農林水産委員会(平成18年3月23日(木曜日))

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000916420060323006.htm

川内博史委員

民主党の川内でございます。

きょうは、委員長を初めといたしまして本委員会の理事の先生方にお許しをいただきまして、発言の機会をいただきましたことにまず感謝を申し上げさせていただきたいというふうに思います。本当にありがとうございます。

きょうは、私は、BSE 問題とPSE 問題、二つのことについて聞かせていただきたいというふうに考えております。

まず、PSE の方から先に聞かせていただきたいというふうに思いますが、このPSE 問題というのは、経済産業省所管の電気用品安全法という法律が、平成十一年に電気用品取締法から安全法に、大臣、ここ大事なところなのでもうちょっと我慢していてください、あと十分ぐらい我慢してください、電気用品取締法から電気用品安全法に改正をされた。その際に、PSE マークを付したものでなければ販売してはならないというふうに法律に書かれたわけですね。

そうすると、中古の電気用品の販売事業者の皆さんは、PSE マークが張ってないものについては、みずから製造事業者の届け出をして、技術基準適合というのを確認して、さらには自主検査をしてPSE マークを張る、そして販売するということをしなければならなくなった。

大臣、技術基準適合を確認するというのは、大臣、大臣、こっちを見てくださいよ、これ、九百七十六ページの本ですよ。これが、この技術基準を中古の電気用品販売業の方々に確認しろ、さらには自主検査もしてPSE マークを張りなさい、そうでなければ売ってはいけませんということになったんですよ。

安全性の基準は旧法と新法では全く一緒なんですからね、安全性の基準は全く変わらない。にもかかわらず、販売業者にこんな分厚いものを確認させよう、これははっきり言って実態としては無理だ、だから今大変な問題になっているわけですね。

実は、私は、これは農機具も関係しますから、地元のJAの方に、状況としてはどうでしょうか、この電気用品安全法の本格施行を間近に控えて、御存じでしたかということをお聞きいたしましたらば、この電気用品安全法の本格施行については全く知らなかったと。

それで、文書で、私の地元のJA 中央会の農政部から回答をいただいて、「影響がある事業」「中古農機事業」「中古として流通が考えられる規制対象品目」「その他下取等で発生する規制対象品目」ということで、さまざまな品目がこの電気用品安全法で該当している。さらには、「実施による組合員・JA ・経済連への影響」ということで、「規制対象品目について、下取品として取れなくなる。」「組合員からの委託販売ができなくなる。」というようなことが書いてありまして、「今後の対応等」というところで、同法の施行に伴い、電気用品安全法の施行に伴い中古事業として行うことに制限が出てくるため、多大な影響が出てくると考えられるというふうに大変に心配をしていらっしゃるわけです、この電気用品安全法。

ちまたでも今大問題になっているわけでございますが、これは農水、本委員会にも大いに関係することであるということで、きょう質問をさせていただくわけでございます。

全国的には六十万の古物商、下取るところは大体古物商の許可をとっているんですけれども、六十万の古物商の中にJA で下取りなんかをするところも全部含まれるわけですが、六十万の古物商、質屋がある。そしてさらに、その中の三十万社が中古電気用品を扱っているというふうにされているわけです。それで、全く知らなかった、そんなことがあるんですかということだったわけですね。これから周知徹底をしていかなければならないという状況なんだそうです。

そこで、農水省の西川生産局長に伺いますが、きのう私がレクで担当の方にお聞きしたところによると、この電気用品安全法の問題について農水省は二月下旬に報道で知った、農水省自身は報道で知ったというふうにおっしゃっていらっしゃいますが、確認をしていただきたいというふうに思います。

西川孝一農林水産省生産局長

いつ知ったかという御質問でございますけれども、私自身は報道で知りましたけれども、担当の方は、二月の下旬に関係団体から問い合わせを受けたということ、それですぐ経済産業省のホームページを開きまして、中古の電気用品も対象になるということを確認したということでございます。

川内博史委員

だから、全く、大臣、このPSE 法というのは物すごく広い範囲に影響があるわけですよ。

個人間の売買は規制されていないというふうに経済産業省は説明をするわけですけれども、しかし、業として行っている場合は、農機具として使っている場合はこれは業ですから、業としての売買になりますから、農家は自分で技術基準適合を確認して、絶縁耐力試験といって一分間千ボルトかけて、もしかしたら千ボルトを実験しているときに感電して大変な目に遭うかもしれないんですよ。

