脚本・演出・サクソフォーン:松本 ひろ実


2000年4月8日(土)未明、我が家の愛猫《エステラ》が死んだ。
15才と1ヶ月。猫の年で言えば、充分に長生きをした。
昨年1月に乳ガンで「手遅れ」の宣告をされて以来、
この日がいつ来てもおかしくはなかった。
ガンの進行が先か、老衰が先か・・・

しかし、飼い主に似てくれたのか、どう見ても7〜8才ぐらいとしか思えぬ若さと体力。
それに美ニャンだし・・・
乳ガンが進行し、思い切って11月と1月に2度の大手術。 それでも立派に耐えた。
刈り取られたお腹の毛もようやく伸びてきて、安心したところだった。
直接の死因は、「腎不全およびそれに伴う肝機能障害」。
そう言えば、食べては吐き、水を飲んでは吐いていた。
でも、良くあることだった。 食欲は充分だったし・・・
「これは本当におかしいかも」と気付いた時には、又もや「手遅れ」だった。
『えっちゃん、本当にごめん!!』
1週間の戦いだった。 こんなことで死なせてたまるか!!
でも、ついに力尽きた・・・
『よく頑張ったね、君はとても素晴らしいネコだった。 ありがとう。』
おととい、医者に通う道で1本の満開のサクラを見た。
毛布にくるまれた君には見えただろうか?

この脚本を書くきっかけをくれた《エステラ》のためにも
ずっと書こうと思いつつ手がつけられなかった「ネコネコ制作日記」を書き始めることにする。

『君も人間になりたかったかい?』


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5月16日(月)

ついに公演が終了した。
短いようで、実は長かった制作期間だった。
たった2時間、しかも2回限りのこの公演に、我々はいったいどれくらいの
エネルギーを費やしたことだろう。
思い起こせば、この企画を考えついたのは、昨年の6月だった。
リハーサルは数回しかとれなかった。
でも確信があった。 この企画は絶対に成功すると・・・

昨日、2回目で最終日となる回を迎えた。
生の舞台にはつきものの、ハプニングは続出。
でも、それをその瞬間瞬間に受けとめて楽しむ余裕すらあった。
1ヶ月前には考えられなかったことだ。
演奏しながらも、また、役者の動きを見ているだけの時も、
ステージに上がっていることが楽しいと感じた。
自分の居場所を感じることが出来た。 

ほとんど無名の団体、「ミュージック・カンパニー プロジェクト“M”」は、
たった2晩で大きな存在に成長した。
何よりも嬉しかったのは、新聞や雑誌、チラシなどを見て、
わざわざ足を運んで下さったお客様が多かったこと。
毎晩のように、あちらこちらで催される数多くの公演の中から、
我々のこの舞台を選んで下さったということだ。

そして、実にたくさんの方々から、アンケートでの感想やメールでのコメントを頂いた。
もちろん、出演者全員で何度も何度も読み直しては、語り合った。
いくつかの反省点をふまえつつ、更に手直しをして、いつかまた再演が出来たら最高だ。

アンサンブルのメンバー全員が、次の企画に参加したいと言ってくれた。
「こんな楽しい企画に誘ってくれて、ありがとう!!」と言われた。
嬉しかった。 涙がでるぜ!!

「語り芝居と音楽の物語」のシリーズ化は決定。

次回は、また来年の5月頃になりそうだ。
さてさて、どんな物語に仕上がることやら、どうぞお楽しみに!

最後に、今回の企画にご参加下さった役者さんを始め、
関わって下さった全ての方々に心から御礼申し上げます。

お陰様を持ちまして、好評のうちに終了致すことが出来ました。
また、会場にお越し下さった皆様、そしてこの私の「制作日記」なる文章に

お付き合い下さった皆様にも、御礼申し上げます。
これからも、プロ“M”の活動に、どうぞご支援、ご協力を
よろしくお願い申し上げます。


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5月13日(土)

9日(火)、初日が終わった。
帰りの車の中で、その日のうちに反省を書こうと思いながらも、
あっという間にまた日常のペースに巻き込まれてしまった。

そして、もう次の公演を迎えようとしている。

初日は朝9:00に会場に集合した。ピアノの調律と、照明の仕込みの同時進行。
演奏者である我々も、すぐにステージに上がり、座り位置を確認する。
すぐに終わるので、その後はアンサンブルのメンバーが、譜面台につける譜面灯に青いフィルムを黒いガムテープで
張り付ける作業をした。

こんな時でも、「わー!!お工作の時間みた〜い!!」「久し振り・・・楽し〜い!!」
なんて言葉が出て、ワイワイやっているとは、さすがというべきか、やっぱり、というべきか・・・
長〜い長〜い待ち時間の間に、楽屋でそれぞれが気になる箇所を合わせ始める。
途中、照明のチェックがあったが、15:00までのゲネプロまでは、時間がありすぎた。
私はと言えば、ホールに預けてあったチケットの残りを取りに行ったり、受付の方々に説明をしたり、結構ドタバタと走りまわり、
その時点で汗はびしょびしょ、さすがに本番が来るまでに疲れ切ってしまった。 みんなもだ。 
これはいかん!!

