を契機に、そうした中古品業界や古物商といったところにもうまく施策を関連づけていくことで商店街振興、中心市街地活性化にも資することができるんじゃないかと思うんです。

中心市街地活性化法の第一条、改正案の第一条では、この中心市街地活性化の定義がこうなっているわけです。「中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上」、それが中心市街地の活性化だというんですね。「中心市街地が地域の経済及び社会の発展に果たす役割の重要性にかんがみ、」その「中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上」を推進する、それが中心市街地活性化だと。

そうしますと、商店街の顔になっている、あるいは商店街の一部を構成している中古品業者、こういったところに適切な施策をとっていくこともこの中心市街地活性化だと言えると思うんですが、いかがでしょう。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

まさに御指摘のとおり、第一条の「目的」は、都市機能の増進と経済活力の向上というものを総合的、一体的に推進していくためのさまざまな措置を講じていくというのが、今回の御審議いただいております中心市街地活性化法の目的ということでございます。

その中で、経済活力の向上を図っていくためにはいろいろな方途があるわけでございまして、それは、経済社会の状況の変化というふうなことによってまた時代とともに変わってくるわけでございます。

そういう中で、やはり省資源、省エネルギーというふうなことについて、あるいは環境の問題等に消費者の関心も高まる、あるいはそういうものを背景に各地域で中古品の流通というふうなものが盛んになってきて、そうしたお店も商店街の一角を占めるという状況も生じてきておるわけでございます。さらに、あるいはそうしたお店というだけではなくて、イベント的に中心市街地なんかでフリーマーケットみたいなものが開かれて、そこで多くの人を集めるというふうな実態もあるわけでございます。

そうしたものも含めて、まさに経済活力の向上にどういった方途をとっていくかという点について、ぜひ各地域地域でいろいろ特色を踏まえて中心市街地の活性化の基本の計画というのを考えていただきたいというふうに考えておる次第でございます。

達増拓也委員

そうしますと、同様に第三条の「基本理念」のところでも、「中心市街地の活性化は、中心市街地が地域住民等の生活と交流の場であることを踏まえつつ、地域における社会的、経済的及び文化的活動の拠点となるにふさわしい魅力ある市街地の形成を図ることを基本とし、」「その取組に対して国が集中的かつ効果的に支援を行う」というふうに規定されておりますので、先ほど答弁にもあったような形で、中古品業者、リサイクルショップなどがうまく組み込まれた形のそういう中心市街地活性化に対して国が集中的かつ効果的に支援を行う、そう解釈できるというふうに考えてよろしいでしょうか。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

三条におきましては、まさに中心市街地が地域のコミュニティーの中心であるというふうなことを踏まえて、地方公共団体、事業者、地域住民、あらゆる関係者が主体的に取り組むことが重要で、それについて国が支援をしていくというふうに規定しておるわけでございます。

したがいまして、今御指摘の中古品を扱っている事業者の方もまさにその地域の事業者の一員として、あるいは地域住民の方たちが中古品を交換する場みたいなのを設けるということであれば、その地域住民という立場でいろいろ中心市街地の活性化に主体的に取り組むということで考えていただくということで、まさにここに規定しているものに含まれ得るというものであろうかと思っております。

こうした事業についてどういうふうに支援措置を講じていくかというのについては、まさに地域の計画、地域の特色を踏まえて判断をしていくべきものだろうと思っております。

達増拓也委員

次は、第五条の「地方公共団体の責務」について質問するわけでありますけれども、実は、岩手県の盛岡市には紺屋町という商店街がございます。この紺屋町というのは、もともとは旧奥州街道、江戸時代の奥州街道の一部分で、古い酒屋さんでありますとか染物屋さんでありますとか、そして南部せんべい、古い江戸時代からあるおせんべい屋さんとか、そういうお店が並ぶ商店街だったんですけれども、近代的な商店というのが余りふえないまま二十世紀後半を迎えていたところ、リサイクルショップや中古品屋さんが出てきまして、岩手県の県中古品業連合会の会長さんのお店、本店がその紺屋町にありますし、また盛岡福祉バンクという、これは障害者の皆さんに、中古品の改修、きれいにしたり直したりする作業、そして実際お店で売る、こういうのを一緒にやってもらう、あるいはもう前面に立ってやってもらう、そういう福祉バンクというのがあって、あちこちに店舗があるんですが、その本部と本部直営店が紺屋町にあるんですね。

ですから、岩手のそういうリサイクル、中古品業を象徴するような、代表するような、そういう商店街になっております。また、これが週末にはアンティーク市という、まさに古道具、アンティーク、そういったものをメーンにしたフリーマーケットのような、そういうアンティーク市を毎週週末にやっておりまして、実は、もう本当に、中古品を顔にしている商店街というものでございます。

