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原発事故から子どもを守る学習会
群馬理科サークル 野口 朋代
石橋 峯生
3月末, ある保育園から電話があった.
「原発事故の報道を毎日見ているが,何が起こったのか,今,どうなっているのか,どうもよくわからない.放射能というモノも理解できない. 子どもは放射線の影響を受けやすいというが,
どのように守ればよいのか, 日々の生活(保育)をどうすればよいのかわからなくて困っている. それで学習をしたい.」 という内容だった. 保育士さんの疑問や不安や心配が, ひしひしと伝わってきた. それは, 私自身の問題でもあった.
原発について私は素人で, よくわからないのだが,
子どもを守るために行動をおこした保育士さんたちと一緒に学習しようと思った.
別の保育園からも同様の電話が, つぎつぎにあり, 学習会は,
現在12回行われた.
私たちを含むすべての動物, 植物のからだをつくっている多種類の原子,
そして空気・水・海・山・岩など生物が生活する環境をつくる多種類の原子, これらは地球(そして宇宙)に存在するすべての原子=113種類の中で軽い原子のなかまである. 一方, 放射性物質をつくる原子は, もっとずっと重い原子である. だから, すべての生物は,
その長い歴史の中では、殆ど出合ってこなかった原子なのだ.
植物は, 生きるエネルギーをつくるために必要な水や肥料を求めて根をつくり,
光を求めて茎や葉をのばす. そしてからだの表面から,
光合成に必要な二酸化炭素, 呼吸に必要な酸素をとり入れる.
生きるために必要な物質を必要なだけ摂り込む. 動物も同じだが,
光合成はできないから, 植物が作ったでんぷんや糖やタンパク質を摂り, 水を飲み, 空気中や水中から酸素を吸い込む.
みんな, なんとなく身体に入ってきたのではなく.
必要なものを必要な分だけ摂り入れて生きる. また,
生物の長い歴史の中で, 身体に害になるものに対しては拒絶反応を起こすように進化した.
ところが, 放射性物質(原子)は必要なものではなかったし, 出合ったこともなかったから, 全く感じとることができないので,
身体は拒絶反応どころか無防備なのだ. だから,
放射線に出合うと, 出合った部分の細胞又は細胞の部分(DNA)が, こわれる.
深刻なこわれ方をする.
このことを理解してほしいと思った. それには, 113種類の原子の基本的な構造と, 構造のちがいがもたらす原子の周期性を学習すれば理解できる.
そして, 自分で判断できるようになる.
例えば, 私たちの身体に欠かせないカルシウムと,
私たちの身体に入るとガンをひきおこす放射性ストロンチウムは, 原子構造がよく似ており, そのために性質が酷似しているので(原子の周期表では同じ2族で, 上下に並んでいる.)身体は区別できずに,
カルシウムを摂るつもりで放射性ストロンチウムを摂ってしまうのだ.
『広島(ウラン), 長崎(プルトニウム)の原爆とはちがって,
原子力発電は安全なのだ. 万一事故が起こっても,
“5つの壁”で放射性物質を閉じ込めるから, 放射能が外にもれることはない』と, 私たちは聞いてきた.
つまり, ウランを焼きかためたペレットにして(1の壁), 中性子があたっても劣化しないジルコニウム合金で閉じ込めて燃料棒をつくり(2の壁), 16cmの厚さの鋼鉄製の圧力容器に閉じ込め(3の壁), さらに3cmの厚さの鋼鉄製の格納容器に閉じ込め(4の壁), 最後に1m〜2mの厚さのコンクリート製の建屋に閉じ込めた(5の壁).
ところが, 地震と津波で電源が失われ, 水で冷やせなくなったら, 制御棒が入り, ウランの連鎖反応は止められたものの, 原子炉内にある, ウラン連鎖反応によって生じたヨウ素, セシウム, ストロンチウム,
プルトニウム等の, 大量の放射性物質は,
熱と放射線を出しながら崩壊をつづけ, 3000度を越える高温になったのだろう. 1852度まで融けないジルコニウムが融け落ち(メルトダウン), 格納容器まで穴をあけた.
ウランやプルトニウムをコントロールすることなど,できなかったのだ. 本質的には広島・長崎の原爆と同じなのだ.