本番はと言えば、ゲネプロで気をつけた音程チェックが全然合わない。
今度は暑すぎる。 お客さんも入るから、響きも相当にデッドだ。
それでも本番の気迫、役者さんの芝居に思わず、鼻をすすってしまったではないか。
徐々にストーリーに引き込まれていく人々の様子に、こちらもテンションが上がる。

そして、最後の照明が落ちた。
みんなの最高の笑顔。

もちろん、反省点は多々ある。 それは個々が次回までにクリアすること。
そして、また新鮮な気持ちで次のステージを迎えたい。 いつも最高のものを目指して。


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5月6日(土)

一泊二日の合宿も終わった。時間はまだまだ足りない。
不安だった。 この合宿でどこまで仕上げられるか。何度も役者とぶつかった。
芝居でもコンサートでもない、新しいものを作りたかった。
それがうまく伝わらない。 照明プランも大幅に変えられた。
大切に思っていた台詞やシーンがどんどんカットされていく悔しさ。
自分が原作を読んで惚れ込んだあの感動を、出来るだけ多く盛り込みたい。
しかし、それをたかだか100分程度に納めるには、どうしたって限界がある。
しかも役者は3人だけにこだわったのだから、負担は相当なものだ。
音楽だって大変だ。 みんな初挑戦の台詞があるのだ。
きっかけの台詞はどんどん変わる。
役者の動きが変わるたびにアンサンブルは混乱する。
音楽の中に語りの台詞が入ると、ギリギリのpp(ピアニッシモ)の要求だ。
それでも自分たちに役者の声は聞こえない。
<楽譜の読めない役者と、台詞のタイミングのつかめないアンサンブル。
それに、演奏に加わってしまった作曲家と脚本家>
誰が客観的に判断出来るというのか。 カンが全てだった。
ようやく、お互いが近づいてきたと感じるには、2日目の夕方までかかった。

ここまでくれば、ひと安心だ。

みんな、本当に良く練習した。 2日目の夜ギリギリまで、1分を惜しんで練習をし、討論を重ねた。
明日が最後の、そして直前の通し稽古となる。

今回、改めて感じた。
音楽の領域、芝居の領域・・・未知なる相手の領域にどこまで踏み込んでいいものか。
そして、音楽家同志もまた、お互いの感性にどこまで口をはさんでいいものか。
さらに、演出する、ということは何なのか。
楽譜が、脚本が制作者の手を離れたとき、制作者の意図はどこまで忠実に伝えられるものか。
そして、聴衆・観衆には何が伝わるのか。
今回の自分の初挑戦が一体どこまで、これらの全てをまとめることが出来たか、不安でもあり、楽しくもある。


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4月22日(土)

プログラムの原案が上がって来た。今夜のうちに校正だ。
とりあえず、この段階まで来ると、なんとか一息というところだ。
音楽物語Vol.2のお知らせは間に合わなかった。
作品の著者へは企画書を送ってあるのだが、まだ何の返事も来ないのだ。
ウーン、別の作品を考えるべきか・・・
リハーサルは来週から立て込んでくる。
ゴールデンウィーク中には、なんと1泊2日で合宿もあるんだ。
「八王子青年の家」  なんとも学生のノリみたいで、これを楽しんでくれる仲間は最高さ!
リハーサルの会場捜しには本当に手こずった。
何しろ、時間が合わない、予算が合わない。
大抵みんな夕方くらいからレッスンの仕事やら演奏やら入っているからね。
そういった仕事が入らなければ、週末に空いていることもたまにあるけれど、
そんな時はまず、場所がない。
公共の施設だと、午前・午後・夜間なんて区切られているから大変。
それじゃあ、スタジオでも借りれば、と言われても、グランドピアノがあって、
演奏者6人に役者が動き回るときたら、ある程度の広さは必要だし・・・
というわけで、毎回ギリギリまであわてた。

会場を提供してくれた、影絵劇団「かしの樹」さん、「ミクロコスモスミュージック
スクール」さん、ありがとうございます。
プログラムに、スペシャル・サンクスとして御紹介させて頂きました。
次回のリハは25日(火)、これも朝イチ、9:30から。 実を言うと、キツいよ。


