理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

高校生の物理 力1   万有引力    M-97   No292        2011年6月16日(木)  
 
先生 地球上ではどんなものでも、落ちて行くことを知っているね。
和美 お金でも、エンピツでも、石でも、水でも、リンゴでも、…
一平 釣り落とした魚でも。ネコでも、和チャンでも、先生でも、…
和美 一平くんは落ちないの? 
一平 要するに、なんでもかんでも落ちるんですね。
和美 空気はものだったけれど、落ちて行かないね。
一平 下にいっぱいつまっているから落ちたくても、落ちられないんじゃないかな。
和美 そうか。水の中では、水は落ちられないのと同じなんだ。
一平 ゴム風船は落ちないで、逆に上がっていってしまうね。
和美 水に浮く木のブロックの場合には、水の方が木より重いので、木が浮いてしまったんだけれど、これと同じように、風船より空気の方が重くって、風船が浮いてしまうんじゃない。
一平 風船より空気の方が先に落ちちゃうんだ。
先生 風船の方に、上へ行く優先権があるのではなく、空気の方に、下へ行く優先権があると思えばいいだろ。そう考えると、空気にも風船にも重さがあることになるね。
和美  それはそうです。空気も風船もものなのだから。
先生 それでは“ものは何でも落ちていく”と言ってもいいかな。
和美 いいと思います。
一平 そして、ものが下へ行くというのは、地球がものを引いているからですよね。
先生 そうだね。“ものには下へ行く性質がある”と考えもあるが“地球がものを下へ引っ張っている”と言った方がよさそうだね。
一平 引くというのは、力で引くという意味でしょう。
先生 そうだね。その力を重力という。
和美 ものは何でも落ちていくというのは事実だから、それはいいんだけど、そのものに力がはたらいているというのは、見えないし、分かりづらいことですね。
先生 ものにはたらく重力は、肉眼では見えないけれども、心の目で見えるようにしたいね。
一平 力を矢印で描くんでしょ。ものに力がはたらいているのが見えるように。
和美 軽いものには小さい矢印を、重いものには大きい矢印を描くんですね。
一平 地球は、大きいものは大きい力で、小さいものは小さい力で引くんですね。
先生 そうだよ。ただし、大きいものという時には、それは物体の量のことで、重さが大きいということは、地球が物体を引く力が大きいという意味で、重さに比例した力を矢印で描こうというのだ。
一平 ちょっと待って…。何だか変だよ。重いというのは地球がそれを引く力が大きいということでしょ。だから、重いというのは力のことでしょ。
先生 地球は何を引っ張るの?
和美 何でも引っ張るんです。
先生 ものを引っ張るのだよ。
和美 そうですよ。
先生 ものの量がたくさんあれば、地球は大きい力でものを引っ張るんだろ?
一平 それじゃあ、重いというのは、ものの量がたくさんあるっていうことなの。
先生 ものの量がたくさんあると、地球がそれだけ大きい力で引っ張るのだから、人がそれを持ち上げるのが大変で、「重い」っていうんだ。
和美 それでは、重いというのは<ものの量が多いということ>と<持つのが大変>ということの両方の意味があるっていうわけ?
先生 そういうことだね。ものの量が多いというのを<質量が大きい>とか<質量が多い>とかいって、持つのが大変というのを<重力が大きい>というんだ。1キロには、1キロの物体という意味と、1キロの力という二つの意味があるのさ。地球上では1キロの物体には、1キロの力がはたらいていることになる。
一平  これまで気楽に「重い」と言ってきたけど、そういうことだったのか!
先生 それでは、もとの力に戻って、当分の間、矢印を描くときには、1キロの力は1センチの矢印で表現することにしよう。
和美 5キロの物体には5キロの力がはたらいているので、5センチの矢印を描くんですね。
一平 その矢印はどこから描くんですか。
先生 ものの真ん中辺りから描くことにしよう。そこから、地球の方へ、つまり、矢印の頭を下に向けて描くんだ。
一平 空気なんかどこから描いていいかわからないな。
先生 どこまでの空気を、考えるかで矢印の位置や大きさが決まるね。
和美 実際には描かなくても、頭の中で描けばいいんでしょ。
先生 その通りだ。
和美 周囲の物にみんな矢印を想像するの大変だ。世界が矢印だらけになっちゃうよ。
先生 “ものを見たら重力の矢印を考える”ことに馴れたいものだね。このとき、大切なことがあるんだ。それは、できるだけ一つのものから一つの矢印を描くということだ。
一平 それどういう意味ですか…。
先生 例えば、茶碗の湯についていえば、茶碗の湯を一つのものと考えることもあるが、当面、茶碗と湯を別のものとして考えて、茶碗から一本の矢印を、湯から一本の矢印を描こうというのだ。
和美 そういうルールなんですか。。
先生 というより、それなりのメリットがあるんだね。
一平 どういうことかというと…。それは後で…ということですね。
先生 さて、地球はすべてのものを引っ張るといったけど、地球は太陽を引っ張っているかな?
和美 地球が太陽を引っ張るんじゃなくて、太陽が地球を引っ張るんじゃない。太陽の方が大きいんだもの。
一平 さっき、“大きいものは大きい力で、小さいものは小さい力で”というのがあったろ。だから、地球は大きい太陽を大きい力で、太陽は小さい地球を小さい力で引いていることになるんじゃない。
先生 なるほど。地球は太陽を引いているというだけではなくて、太陽とも引っ張り合っているということだね。地球や太陽だけではなく、物体と物体も、お互いに引きあっているので、これを<万有引力>と呼ぶことにした。
和美 了解!地球と太陽だけが特別なもの、ということないものね。ノートと消しゴムも引きあっていて、リンゴと地球も引きあっていて、…
一平 ぼくと和チャンも引っぱり合っているんだ!
和美 ちっともそんな気しないんだけど、魅力がないっていうのかな?
一平 チェッ! 
先生 さっき、一平くんが言った中に一つ誤りがあるんだ。それは“地球は大きい太陽を大きい力で、太陽は小さい地球を小さい力で引く”というところだが、地球と太陽が引きあう力は大きさが等しいんだよ。
一平 万有引力の説明と矛盾しませんか? 
先生 そういうことはないよ。地球と1キロの物体は1キロの力で引っぱっていて、地球と2キロの物体は2キロの力で引きあっている。 太陽と1キロの物体が、仮にAキロの力で引きあっているとすると、太陽と2キロの物体は2Aキロの力で引きあっている。
和美 地球より太陽の方が重いので、同じ1キロのものでも、太陽の方が大きい力で引っぱるっていうわわけ?Aキロの力は1キロの力より大きいわけですね。
先生 1キロのものと1キロのものが1の力で引きあうと考えればよい。力の単位は別に考えるとして。
一平 そうすると、1キロのものと2キロのものは2の力で引きあい…
和美 2キロのものと3キろのものは6の力で引きあうことになる。
先生 図に描いてみれば分かり易いよ。
一平 重ね合わせっていうんですよね。
先生 まあ、そんなところだ。数式の方が考えやすいかな。質量mキロの物体と、質量Mキロの物体は、m×Mに比例する力で引き合うことになる。
一平 “大きなものからは大きな力を、大きなものには大きな力を” ということ。
和美  “大きなものからは大きな愛を、大きなものには大きな愛を” ということ!
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