したがいまして、そういったところをさらに広い中心市街地の活性化の核にしていくということは大いに考えられると思うんですけれども、中心市街地活性化法第五条「地方公共団体の責務」、「地方公共団体は、第三条の基本理念」、先ほど取り上げた第三条の基本理念「にのっとり、地域における地理的及び自然的特性、文化的所産並びに経済的環境の変化を踏まえつつ、国の施策と相まって、効果的に中心市街地の活性化を推進するよう所要の施策を策定し、及び実施する責務を有する。」と。これも中古品業者との関係で生かすことができる条文と考えてよろしいでしょうか。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

第五条は地方公共団体の責務を規定しておるわけでございますけれども、まさしく中心市街地の活性化という問題につきましては、私ども国のレベルでも今回法改正して地域の取り組みを支援してまいるわけでございますけれども、基本的には、まずは地域が、地域地域で、地方公共団体のレベルで、その地域の有する地理的、自然的、文化的な特色を生かしながらそういうものを振興していくというのが地方公共団体の責務であろう、それを支援するのが国の役割、こういうことであろうかと思っております。

その場合に、中心市街地でまさにバザール等が開催されるとか、そういうことでにぎわいが取り戻されるというふうなこともあるわけでございますし、そういったもの、どうした活性化策をとっていくのか、これはまさに地域の特色を踏まえながら公共団体でしっかり御判断をいただきたい、こういうふうに思っております。

達増拓也委員

PSE 法の本格施行をめぐる中古品業者、リサイクル業者の皆さんの混乱、不安そして窮状、これを救うためには、国と都道府県、地方がそれぞれやれることをやり、またやるべきことをやるということと、同時に、単に安全部局、これは国においても地方においてもですけれども、安全部局だけの問題ではなく、それは、中心市街地活性化など、商取引、まちづくり、そういったことを担当する部局も本気になってやっていかなければならない問題であるということを改めて確認したいと思います。

そもそも中古品というもの、今回のことがありまして、私もいろいろ考えてみたんですけれども、なかなか市場メカニズムというものに当てはまらない品物なんだなということに気がつきました。

といいますのは、市場メカニズムというのは、その根本、核心は需要供給の法則だと思います。

ちょっと理屈の話をいたしますけれども、需要供給の法則というのは、右肩下がりの需要曲線があって、右肩上がりの供給曲線があって、需要曲線と供給曲線の交わるところで価格と数量が決まって、それが最も効率的な価格と数量、それがマーケットメカニズムによって、いわば神の見えざる手によってそういう効率的な資源配分、消費と生産が行われるというのが需要供給の法則で、それが市場メカニズムの核心だと思うんです。

実は、中古品といいますのは、まず需要面からいいますと、普通の品物というのは限界効用逓減の法則というのがございまして、その同じものをもう一つ買うときに少しずつ喜びが減っていくということで、それで、このくらいの値段であれば一個しか買えないけれども、このくらいの値段なら二個買おう、三個買おうというようなことが起きるわけですが、中古品の場合ですと、とにかくそれが欲しいんだ、特にビンテージ品ですとかあるいは古伊万里の焼き物とかでもいいんですけれども、とにかくそれが欲しいんだということで、限界効用がゼロなんですね。同じものをもう一個もらってもしようがないというところが、この中古品の世界には多いと思います。ですから、これはもう、欲しい人は幾らでも金を出すとかの世界になるわけでありますし、きちっとした需要曲線が書けないんですね。

供給面についていえば、これはもう決定的なんですけれども、ちょっと理屈の話になりますが、供給曲線というのは、あれは限界費用曲線でございまして、もう一個追加的に生産するのに幾らかかるかというのが供給曲線でありまして、中古品というのは生産されないものなんですね。これは全く当たり前の話なんですが、これ以上生産されないものが中古品でございますから、中古品については供給曲線というのはあり得ないんですよ。したがって、中古品というのは、市場メカニズムには全然なじまない品物だと思うんですね。

この五年間、何でこの中古品業界がほうっておかれたのかというのをつくづく省みますと、実は、市場メカニズム最優先の内閣が五年間続く中で、この中古品業界というものがほうっておかれたのかなということを思いまして、それで政府に質問したいんですけれども、幾ら市場メカニズムになじまないからといって、政府として、この大事な中古品業界というものを排除したり切り捨てたりはしませんよねということを伺いたいと思います。

