![]() 東芝EMI(株)TOCT-9218 01.DANCE OF THE PARANOIA/偏執病ダンス | 絶対聴くべし | おすすめ | コレクタ向け | オリジナル発売日 1976年9月5日 ポンタの初リーダーアルバムである。弱冠25才なのである。すごいのである。1973年に「赤い鳥」で大村憲司などとバックをつとめてメジャーデビューしたのが22才。それから3年後にこの演奏である。しつこいがすごいのである。 肝心の曲の話の前に、このアルバムのオリジナルアナログディスクの録音に用いた技術が今のデジタルの時代でも十分興味深いので、触れてみよう。 ドラムスはアコースティック楽器でしかも音源がとても多いから、臨場感のあるリアルな音を再現するためにマイク・セットアップがとても重要になってくる。ドラムスは、まず共鳴する。たとえば、ロータムを鳴らすと、スネアサイドヘッドが共鳴してスナッピーを震わせる。もちろん、他の音源から出た音でも周波数があってしまうと同様の現象になる。静かなアコースティックドラムレスの曲で「ビービー」とスナッピーが鳴って興ざめすることがあるのはよくあることだ。 もちろん、これは、悪いばかりでなく、ドラムセット全体の鳴りがライブ感を生む場合があり、そのライブ感をデッドなスタジオでキャッチする録音はそれはそれで、難しい。 このアルバムは完全にライブ感を排除し、スタジオ技術を駆使して明確に深町純とポンタ村上のイメージした音を再現することをコンセプトにしている。このため、ドラムセットを構成するスネア、キック、タム、シンバルなど各音源の生の音を正確にとらえることを目指している。 そのために使われた機材が「キーペックス」。マイクのアウトに接続して、音源にできるだけ近づけたオンマイクセッティングで用いる。キーペックスは、ある音量以上の音が入ってこない限り信号をアウト側に伝えないようになっている。だから、スネアが鳴ったときには、タムなど他の楽器のマイクは、オフになっていて、純粋にスネアだけの音を拾ってくれるという訳である。当時は、16トラックがようやく出てきた頃で、日本でもマルチ録音が流行りだした頃であって、そんな時代にこのキーペックスは想像するに超最先端の技術だったと思われる。そのかわり、誤動作を防ぐためのチューニングは4時間もかかっていたそうである。その効果は、ロールの一音一音、シンバルの種類ごとに違う響きが聞き分けられるほどの音の良さである。ポンタ氏の音質へのこだわりは、この頃からなのである。 さて、曲の話。 1曲目の「偏執病のダンス」は、かの豪華絢爛"JUN FUKAMACHI&NEWYORK ALL STARS LIVE!"でも演奏されていた曲で、ブレッカーブラザーズの切れの良いパッセージが印象に残っている。オリジナルの方は、NY ALL STARSにはなかったパターンが入っていて、ポンタの4ウェイのお手本の様なドラムと深町のピアノのタイトなコンビネーションが素晴らしい。この頃すでに、ピアニシモからフォルテシモまでのダイナミズム、16分音符に3連を絡めて粘っこく引っ張るお得意のフィルを会得していて、ポンタの天才ぶりが垣間みえている。 4曲目は、ポンタのソロによる「並列四頭立ての古代戦車」。今もよく聴かれるスピード感のある8ビートパターンが出てきたり、僕の大好きなSTEVE GADDとRALPH MACDONALDのコンビネーションをほうふつとさせるサンバのパターンなんかも出てきて、若きポンタの引き出しの多さに感激。ドラム全体を左右に振って回ってるような効果を出しているが、最近PONTA BOXでもやっていて、ポンタさん、お好きなパターンと見た。 5曲目、ドラムロールにフランジャーっぽいエフェクトをかけている。STEVE GADDのNY ALL STARSやSTUFFでもやっていたが、多分日本で最初にこれやったのは深町純が最初ではないだろうか。僕もいつかやりたいと思っています。 7曲目、「奈美の唄」は、ポンタが娘さんに捧げた曲。PONTA BOX I "Nabi's Napping",DESSERT IN DESERT"Nabigator through the Dark Desert"でも、娘さんの名前がでてくるが、この頃お生まれになったのだろうか。 Uploaded Dec.21'97
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