私、実際にメーカーの方の話を聞きましたけれども、素人がそんな千ボルトの試験なんかしたら危ないですよと。実験の条件というのがあるわけですから。そもそも、中古の販売事業者にこんな技術基準適合を確認させるとか、大体普通の電気用品というのは百ボルトとか百五十ボルトとか二百ボルトですからね、自主検査として千ボルトかけなさいと、もともと無理なんですよ。こんな、当初想定されていなかったことが、無理無理、今もう四月一日を間近にしてやられようとしているという状況なんですね。

迎経済産業省商務流通審議官にも来ていただいていますから、大臣は最後に聞きますので。これは、そもそも法律の中に、中古電気用品の販売の業に携わる人たちの義務というものがしっかりと別途に分けて規定されないと、新品と中古と分けて考えないと、もともと無理があると思うんですよ。販売している人たちが製造業の届け出をして、こんな分厚いものを確認するなんておかしいですよ。

普通に常識で考えておかしいと思いませんか。大臣、そう思いませんか。感想でいいですから、おかしいと言ってくださいよ、あり得ないと。

中川昭一農林水産大臣

平成十一年に改正された法律ですが、連日私もテレビで、中古の売買やお仕事をされている皆さん、あるいはビンテージ楽器というんですか、ああいうものに関心を持っている皆さん含めて、毎日大変報道されて、私も関心を持っているわけであります。

七年前に法律が改正されたんだからその間猶予期間があるのではないかという議論も一方にあるでしょう。また、この法律の目的も電気製品の安全性という観点からの法律だということもあるでしょう。ただ、過去においても、施行ぎりぎりになって関係業界あるいは国民が大変だ大変だと言って大騒ぎになったことがあります。例えば、トラックの過積載の問題でありますとか、トラックのスピードリミッターの問題ですとか、そういう問題も過去において私も承知をしております。

この法律自体は、経済産業省が電気製品全体を所管しているわけでございますので、おかしいかおかしくないかと言われれば、我々の方は農機具関係が一番影響があることが想定されるわけでありますけれども、過去の数年間をどう見るのかということが一つと、もうあと数日に迫っていると言われている状況をどう見るのかということと、一般の人たちが六法全書みたいな本を全部見て、千ボルトで一分ですか、テストしてみなさい、それで合格だったら個人同士で売買してもいいですよということについては、この法律は、大変恥ずかしながら私が前いたところの所管の法律ではございますけれども、施行したのはその前という、決して責任逃れしているつもりはございませんが、経済産業省の方も、今一生懸命、普及あるいは社会実態に合うように努力をしているやに私も報道で聞いておりますので、ぜひ経済産業省の方の今の状況をお聞きいただいた上で、後ほどまた川内委員からの御質問があれば、お答えしたいと思います。

川内博史委員

いや大臣、トラックの過積載とかスピードリミッターは、別にトラックに荷物が積めなくなるわけでもないし、トラックが走れなくなるわけでもないですね。トラックは、スピードリミッターがついてスピードは落ちるが、走れる、荷物の量はきちんと定められてしまうが、きちんと荷物は載せられる。しかし、この電気用品安全法は、中古の電気用品が売れなくなる、農機具が販売できなくなる、さらには農作業に支障が出るということが予想されるわけです。

ちょっと大臣、個人間の売買はいいんです、個人間の売買は。しかし、農機具の場合は、農家は業として農業をやっているので、業としての販売の場合には技術基準適合確認と自主検査というものをやってPSE シールを張らなければならないということで、これは農家の人たちにも大変大きな影響があるわけです。

せんだって私の同僚の松木謙公議員が大臣に申し上げたと思うが、酪農家から連絡があって、この法律が施行されると、コストを少しでも圧縮して利益を出していこうという大変一生懸命な農家の努力の中で、中古の農機具を有効に活用しながら頑張っている、そういう状況に支障が出るということを、せんだって委員会で、松木謙公議員も大臣にその状況を御報告申し上げたというふうに思うんです。

中川大臣は、農水行政にも造詣が深くていらっしゃるし、もちろん経済産業の大臣もされていらっしゃったわけですから、産業政策についても大変深い造詣をお持ちになっていらっしゃるというふうに思うんですね。