片山さつき経済産業大臣政務官

ただいま委員のお話を伺っておりまして、大変勉強になりました。

委員は外務省の御出身で、委員や私の年代のころは外務省は筆記試験をしておりまして、経済原論が非常に大きな比重を占めておりまして、実は私も二十のときに受けて合格しておりますので、このときの教科書を大変に思い出させていただいたところでございます。そのPQ曲線、DS曲線の講義の後には、供給側独占というのもたしかあったような気がいたしますけれども。市場メカニズムのお話についてはよく政策議論で出てくるのでございますが、市場メカニズムの発生の仕方の中にはオークションシステムというのもございまして、ビンテージ商品の中には、オークションで、競り売りのような形である意味競争価格が決まっていくものもございますので、必ずしも中古品のすべてが全く市場メカニズムになじまないということではないと思います。その辺はもちろん全部御存じの上での御質問と思います。

今政府参考人の方から中活法についてお答えさせていただきましたように、中心市街地の振興策一般につきましては、地域におけるさまざまな取り組みを、しかも自主的な取り組みを支援していく法制でございまして、今般の改正も、こういった中古品業者が独自のまちづくりをしていらっしゃる。先ほど御指摘のありました御地元の盛岡もございますが、そのほかに宇都宮、大垣、小淵沢、秩父など、アンティークが中心になっている地域がたくさんございまして、そういったところももちろん取り組みの一つとして支援の対象になりますし、今までもこれからも、中古品業界の方々が産業政策の中の中心市街地や中小企業の振興の中にもちろん対象として入っているということは当然でございます。

達増拓也委員

今の答弁の中でオークションというのが紹介されて、それがマーケットメカニズムの一部だという答弁だったと思いますが、私は、オークションというのはマーケットメカニズムの一部だととらえない方が本質をつかみやすいと思うんですよ。

マーケットメカニズムというのは、それはマーケットメカニズムの定義にもよるんでしょうが、外国為替に象徴されるように、世界じゅうのどこでも一ドル幾らだ、原油なんかでも世界じゅうのどこでも一バレル幾らだと、若干の微調整はありますけれども、同じ品物が世界のどこでも同じ値段になっていくメカニズムがマーケットメカニズムなんだと思います。労働力もそうなるし、何でもかんでもそうなるというのがグローバリズムの本質だと思うんですけれども、オークションというのは、逆に、今目の前にあるこれしかないものに一体幾ら出すかという、その人の生きざまが問われるような、そういう商取引でありまして、それは、世界大の効率化を目指していくマーケットメカニズムとはかなり違うんじゃないか。

私は、整理すれば、マーケットメカニズムに対してバザールファンクションという概念を提案したいと思うんです。マーケットというよりバザールなんですね。それは、顔と顔が見える相手での、同じものでも、金持ちのお客には一万円で売り、お金を余り持っていない人には同じものを二千円で売るような、そういうバザールの世界。

バザールというのは、ロングマンの英英辞典でバザールの定義を調べますと、一つには、オリエントとかアジアとか、そういう東方、東の方の市場、ヨーロッパの市場はマーケット、ヨーロッパじゃないところの市場をバザールと呼ぶんですね。二つ目の定義は、福祉、慈善、慈善事業のための、慈善のためのお金を稼ぐためのものを売る場をバザールと呼ぶ。日本でいうバザーですね。そういうバザー。

オークションなんかも、昔、古い話ですけれども、牧伸二が司会するテレビ番組で、何かいろいろなお笑いタレントとかの身につけているものをオークションで売るというのがあって、売り上げは全部あゆみの箱に入れられるわけですけれども、あれはなかなか、マーケットメカニズムとは全然違う原理で機能する世界だと思いますよ。

そういうバザールファンクション。これは、メカニズムというよりファンクション、かちっかちっとした機械的なメカニズムじゃなく、もっと機能、働き、ファンクション。ファンクションというのは、外交の世界では宴会やパーティーのことをファンクションというんですね。人と人との出会う場のことをファンクションともいいまして、まさにバザールというのはそういうものじゃないか。

地域の商店街、中心市街地というのは、マーケットメカニズム原理でいくんじゃなくて、こういうバザールファンクションという観点から振興を図っていかなきゃならないんじゃないかと思うわけであります。

このやり方は、そういう昔に戻ろうという話だけじゃなくて、実は、二十一世紀、情報化社会の本質に迫ることでもあります。

梅棹忠夫という京都大学の民俗学、比較文明学の先生なんですけれども、「情報産業論」という論文を四十二年も前に書いているんです。そこで、情報の値段の決まり方というのは、普通の物、産業社会で生み出される製品、物の値段の決まり方と情報というものの値段の決まり方は全然違う、これはすごいということを四十二年前に指摘しまして、さっきも言った限界効用ゼロの話。新聞とか雑誌というのは、全く同じ新聞をもう一つ買いたいということはないわけですね。例えば、英語版のニューズウィークというのは日本で買おうとすると六百円ぐらいする高い雑誌ですけれども、六百円で一冊買うニューズウィーク、もし百円だったら五冊も六冊も買いたいという人はいないわけでありまして、一冊買えば済むものなんですね。そういう限界効用ゼロというのは、これが情報の本質、性質なんです。