或る保育園での学習会
1.はじめに
学習会は,学習内容を自分の中に明らかにすることからはじめました.
―@不安なこと.A今日の学習会で知りたいこと.Bたくさんな情報の中で,放射性物質の中で子どもたちとどう生きていくか―を書く.
2.学習会の資料(或る保育園で)
@放射性物質 (放射性ヨウ素131, セシウム, ストロンチウム, ウラン, プルトニウム…)と放射線の学習―周期表を資料に,―原子の模型を作って―
A原子と人間の生活,進化,生き物,私たちの体をつくっている原子 ― H,C,O,N,NaCl…原子の構造
Bウランの研究の歴史, 科学者たち
ウラン・プルトニウム→原子爆弾→軽水炉→原子力潜水艦・原子力空母→原発
C福島原発事故 資料 ニュートンの写真
D東電が最近発表したもの
1号機 メルトダウン→メルトスルー
3号機 プルサーマルを
4号機 使用済燃料プールの崩壊熱を
E放射性物質は空へ,海へ
―風によって流れる→水たまりや下水にたまり易い.―放射性物質の動きを知る―
F或る保育園の,園庭の放射線量を調べた資料 Bq/kg―1kg当たりの土が出す放射線の数(ベクレル)―場所によって異なる―ことを知る.
3. まとめ
最初に書いた,
@不安はなくなったか.A知りたいことは明らかになったろうか.B子どもたちと確信を持って生きていけるだろうか―自分の言葉で書いてもらいたかった.―けれど,時間がなかった.―学習会で不安がなくなったり,確信が持てたりするものではない.―しかし,放射線物質のある中で,生きていかなければならない.―保育士と,父母と力を合わせて,子どもを放射能から守りぬく実践を通して不安は解消され,確信が持てるようになる.―のだと思います.
共に学んで1
と思う(もちろん現地付近は大変だと思うが).
いまだ収束の道が見えない中でどの様な事を気にして, 気をつけていかなくてはならないのでしょうか?
将来的に患者が増える傾向は, ちがいないのでしょうか?
「放射性物質は,飛散している」と私も思います.
半径10km, 20kmなんて全く意味ない―言っている意味(放射性物質が飛散している所と違う)は分かります. ―が
最近, 他の意味でハッとすることがあります. 私たちは, メルトダウンを知ったのはつい最近のことです. しかし, 東電や政府は知っていたのではないか. メルトダウンがはじまれば, チェルノブイリのように炉心が格納容器ごと爆発する可能性がある.
それで3km―10km―20kmと,
住民を避難させた―のではないかと考えるとゾッとします.―避難は必要だった.
―これは恐ろしいことです. ―そして,
その可能性は, まだまだ消えていないということです.
現在も事故は進行中で, 避難した住民は, 何時帰れるか,
全く見通しがたたないでいます.
収束の道は全く見えません. ―放射性物質のことをよく知り, 子どもを守ることです. ―今日学習しましたが, ―放射性ヨウ素は子どもたちに. ―発達盛りの子どもは甲状腺が求めます.
―セシウムは,アルカリ金属(1属)で, 周期表カリウムの下で, ものすごく水によく溶けて, 子どもの体中をかけまわります. ―ストロンチウムは2属でカルシウムの下. 骨にくっついて放射線を出し続けます.
子どもたちの体の中に入る―内部被爆―は, 体の中で放射線を出し続けます.―この放射線から子どもを守ること―です.
そのためには内部被爆をさけることです.―できるだけ少なくすることです.
砂遊びや土遊びの時,口に入れないこと,遊んだ後は,よく洗い流すこと,水たまりになる所では,
特に注意すること―セシウムが流れてたまっているから―プールも同じです.また水を流す時,最後のところを特に注意すること.
洗濯物を取り込む時は,子どもを近づけないこと.自分でも吸い込まないように注意すること.
食べ物は―外に付いているか,中に取り込んでいるか―をよく考えて.それをどう取り除くか考えてください.―取り除いた結果,その放射性物質はどこへ行くか, どこにたまるか,―まで知ることです.
いつも,保育士と親で―放射能から子どもをどう守るか―を考えてください.
将来,ガン患者は増えます.ガン患者だけではないと思います.DNAの破壊は子どもたちに何をもたらすか図り知れないものがあります.
これは人類の課題, 地球上の全ての生き物の課題です.
