おとなのための科学の話(その3)
電場と磁場と電磁場と 08年5月5日
1 はじめに
電磁気の学習が困難である理由の一つは、電気や磁気の世界が目に見えないことです。それらを表現するための概念である電荷、磁荷、電場、磁場なども同様、 見えません。
それらを、電気力線、磁石、発電棒、方位磁針など見えるものを使って、実験という方法で把握していくのが電磁気学の本来の学習なのです。自然科学一般にいえることですが、理科の学習はモノの世界を、ものから直に窺うことであって、 この
ように書かれた文字からつかみ取ろうというのは、 本来、 無理なのです。
ですからここでは、 図形や記号や、 時には数式を使ったり、具体例をあげたり、モデルを用いたりなどなど、ものの代わりになるかもしれない「ことども」を多用して、私が理解している電磁気の世界を紹介してみようと思うのです。電磁気世界の理解は、 物理学者たちでも百人百様です。この冊子の読者のみなさんが、自分なりの電磁
気の世界が「見える」ような気になれることを願いながら、 話を進めてみます。
そのためには、まず、これまでに学んできた回路についての復習をしておきます。
2 回路
乾電池の形と大きさはいろいろですが、電圧はどれも同じで、 1.5V(ボルト)前後です。
導線で電池に豆球をつなぐと、 電気が流れて豆球がつきます。 このとき、装置は
電源の正極(+)−導線−豆球−導線−電源の(ー)
と、ひとつながりになっているので、 これを<回路>と呼びます。 (以下、 重要な概念・法則・機器などは< >で表現します)
豆球は電気を光に変えるはたらきをする道具です。 このように、 電気を光や熱や運動に変えたり、 電気で物質の種類を変えたりする装置を<負荷(フカ)>といいます。 抵抗と
いうこともありますが、電気の流れにテイコウするところではありません。電気の仕事場なのです。
回路がつながっていることを、回路が閉じているといい、 一部が切れていることを、回路が開いているといいます。 <配線図>は回路のつながり具合を表示する方法です。
3 電流
回路の導線に流れている電流の強さは、 回路を切った部分に電流計をつないで測ります。 導線の部分については、 この方法で、 どこででも電流を測ることができますが、
例えば、 負荷としてニクロム線を使っているとき、赤熱しているニクロム線の中の電流は、 導線の中の電流より多いと思っている子どもがいます。
<クランプメータ>という電流計があります。 手で棒を掴むように、 メーターで回路の一部分を囲むと、 その部分の電流が測れるというものです。このメーターで電流を測定する
と、 導線でも、ニクロム線の部分でも、電流が同じであることがわかります。 それだけでなく、 電池の中でも、電流の強さは同じなのです。ひとつながりの回路では、回路の
どこでも電流の強さは同じです。<電流不変の法則>とでもいっておきましょう。
4 電圧
土地の高さ(地位?)は、 海面を基準の0mとし、 そこから測って海抜何メーターと表示しますが、 電気回路の電気的高さ<電位>は、 アースした場所を電位の0Vとし、電位の差
を電圧と呼びます。 アースするということは、 回路の一部を、 別の導線で地球につないでおくことをいいますが、 実践的には、 電圧計の黒の(負の)テスト棒を触れたところを電圧0と
する、 という<操作的定義>が分かり易いと思われます。
乾電池の負極に黒のテスト棒を触れると、そこの電位が0になります。 赤のテスト棒を乾電池の正極に触れると、 そこの電位が1.5Vと出ます。 電位の差の 1.5V が乾電池の電圧です。
黒のテスト棒を乾電池のプラス極に触れると、そこの電位は0Vとなり、 赤のテスト棒を乾電池の負極に触れると、 そこの電位のー1.5Vが出ます。 電圧はその差の1.5Vとなります。