ちょっとおしゃべりを長くしますが、最近はやっているもので、御当地キティちゃんというものが今はやっているんですね。これは別に資料として提示しているわけじゃなく、ポケットに入っていたものをたまたま今取り出して見ているんですけれども、永田町キティちゃんというのがあって、これは背広を着たキティちゃんが国会議事堂のかぶりものをかぶっているキティちゃんなんです、携帯のストラップとかに使えるんですが。私がこの御当地キティちゃんを最初に発見したのは、去年の今ごろ、仙台に行く機会がしょっちゅうありまして、それで、仙台駅をぶらぶらしていたら笹かまぼこキティちゃんというのを発見しまして、キティちゃんが笹かまぼこの着ぐるみを着ている、そういうマスコットがあって、おお何だこれはと思ったわけですね。

これがまさに限界効用ゼロで、一つは欲しいと思うわけですよ。ただ、そんな同じものを二つも三つも持っていてもしょうがない。ただ、あえて二つ目三つ目がもらえてうれしいとすれば、それは同じものを人にあげることができる。だから、この手の限界効用ゼロのものというのは、さっきもバザール、バザーで慈善の話、あゆみの箱のことも紹介しましたけれども、本当にその人の生きざまとか愛と感謝、そうしたものが生み出されるのがバザールでありまして、御当地キティちゃんも、まさにこれは、笹かまキティちゃんは宮城でしか売っていないし、永田町キティは東京でしか売っていないんですよ。最近ようやく全部で八百種類あるカタログが発売されたんですが、それが発売される以前は、インターネットの中で、みんな全貌がわからないんですね。どこに何が売られているかというのはだれもわからなくて、インターネットで何県でこういうのを発見したという情報が飛び交い、そして、これは絶対欲しいなんという人がそれこそ幾ら出してもいいとかいう話。また、譲りますという人が、本当は足元を見て一万円でも売れるかも知れないものをあえて定価四百五十円に近い五百円で譲りますとか、まさに愛と感謝の生産がそこで行われていると。

したがいまして、中心市街地活性化の話に戻りますが、政府としても、中心市街地活性化に当たっては、市場原理のみにとらわれず、社会的、文化的要素も加味して中心市街地活性化に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。

片山さつき経済産業大臣政務官

おっしゃるとおり、当然、中心市街地におきましては、その地域が長年間築いてきました古い歴史、伝統、文化の薫りを持った町の顔というのを大事にして発展してこられているわけですし、そういった社会的、文化的要素をまちづくりの中で不可欠なものとして入れていただいて、中心市街地の活性化協議会にもそういった議論が行われるでしょうし、商業者のみならず、そういった御関係の方、町の伝統や文化に明るい方々、また町の伝統や文化を支えている方々なども当然御参加、御参集いただいて、その知恵と力を結集していただいて、まさに文化、経済の両方の拠点としての市街地の再生を行うということが政府としての方針でございます。

達増拓也委員

私、さっき、今の内閣はどうも市場原理ばかりやり過ぎるんじゃないかということも申し上げましたので、内閣の一員である二階大臣にも、中心市街地活性化に対する意気込みを伺いたいと思います。

二階俊博経済産業大臣

先ほど来、奥州街道の紺屋町のアンティック市のことなど御紹介をいただきましたが、私どももこの奥州街道の紺屋町には大変注目をしておるところであります。先ほども御答弁で申し上げたとおり、国会も終了した段階で全国に経済産業省の幹部を派遣してその状況等をつぶさに調査をし、ここがなぜにぎわっておるか、ここがなぜ繁栄しておるかということなどを調査し、今後の参考にしたいと申し上げました中に、紺屋町など念頭にあるわけであります。

また、今、バザール等につきまして、またマーケットメカニズムにつきまして、達増拓也委員の幅広い学識に基づいて、参考になる御意見をちょうだいしました。

今片山政務官からも御答弁のとおりでありますが、私はやはり、この改正法案に基づいてさまざまなまちづくりということを考えていかなくてはなりませんが、中でもやはり一番大事なことは、中心市街地活性化協議会、これで関係者がみんな集まって協議をし、納得の上にみんなで力を合わせて取り組んでいく。それは、公共団体の代表の皆さんの意見も大事でありますが、何としても、そこで御商売を営んできた今日までの歴史的な経験に基づいて、人々がどのようにして集ってくるか、そして、訪ねてみて本当によかった、時間があればあそこの商店街へ行ってみたいというふうな気持ちになれるような商店街をつくっていくことが大事であります。今度の法律改正によりまして、社会的、文化的、経済的な分野におきまして中心市街地が大いに再活性化することを願って、私どももでき得る限りの努力を傾注してまいりたいと考えております。

達増拓也委員

時間ですので、終わります。