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4月16日(日)

あっという間に1週間が経った。最近は特に1日1日が短かすぎる。
と、言うのも、すべてのことが間に合うか、間に合わないか・・・、という生活を
毎日送っているようなものだからだ。
今で言うなら、公演のプログラムに新企画の情報が間に合うか、間に合わないか・・・。
実は来年1月に、これまたすごい企画を考えている。
中身は決まった。 あとは、東京の会場捜しだ。
でも、この時期だと、希望の場所は土・日なんて空いているはずがない。
仕方がないから、1日使えるという金曜日を仮押さえした。
他にどこかないか。 この時期を逃すと、来年の6月まで出来ない。
もう1ヶ所の地方公演の会場の手配もしなくてはならない。
会場によって予算組みは全く変わってくる。 これは大変なことさ。
プログラム原稿も書かなくてはいけない。
そうそう、案内状や招待状の発送もまだだった!気が狂いそうだぜ、全く!!

今日、エステラのお骨を東京・調布の深大寺の動物霊園に納めた。
先週の火曜日に持っていくつもりだったのだが、エステラがもう少し私たちのところに
いたいと言っている様な気がしてならなかった。
いや、本当は私自身が、まだ彼女がいなくなったことに納得ができなかった・・・・・
ということだったのかもしれないが、ここ2・3日で落ち着きたい、という彼女の気配が感じられた。
納骨の帰り道、鉢植えを売っているお店があった。
どうしても心惹かれるヤツがいた。 『キャッテイル』(ネコのしっぽ)
花というのか、ネコのしっぽの様な、まっ赤なフワフワがたくさんついているあれだ。
本当はずっと前から欲しかった。
「300円でいいよ! かわいいだろう! こっちにもあるよ、こいつは1年中咲くからね!!」
そのおばちゃんの言葉に、大粒の涙がポロポロとこぼれた。
おばちゃんは、さぞかしびっくりしただろう。
気がつくと、大きな茶トラが静かに店先に座っていた。
19才だそうだ。 その子は静かに撫でられたままでいてくれた。
家に帰り、少し大きな鉢に移し替えて、陽当たりの良い、リビングの出窓に置いた。
『エステラ号』と名付けた。 「大きくなれよ!!」


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4月9日(日)

本日は初めての役者&アンサンブル合同練習の日。
とは言え、8曲の新曲が待っていたため、まずは30分程時間をもらい、
それぞれに分かれて、打ち合わせ及び初見練習をした。
さーて、それでは1回通してみるか!!
アンサンブルである我々は、脚本も読みながら入るタイミングを自分たちで捜して入る訳で、
これは相当の緊張感がある。
それに自分たちのパート譜を見ただけでは、まだまだ1曲1曲がどんなだったかなんて、
とても思い出せない。
おまけに、「これって、合図は誰が出すんだっけ?」なんていう始末。
でも、曲はさすがにしっかりと作ってあるから、だんだん慣れてくるもんだ。
気が付いたら、あっという間の2時間45分。
あれ?ちょっと待てよ、上演予定時間は110分じゃなかったっけ?
そりゃー確かに、「あ、すいません。その台詞は、この音楽の中に入れちゃって下さいね。」
なんて指示を出したりして、「じゃ、とりあえず、先行きます。」と、時間のダブりは少々あったけど・・・
『語り手』の読み方も少し早まきにしてもらうことにするし。
それにしても、あと20分は縮めないとなあ・・・・・・
曲のあそことあそこはカット・・・したとしても・・・
ウーン、大変だ・・・・・・
しかし、自分で言うのもなんだが、この脚本はおもしろい。
奥瀬氏の『タドベリ博士』役なんて最高だね。
彼は10人分の台詞があって、ホント申し訳なーい!、と思っていたんだけど、
よくぞここまでやってくれました!!
ライオネルもジリアンも我々も、『タドベリ博士』が何か始めると笑っちゃって・・・・・・
おっと、あんまりバラしちゃうとつまんないから、その先はやめとこう・・・

それでは、今日はこのくらいにしとくか!


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4月8日(土)

公演まであと1ヶ月となった。
明日は初めての役者さんとの合同練習の日だ。
脚本は遅れ、出来上がりは1月末だった。だから作曲家にも迷惑をかけた。
脚本が出来てから作曲するのだから。しかも40曲近くはある。
アンサンブルのリハはすでに2回終わっている。明日はまた新曲が8曲ある。
これが結構大変なんだな。
でも、チラシにもある通り、アンサンブルのメンバーは底抜けに陽気さ!!
みんな役の一つになれると大はしゃぎ。
さてさてどうなることやら。
明日が楽しみ・・・