今、 述べたように、 アースした点を電位0Vとしますが、 実際に地球につながなくてもよいのです。 黒のテスト棒をつないでもよいし、 つないだと「思った」だけでもよいので
す。
自分が立っている所を高さの基準の地位0mと見て、 前山の高さを300m、後谷の深さを―50mと見るようなものです。 両者の高位差または高度差は 300―(―50)=350[m] で、 電気の話な
ら電位差は、 つまり、 電圧は350Vということになります。
5 仕事率
家庭電源の電圧は100Vです。 100W(ワット)の白熱電球には 100W÷100V=1W/V=1A つまり1Aの電流が流れています。 ワットというのは負荷(電気器具)が1秒間にどれだけ仕事をするか
という仕事率(パワー)を測る単位です。 仕事率とは仕事の速さ、能率、 のことで、電力ともいいます。電力は力でもエネルギーでもありません。電気器具は電源に並列につないで使う(ように作られている)ので、 どの器具にも、それぞ
れ100Vの電圧で電流が流れていて、 トータルの電流の大きさを予想して、 電力会社と契約がなされ、 配線用のコードの太さや、配電盤のヒューズの大きさが決まります。 仕事率
に時間をかけると仕事、 つまりエネルギーになります。 その単位は kW・h(キロワット・アワー)、或いは J (ジュール)で、 この電力量の多寡で電気料金が支払われます。
6 電磁石と発電
小・中学校で学ぶ電磁気では、 回路と共に、 電磁石と発電が重要な学習内容になってす。 *1
鉄釘にエナメル線を巻いて電流を流すと、 電磁石ができてゼムクリップのような鉄を吸いつけます。 エナメル線を巻いたものをコイルといいますが、 電磁石の強さは、 コイルの
巻数とそこを流れる電流の大きさで決まります。
鉄釘のような芯になるものがなくても、 電流を流したコイルは弱い磁石になっていて、近くに方位磁針を置くと、 針が動くのが見られます。 このようなコイルを<空芯(クウシン)>と
いいます。 木やアルミや銅の棒に巻いたコイルは、 空芯と同じ程度に弱くて、磁石としては役にたちません。 鉄芯などに巻いたコイルが電磁石で、こうすると磁石の強さは、 空芯の
数千倍から数万倍にもなります。
電磁気のもう一つの大切な学習は発電です。 トイレット・ペーパーの芯を5cmに切ったものに、 太さ0.2mmのエナメル線を1000回ほど巻いて空芯のコイルを作り、 これに発光
ダイオード(以後、 <LED>と書きます)をつないで閉じます。 棒状のネオジム磁石を、
素速くコイルに出し入れすると電流が流れてLEDが光ります。 これは回路に電圧が発生したということで、 このような発電方法を<電磁誘導>といい、流れた電流を<誘導電流>と
いいます。
7 磁力線
机の上の磁石に紙を被せて、 その上に鉄粉を撒くと、 鉄粉が幾何学模様を画きます。
この模様の線を<磁力線>といい、それをφ(ファイ)という記号で表します。 鉄粉が並んだのは、 鉄粉に磁力線の方向の力がはたらいたからです。 このような性質を持つ空間
を<磁場>といいます。
鉄粉がなくても、 つまり、 磁力線が見えなくても、 磁石のまわりには磁場があります。
磁石は常に磁力線という縞模様の「着物」をつけていると考えましょう。 磁石本体に磁場をも含めた全体を磁石とみるのがよいです。磁石・磁場はセットです。
強い磁石からは、 多くの磁力線が出ていて、磁力線の模様が濃い所は磁場の強い所です。磁石から遠くなると同じ面積を通る磁力線の数が少なくなり、 磁場は弱くなります。 だから、 磁力線φの濃さ、
つまり磁力線の密度で、 磁場Bの強さを表すことができます。
棒磁石の磁力線は、 N極とS極を結んでいるように見えますが、これを"磁力線はN極から出てS極に入る"と決めています。単なる約束ごとです。 磁石が磁力線を作るのと同じように、 電流もその周囲に