そういう中で、七年前に法改正がされた。しかし、周知については、ホームページあるいは通産省公報に載せられただけ、あるいは、パンフレットは二十万部刷ったとか、説明会は何百回やったとかいいますけれども、利害関係人としての古物商あるいは中古電気用品販売業への、あなたたちの仕事はこれからこうなるんですよという明確な周知は一切なかった。それがことしの二月十五日に始まったばかりだということは、警察庁も経済産業省も委員会の場でお認めになっていらっしゃるわけです。

そういう状況の中で、これは流通に大きな影響がありますし、四月一日から本格施行が始まる。私は、どう考えても、これはこのままやるには余りにもリスクが多過ぎるんじゃないかというふうに思うんです。

そこで、迎審議官にお伺いしてまいりますが、このPSE マークのない中古電気用品を販売あるいは販売目的で陳列した場合、四月一日以降どうなるのか。違法行為になってしまうわけです。三月三十一日までは適法だったものが、四月一日から違法になる。これはどうするんですか。ちょっとお答えいただきたいというふうに思います。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

今先生のお話のとおり、四月一日に経過措置の猶予期間が切れました以降は、PSE マークのついていないものを販売してはならない、あるいは販売の目的で陳列してはならない、こういうことになるわけでございます。

したがいまして、私どもとしては、その法律は遵守していただくということで、そういった違反行為のないようにしていただかなければならない、こういうふうに考えております。

実際に、私ども、いろいろ業者の方に伺いますと、自分たちが検査体制が整ってPSE マークを付せるまでの間は、既に二〇〇一年以降に生産をされたPSE マークのついた製品の販売を行って、検査体制が整った上で、ちゃんと付して売るようにしたいというふうな業者の方もございますし、あるいは、そういった体制が整うまではレンタルの事業に切りかえるというふうな企業もあるやに伺っております。

そうしたことで法を遵守するということで、各事業者いろいろ工夫をして、対応を考えておられるというふうに承知をしております。

川内博史委員

大臣、今、迎審議官が、自分で検査をする業者もあります、あるいはレンタルに切りかえる業者もありますというふうにお答えになられたが、販売業をする人たちが自分たちでこの技術基準を確認して自主検査できる、そんな販売業者が何社あるのか、三十万社のうち何社がこの技術基準を確認できるのか、自主検査できるのか、数字を答えていただきたいですけれども。

さらには、レンタルに切りかえると。販売はだめでレンタルならいいと、みずから脱法的行為を経済産業省が指導しているわけです、ある意味で。PSE マークを張っていないものは販売はしちゃだめだ、しかしレンタルはいいですよと。それで、レンタルに切りかえる業者もいらっしゃる。

与党の先生方も、おかしいと思われないですかね。販売の業に携わる人たちに製造業の届け出をさせて、製造業者としてPSE マークを張って売りなさいと。これはどう考えても、私には常識的に受け入れられないと思うんです。

そこで、もう一問だけちょっと商務審議官にお伺いしますが、もうこれは法改正をされた方がいいと思うんですよ。経済産業省が所管する安全法制全体の体系をしっかり見直す。中古電気用品、これからリサイクル、リユースというものがますます発達するわけです。もったいない精神というのは小泉総理もおっしゃっていらっしゃることですからね。そういうリユース、リサイクル、リデュースを進めていくために、安全法制全体を見直して、その中には中古の電気用品というものに関しての位置づけもしっかりするという法改正をしなければ、今のままではとてもとても現実の問題に対応できないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

迎陽一経済産業省大臣官房商務流通審議官

現行の電気用品安全法は、国民が電気用品を使用する際の漏電、火災の事故を防止する観点から法改正を行って、現在、この法制を円滑に施行すべく私ども全力を挙げておるところでございますので、そういう段階でこの法体系を見直すというふうなことは今現在私ども考えておりません。まさに五年の経過措置終了を目前に控えて、先般発表いたしました対策の具体化を進めると同時に、きちっと施行していくというふうなことが必要であると思っております。

ただ、中長期的に、一般論として申し上げれば、そもそも法律というのは常に不変というふうなものではなくて、安全法制についても、安全確保の観点から、技術進歩、取引の実態等の変化に応じて、必要に応じて不断に見直していくべき性格のものである、こういうふうに認識しております。

