●静かにせい!!
ある祝日、2歳の甥っ子が動物園に連れていけと言うので車を走らせた。
空は晴天。ふれあい広場でかわいい動物との交流で手を臭くした後、園内を周る。猿にエサを投げ与え、虎の迫力に圧倒され、クジャクの意外な臭さに鼻をつまみ、甥のテンションはMAXだ。
終盤にさしかかり気味の檻、『デンジャー』の看板が立て掛けられたひっそりしたその檻にゴリラはいた。
何故かそのゴリラはウンコを投げるらしく、それも一つの人気の理由?らしい。この日も絶好調で、檻の前はハエの楽園になっていた。
甥が恐がりつつも見たいと言うのでおんぶしながら遠目に眺めていた。たまの観客の悲鳴に甥と二人で笑っていた。
そこに何とも今時なカップルがラブラブしながらブラブラやって来た…
奇抜なメイクに黄金な髪、上下原色服にでかでかブーツは彼女。長髪に茶髪で貴金属がピカリ、やらしくはだけた胸元は自信の表れか、
血の巡りを妨げるピチピチ真っ白パンツは彼氏。彼の腕には彼女がまとわり付く。デートか営業か。
周りの老人達にとって何よりの珍獣なこの二人もゴリラに群れる客の一部になっていた。それにしても目立つ二人は戯れ合いさらに目立つ。
彼が彼女をゴリラの檻に引っ張る。『行けって!アハハー』『きしょい、やめろやー!』とヒートアップ。周りも少し迷惑そうにしていたそこに………
『静かにせい!!』
といわんばかりにゴリラができたてホヤホヤのウンコを自慢気に投げた。二人の目の前に落ちたウンコ爆弾は飛び散り、ピチビチョッと彼の真っ白のご自慢パンツに模様をつけた…ドン引く彼女。急にお通夜みたいな空気が二人を襲い、最後に彼が一言『あのゴリラ、まじシバきたい』ゴリラ相手のその何とも言えない切ない文章に次の日の夜寝る前まで深く笑わせて頂いた。