磁力線を作ります。 水平に置いた紙に、導線を鉛直に通して電流を流します。 紙に少量の鉄粉を撒いて軽く叩くと、 紙の上に同心円の磁力線ができます。 だから、電流とは、 電気の流れ
本体に、 周囲に付随する磁場を含めた呼び名、 と考えましょう。電流・磁場はセットです。
粘りのある液体に鉄粉を混ぜてよくかきまぜ、 この液体の中に鉛直に導線を通して電流を流すと、 鉄粉はバウムクーヘンのような模様になります。 磁力線は立体的に配位し、
電流に近い所は模様が濃く、離れると薄くなります。
8 分子磁石
磁石と電流は、 その模様は異なるにしても、 ともに磁力線を作ります。 同じ現象が二つの異なった原因によって起きるというのは、 考えにくいことです。
棒磁石を真ん中で二つに切ると、 片方はN極磁石に、 他方はS極磁石になるかというとそうではなく、 それぞれがN極・S極を持つ二つの磁石になります。 この磁石をまた二つに切
り、 更に二つに切り…と続けていくと、 小さい棒磁石がたくさんでき、 最後には、磁石の性質を持つ分子に到達するでしょう。 分子には電気をもった原子核と電子があるので、 これらの運動
による<分子電流>が磁石の性質を作っているのでしょう。
強い電磁石を作るために、 例えば、導線に100Aの電流を流すことは大変なことです。
電源を強くしなければならないし、 導線も太くしなければなりません。 しかし、 100回巻のコイルに1Aの電流を流すのは簡単で、 これで100Aの電流を流したのと同じ磁場ができます。 <重ね合
わせ>が効くのです。
分子電流についても同じことが起きています。 個々の分子電流が作る磁場は弱くても、
その方向・向きが統一されれば、 これが重ね合わされて強い磁石ができるのです。 何しろ分子の数は多いのですから。 分子磁石の<方向・向き>をこのように揃えることを磁化するとい
います。
*2
以上のことから次の結論が得られます。 磁力線を作るのは、 つまり、 磁場を作るのは電流であり、磁石や電磁石が持つ磁気の性質は電流の性質なのです。 磁気・電流はセットです。
電気の実体である<電荷>(電気のもと)は実在しますが、 磁気の実体とされる<磁荷>(磁気のもと)という概念は、 電磁気学習では登場しません。 磁気という性質を発現させるのは電流
であって、 磁荷ではありません。 棒磁石の端の磁気的性質が強い所にも、 磁荷は存在しないのです。 しかし、 電荷qのように、 磁荷mを考えると便利なことがあります。 電荷の流
れは電流ですが、 磁荷の流れを<磁流>と見ると、 磁石の動きで電流が起きることを、
磁流によって電磁誘導が起きると考えられます。 電荷と電気力線の単位はクーロンで、
磁荷は存在しなくても、 それを表現する磁力線の単位はウエーバーです。 mの評価はφで行います。 磁荷・磁流はモデルです。
9 電気力線
塩ビの棒をティッシュで擦ると静電気が起きて、 塩ビにはマイナスの電気がたまります。
磁石がその回りに磁力線という縞模様の磁場をまとっていたように、 電荷はその回りに<電気力線>ψ(プサイ)という縞模様の<電場>をまとっています。 電荷とはその周囲に存在する電場をも含めた概念
だと、 考えましょう。電荷・電場はセットです。
電荷からはその電気量に比例した電気力線が出ていて、 その密度は電荷から遠くなるに従って疎になっていきます。 つまり、 電気力線ψの濃さで電場Eの強さを表します。
写真はカスミソウの種子(もっと小粒のものがよいのだが…)を浮かせたサラダオイルに高電圧を加えて撮ったものです。 電気力線の模様が見られます。 磁力線に似ていて、 電気力線は
+の電荷から出て、―の電荷に入ると決めています。 これを、 磁力線のように電力線と呼ばない理由は、 既に電力(仕事率)という概念が、 別の意味で使われていたからです。