共に学んで2
今後,爆発が起こることもあるのか?
爆発後の放射量や汚染水が海水に流れてしまった場合,食べ物への影響はどうなのか?
今の状況をくい止めることはできるのか?
爆発が起きることもあります.しかし,今は水につかっていると思います.
最近の東電の発表では,原子炉内の燃料棒は崩れ落ち(メルトダウン),厚さ16cmの鋼鉄を融かして格納倉庫の底に落ちている(メルトスルー)―と言います.
これは最も危険な状態だと思います.
現在は, 水の中にあるようです. 外側は固まっていると思います. しかし, 中は核の崩壊が続き,
放射性物質と崩壊熱を出し続けます.
原子炉建屋やタービン建屋の地下に高濃度の汚染水があふれています. ―この除去が大問題です.―そのための機械を作って(―油除去(日立)―セシウム吸着(アメリカ)―その他の放射性物質沈殿(フランス)―塩分除去(東芝)―)作業を始めましたが, 5時間位で止まってしまったようです.
この機械がうまく作動しても, 放射性セシウムを吸着させたゼオライトや沈殿させた汚泥の行く場がありません.―高濃度の汚染水の除去は, 急がねばなりません. 汚染水は, 海に流れ出ています.―海に広がります.
―小魚の出荷制限がありました.―海底に沈みます.―コンブなど海草類に蓄積します.―それを食べる海の生きものに広がります.―広がっただけ薄くなりますがなくなりません.―原発事故は収束していません.放射性物質は出続けています.―死の灰は増え続けます.参加者の中に,下水処理場ではたらいている人がいました.―そこに放射性セシウムが集まってきます.肥料にしたり,土木建築材にしたりするようです.―が,引き取り手がなく.野積みになって行き場がないようです.―こんなに離れた群馬でも―です.
今の状況をくい止めることはできるのか― 一度出た放射性物質は無くなりません.放射線を出し続けます.何百年も,何万年もです.
今は,これ以上出さないようにすることです.―発電所内に閉じ込めるしかありません.―それが,まだできないでいます.
共に学んで3
散歩に出かけるときは,帽子をかぶり,長ソデシャツを着用し,帰園した時は全部脱いで着がえます.マスクはほとんど着用していません.
放射能対策としてはどうでしょうか?
現在、桐生地区は,それほど高くないとききます.00ミリシーベルトとか?…
安全と危険の区別がよく分かりません.
野地の野菜や畑作りとか,どう考えたらよいでしょう?
放射性物質は水に激しく溶けて, 動き易い―ことを学びました.
空を飛んできた放射性ヨウ素やセシウムは,地表に落ちて流れます.―目に見えない放射性物質の姿が見えるようになることが大事です.園庭のどこに集まるかを知ることです.
或る保育園で測った.―ヨウ素131とセシウム137―1kgの土から何ベックレルの放射性が出るかを調べた.―少なかった所, 砂場,
ヨウ素30Bq/kg, セシウム80Bq/kg―多かった所, 園庭,
ヨウ素169Bq/kg, セシウム170Bq/kgでした. ―これは,
遊びや畑作りに危険な数値ではありませんが, 園庭でも場所によって異なること,(5倍から10倍位異なる)を知るべきです.―放射能対策は,
職員と父母と知恵を出し合ってください.
―0.0マイクロシーベルトでしょう.
―ある親は言います.―放射線量について,県で発表の数値は(ほぼ平常値)は,モニタリングポスト,地上20mの地点で計測している. 実際は地上付近はその6倍〜20倍で, 子どもは被爆しやすい.―と, その通りだと思います.
安全と危険の区別はつきません. 放射線には, どこまでが安全で,
どこから危険だということがないのです. ― 一度体内に取り込まれた放射性物質は, その体内で放射線を出し続けるということです. ―そしてそれは, 生物の一番大事な細胞内のDNAを破壊するということです. ―だから, 少しなら安全だということはないのです.―ただ, 細胞は何兆も何十兆もあります.
―その全てが生きています.再生します.たたかっています.―それで,どこかで発病するか,誰が発病するか分からないのです.
原発の事故で,日本に生息する全ての生物―特に若芽や卵や子どもたち,花や母親たち―が放射能に曝されている―それとたたかっている―ことを知るべきです.
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