川内博史委員

ここは経済産業委員会ではないので商務流通審議官に対する質問はここまでにさせていただきますが、私は、何回も繰り返しますが、今、円滑に施行させることが自分たちの役目であるというふうに審議官はおっしゃられたが、円滑に今の状況で施行できるとは恐らく審議官御自身もお考えではないというふうに思うんですね。これはちょっと問題が大きいなというふうに思っていらっしゃると思うんです。まあ、それは問題が大きいですとはとても御自身でこの場でおっしゃられることはできないと思いますが。

しかし、常識で考えて、販売業者に製造業者の届け出をさせる、さらにはこんな、いいですか、せっかくですから、この中に書いてあることは、大臣、その商品を七十センチの高さから落として強度試験をしろと書いてあるのです。その商品を、電気用品を七十センチの高さから落として強度試験をしなさいと書いてあるのです。新品の場合には、型式試験で一つだけやって、あとは生産する、それを販売するということでいいわけです。しかし、中古の場合は、一品しかないですから、それを七十センチの高さから落としたら壊れますよ。売れなくなっちゃうじゃないですか。そういう矛盾したことがいっぱい書いてあるんです、この中に。それを販売業の方々に製造業者の届け出をさせて、義務づけていく、これは法的拘束力のあるものですからね、というのは、どう考えてもやはりおかしいんですよ。

これを無理無理やるのは私は大きな問題があるということを申し上げておきたいというふうに思いますし、中川大臣は経済産業大臣でもいらっしゃったし、閣僚の一人として、きょうのやりとりをお聞きになられて、再度これはちょっと閣議でも話題にしてみたいくらいは言ってくださいよ、ぜひ。

中川昭一農林水産大臣

まず、我々は法治国家ですから、国会できちっと成立したものを予定どおりにやる。さっき迎審議官は、もちろんそれが絶対ではないけれどもということでありますけれども、いよいよそれが間近に迫ってきている。国民的関心も大きい、プロの関心も大きい、そのことは私も連日のニュースで承知をしております。

川内委員の御質問の前提には、まず法は法として、常識からいっておかしいのではないかという質問が多分質問の大前提にあるんでしょうけれども、そこは、やはり五年の周知期間ということで、私は、今になって一部の販売の人たちが、確かに一般の国民の人は知らなかった人も多かったのかもしれません。ましてそんな分厚い、まくらにできそうなものを一般の人が読んでどうするということは難しいんだろうと思いますけれども、しかし先ほど、個人の話は別にしてということでありますから、これはプロ同士の話としてやっていくとするならば、やはりそこは、プロにはプロに求められるものというものも、私は、一般人とは違うものがあるんだろうというふうにも考えます。

全体の法の話は私は立場ではございませんけれども、例えば農機具とか、稲わらの何とか機とか、いろいろございまして、御質問に際して、鹿児島県の方にもいろいろお聞きをしたり、全国の関係者の皆様にもいろいろと問い合わせをして、農林省としても御質問に当たっていろいろデータを調べたところでございますけれども、とにかくこの法律をスタートさせる以上は、農林水産関係に関しては支障のないように全力を挙げてやっていくのが私の仕事だというふうに考えております。

川内博史委員

期待する御答弁がいただけなかったことは残念でございますけれども、そもそも、電気用品取締法から電気用品安全法へ改正をされるというのは、規制緩和推進三カ年計画の中で、国の基準・認証制度を見直すということで、規制緩和の一環として法改正が行われた。しかも、経済産業省、当時通商産業省所管の十一本の法律が同時に見直された。さらには、その十一本の法律を見直す過程で、産業構造審議会あるいは消費経済審議会の合同部会というものの中で議論をされたんだけれども、中古電気用品に関しての扱いというものは、その審議会の中でも一切議論をされておりませんし、さらには、国会の中でも十一本の法律をまとめて一日で審議しておりますから、これも全く触れられていない、全くブラックホールというか、抜け落ちていたんだというふうに思うんですね。

そういう中で、それが昨年末になって突然、本格施行間近に中古販売の方たちが、これはひょっとしたら自分たちも関係するんじゃないかということで気づいて、今大きな騒ぎになっているということでございまして、これは私の意見でございますけれども、再度、大臣も経済産業大臣もお務めになられていらっしゃったわけですから、事情をしっかりと確認していただいて、閣議の中ででも、電気用品安全法について、農水省としてはこうするんだというようなことでも結構ですから、御発言をいただくようにお努めをいただきたいということを意見として申し上げさせていただきます。