そこで以後、 紛れがないように、磁力線を<磁束線>、 電気力線を<電束線>と呼びますが、 従来の通りに読んでも結構です。両者をまとめて<力線>と名づけます。
ここで、場の強さについてまとめておきます。
磁束線φの濃さφ/A で磁場Bの強さを表し、電束線ψの濃さ ψ/A で電場Eの強さを表すことができます。 Aは面積で、 X/A はXという量の密度を表すことになります。 式で書くと B
=φ/A E=ψ/A
更に、場の強さに関して一つの提案をしておきます。
磁場を表す磁束線φと、電場を表す電束線ψはよく似ているので、前者を青色の線で描き、 後者を黄色の線で画くことにしましょう。こうすると、青色の濃いところでは磁
場Bが強く、黄色の濃いところでは電場Eが強いことが分かります。 つまり、 場の強さを「力線の密度」の代わりに「力色の濃度」でイメージしようというのです。
黄色の濃い所ではテスト電荷(場をチェックするための電荷)が大きな力を受け、青色の濃い所では方位磁針が強い力を受けることになります。練習として、 点電荷の周囲の電場や、 U型磁石の磁場の強さ
を力色でイメージしてみましょう。 力色はモデルです。 筆者は力線もモデルだと考えています。 力を受ける方向・向きに関しては、 力色は無力です。 *3
10 速度と電流
電車がtという時間にrという距離を走ったとき、 速さは v=r/t となりますが、 正しくは、 位置の差を時刻の差で割って v=△r/△t と書き、 "デルタr バイ デルタt" と
読みます。 △は差という意味で、 バイ(by)は割るという意味です。 距離の時間的変化を速さ(速度)と呼びますが、 あくまでも、 これは平均の速さです。
短い時間に於ける平均の速さは v=dr/dt と書き、 "drdt(ディーアールディーティー)"
と棒読みにしてバイ も省略します。 時間dtを極く短くすれば、 瞬間の速さになります。
ちなみに、 自動車はどんなに短い距離であっても、 どんなに短い時間においてでも、
法定速度をオーバーするとスピード違反になります。 <速度は瞬間の概念>です。
dr/dt は更に省略して r' と書き "アールドット" と読みます。 一般に X' は、 Xという量の変化の速さ dX/dt 表します。 前述の密度 X/A も狭い空間で扱うとすれば dX/dA と
なります。
11 再び電流
ここでは先に述べた速度の概念を思い浮かべながら、読んでください。動いている電荷qの速度を電流iといいます。 導線中でdtの時間に電荷がdqだけ移動したときの電流iは i=
dq/dt
qから出ている電束線ψ(q=ψ)を使って表せば i=dψ/dt
ψの濃さで表現される電場E(E=ψ/A)を用いると i∝dE/dt
つまりqやψやEの時間的変化を電流と呼ぶのです。 比例式になるのは定数が入るからです。
電荷qからは、ψは水平にだけではなく、斜め上下にも出ていますが、上下は対称になっているので、合成されると鉛直成分は0になってしまって、 水平成分だけが生きてきます。 だから電場Eは水平部
分だけを考えればよいのです。
先に見てきたように、 直線電流の周囲には円形の磁束線が存在します。 つまり円形の磁場Bができていました。
これを力の場で考えてみましょう。 E-B図で見られるように、 導線内ではqが速度vで走っているので、 電場Eも同じ速度vで走っています。 そうするとEがBに変貌するのです! 自
転車のスポーク状のψが軸方向へ走ると、同心円状のφになる、 という譬えはどうでしょうか。
ここでは、 一平面上で論じていますが、 実際には立体的に起きているのです。授業の後で一人の生徒が言いました。 "栗のいがのような電束線ψが、走るとバウムクーヘンのような磁
束線φに変わるなんて!"
電流でいえば i ∝ rotB と書き、 "電流iはそれを囲んだ「まーるい」磁場Bをつくる"というのです。 rotBはローテイションBと読みます。
rotB ∝ dψ/dt rotB ∝ dE/dt と書いても同じことです。 もっと大胆に書けば
E×v ∝ B <Eが走ればB>になる、 ということです。
*4
12 磁流
LEDをつないだ空芯コイルに、棒磁石を出し入れするとLEDが点灯しました。 これを力の場で考えてみましょう。
一巻きコイルに棒磁石のN極を出し入れしたと考えます。
電気に関する電荷qのような、 磁気に関する磁荷mは存在ないことを先に述べましたが、
mはモデルとしては有効なのです。 運動する電荷qが電流iになるように、 磁石が運動するときには、 磁極にある磁荷mが磁流jを作ったと考えてみます。 B-E図のように平面で考
えれば、 mから出た磁束線によってできた磁場Bは、 磁荷mと同じ速度vで運動して、 電場Eに変貌します。 これによってコイルのLEDが点灯するのです。 電流の場合のように書けば、
j ∝ rotE rotE ∝ dφ/dt rotE ∝ dB/dt B×v=E
*4
この関係を自分なりの言葉で表現してみましょう。 例えば
"磁石が動くと閉じた回路に電流が流れる"
"<Bが走ればE>になる"
"青色のφが運動すると黄色のψに変わる"
"磁束線を切る(走って見るの意)と電場が見える"
最後のものはファラデーの表現ですが、 これをもう一度、 声に出して読んでみてください。 そうすると、
"電束線を切ると磁場が見える" という表現が浮かんできませんか。
以下は、 授業での生徒の言葉です。
"磁場が動くと電場ができるということを学んだとき、 友達が「では、 電場が動くと磁場ができるんじゃないか?」と言った。 このことは誰でも気づきそなことだけど、 僕は言われるまで気
がつかなかった"
"磁場が走る→電場 なので、 走らないと化けられない磁場は電場の子分かと思っていたら、 電場が走る→磁場 もなり立つのですねえ。 従って、 晴れて「電」と「磁」は兄
弟分となりました"
電場と磁場はセットです。(授業の順番としては、磁場を電場より先に学習しました)
止まっている電車と走っている電車では景色が変わるのです。 <観測座標>によって場が変わるのです。
13 磁石ブンブンごま
"回路を貫く磁束線の数に変化が起きると、その変化の速度に比例した起電力が回路内に発生する" というのはファラデーの法則です。<起電力>は電場Eのシリーズ(直列)、
と考えてもよいでしょう。
dφ/dt ∝ E ∝ V ただし V=Er (rは距離)
*5
Eを大きくする方法は、 dφを大きくするか、 dtを小さくするかのいずれかです。
裏表がNSのタブレット型磁石を、 手で回そうとすると、 1秒1回がほどほどですが、
これをブンブンごまにすると、 1秒に10回以上も回転させられます。 こうするとコイルに発生する電圧は10倍以上になるということです。
中心に小さい穴がある左右NSのタブレット型磁石なら、 穴に棒を刺して磁石ごまにすることができます。 この磁石ごまをコイルの側で回すと、 大きい起電力が得られます。
14 電磁場
電磁石に交流を流して変化する磁場Bを作ってみましょう。
磁束線φが変化すると、これに絡んだ電束線ψができます。
コイルがあれば、このψによる電場Eで、LEDが点灯します。
電源には交流を使ったので、qは加速度運動(単振動)をしています。
従ってできた電場Eは、 定常電場ではなく変動電場です。
LEDは変動電場で、 点滅(LEDは逆向きの電流では点灯しません)しながら明るさも変化しています。
コイルがなくても電場ができることに変わりはありません。
だからψとφ、 EとB、 黄縞と青縞は互いに原因・結果となって変化し、 その変化が速いと、次々に押し出されて空間を伝わって行きます。 これが電磁波です。
この電場・磁場の変化の速さ、 つまり周波数は、 TVの波ではおよそ108Hz、 可視光では1014Hz程度です。 こうなると創り出したオリジナルの電荷や磁石には、 もう関係ありません。
(108は10の8乗、1014は10の14乗)
曾て、 北極星を示そうとして、 空を照らした懐中電灯の光は、 スイッチを切った後でも、 電灯が壊れてしまった今でも、 宇宙空間を北極星に向かって走り続けています。
1895年にマルコニーが発振した電磁波は、 地球の情報を乗せて、 110光年の先を走り続けています。 これが現在の地球の大きさに相当します。だから、 何やら情報らしい電磁波
を捕まえたどこかの宇宙生物は、 地球の本体を発見する契機になるのでしょう。
*6
電場・磁場・電磁場は実体であって、 それ自体で存在するのです。
15 最後に
すべての物質は原子でできていて、
原子は重力と電磁気力のはたらきで結合・分離を続けて、
分子に、有機物に、 生物に、 人間に進化しました。
だから、 人間は電磁波を纏った原子集団そのものなのです。
そして更に、 その人間たちは、 これらの力を有効に制御しながら、
DNAを解析し、 コンピューターを創造し、核エネルギーを開発しました。
磁石を動かすと電場ができる、 という電磁気の基本法則に関しては、 何故という発想は意味をなしません。
そうではなくて、時空にそのような性質があることを発見したことに感動し、 そして、
電場と磁場が交錯する千変万化の色模様を鑑賞しながら、 更に更に、 自然の電磁気的環境に関心を広げていきたいものです。
読者のみなさんが、電磁場の存在をどう受け止められたか、ご意見・ご感想をお聞きしたいところです。
備考
*1 電磁石はE→Bの学習であり、 発電はB→Eの学習であったことを確認してください。
*2 方向・向き。重力は鉛直方向・下向きにはたらき、 ロケットは鉛直方向・上向きに打ち上げられます。 分子磁石は同じ方向に揃えられるだけではだめで、 同じ方向・同じ向きに揃
えられないと、 強い磁性が現れません。
*3 磁場Bを青色で表現したのはBlueのBに依り、 電場Eを黄色で表したのはYellowのEに拠ります。 これはここだけでの話なので、 念のため。
*4 B×v=E @ E×v∝B A @が等号で、Aが比例の記号である理由。
場を表現するのに二通りの方法があります。電場はEとD、磁場はBとHです。 以下、
参考までに…。
Aの関係は等号で書くと D×v=H A' となります。
ちなみに、 両者の関係は D=εE B B=μH C で
@ A'B C から v2εμ=1 D (各自変形を)
注:v2はvの2乗 10-12は10の-12乗
ε=8.854・10-12[F/m] 真空の誘電率
μ=12.57・10-7[H/m] 真空の透磁率(単位のFとHは省略)をDに代入すると
v2×8.854・10-12×12.57・10-7=1
v=3.00・108[m/s]=c cは光速度です。 (各自計算を)
*5 重力場と電場を比較してみます。
重力場gでは 質量Mにはたらく力は Mg 場のエネルギーは Mgh
電場Eでは 電荷qにはたらく力は qE 場のエネルギーは qEr
電気力の場合にはErを電圧Vといいますが、 重力の場合、ghを「重圧」などという呼び方をしません。 質量や電気量の単位の量が持つエネルギーということで<ポテンシャル>と
呼べばよいのです。
*6 地球の実体の直径は13000kmほどなので、 これは 13000[km]÷300000[km/s]=0.043[s]
すなわち 0.043光秒です。 電磁波をまとっている地球の大きさを100光年とする理由はこういうことです。
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