理科実験を楽しむ会
高校生の物理  電磁気 (1)回路  E-153   No324   2011年10月6日(木)
 
和美 電気の回路について理論化したいんですが…
先生 藪から棒に理論化といわれると…、その経緯を話してごらん。
一平 小学校のときから電気の回路の勉強をしてきたので、回路のつくり方は分かっているつもりです。そして、中学へ行ってからは、オームの法則をやったでしょう。先生から教わりましたね。
和美 それに、オームの法則の計算もできます。高校入試の受験勉強もしたことですし…
一平 高校でも電気の勉強をしたんです。だけど、高校の電磁気は場のことが中心で、回路のことは自明みたいにパスなんです。電気実験のための回路を組むことは自由にできるんですが、もうひとつ、心もとないところがあって…
先生 なるほど。それで回路を理論化したいというんだね。では、きみたちが知っている回路のことについて話してもらおうかな。まず、回路って何かな?
和美 電池と抵抗を、導線でひとまわりにつないだものです。
一平 ここは先生から習ったんですから問題はありません。高校では、電池は電源、抵抗は負荷っていうんです。
先生 負荷のことを小学校では仕事場って習ってきたといったね。
和美 そうです。仕事場で電気に何かをやらせたんです。熱や光を出させたり、モーターを回させたり。
一平 電気分解もあったし。
和美 仕事場のない回路をショート回路というんでした。
先生 そうすると、電気の回路というのは、エネルギーの変換装置なんだね。電気のエネルギーを熱や光や運動や化学変化に変える…
一平 はい、そういうことになりますね。
先生 では、次に、抵抗の直列つなぎ、並列つなぎについて、どうぞ。
和美 直列というのは回路が一続きで、枝分かれしないことです。例えば抵抗が二つの時には、抵抗と抵抗を直につなげて、その反対側の両端に電圧をかけます。並列というのは一つの電源で二つの回路を作ることです。
一平 この場合は、導線の部分を共通にしてもよいのです。同じパイロットランプなら、どれも同じ明るさにつきます。
先生 2個の並列の場合には、一つずつのパイロットランプをつけたときの明るさの和の明るさになるのかな。
一平 電池の内部抵抗がない場合は同じになります。だから、蓄電池を使った実験なら、そうなります。
先生 内部抵抗のところを説明してごらん。
和美 同じパイロットランプを2個並列につなぐと、電池には2倍の電流が流れることになります。しかし、電池の中にも抵抗があるので―これを内部抵抗というんですが―電流×内部抵抗だけ電圧が下がって、有効に使用できる電圧は低くなってしまいます。
先生 概ねよろしい。
和美 並列にたくさんの抵抗をいれると、電流が多く流れて、ショート回路みたいに電池を悪くします。
一平 家庭の交流回路だと、ブレイカーが上がってしまいます。
先生 電池の性質は電圧だけでなくて、その内部抵抗にも関係するから、注意しないといけない。電圧は大きいのに取り出せる電流は小さいということもある。そういう点では、バッテリー(蓄電池)は大きい電流が取り出せて便利だ。もっとも、長い時間、大きな電流を取り出し続けると電池を痛めるがね。電池の内部抵抗を考えた回路では、電池の記号の間に、小さな抵抗の記号を入れよう。これが電池の内部抵抗だ。ここは無駄な仕事場になるということだ。
和美 化学でボルタの電池を作りましたが、電圧は1.5V近くも出ているのに、パイロットランプは点灯しないのと同じですね。
先生 そういうことだね。化学電池の溶液は抵抗が大きいからね。
和美 それからですネ。電流というのは電子の流れということで、イメージできます。抵抗というのもそれを邪魔するものですから、これもイメージできます。ところが、電圧というのがイメージできないんです。
一平 水圧みたいなもんだというんですけど…
先生 電圧を作りだ出すのは電池だね。だから、電池がどんな仕事をしているかがわかればいいんだろ。電池というのは+極から電子を抜き取り、その代わりに同じ量の電子を
−極に押し出しているんだよ。
和美 自由電子ですね。
一平 自由電子を持つのは金属でしょう。
先生 そうだ。
一平 +極は乾電池の場合には炭素棒ですけど。
先生 炭素棒も金属みたいなもんだ。
和美 そういえば、炭素棒は金属光沢をしていますね。                        
先生 金属は+イオンの回りに−の電子が游ぎまわっている構造なので、そこから電子が少なくなれば原子やイオンは+に帯電し、電子が多くなれば−に電荷を帯びる。しかし、移動する電荷は−であることを忘れないように。
和美 そうすると、+に電気を帯びている所は電子不足で、電子をもっと吸い込みたい状態になってえいるのね。
一平 −に帯電している所は電子が多すぎて、その反発力で、電子をどこかへ移動させたい状態にあるわけだ。
和美 だから、電池の+極と−極をつなぐと、電子が−極から+極へ移動する。
先生 電圧の高低というのは電子密度の大小と考えればよい。
和美 電子の多い−極の側から電子の少ない+極の側へ電子が流れるんですね。そうすると電子はすぐ平均化されてしまいませんか。
先生 それを直ちに復活させるのが電池なのさ。電池ではいつでも+極側から電子をむしり取って−極側へ押し込んでいるのだけど、回路が閉じていないときには、一定以上に電子を移動させようとすると、+極からも−極からも反発力がはたらいて、それ以上に電子を移動させることはできなくなる。
和美 両電極間に電子を移動させる力の大きさが電圧なんですね。
先生 力でなくて仕事だけど…。電子に力を加えて、これを移動させるのだから。
一平 両極をつなぐと電子の運動が起きるというのはポテンシャル・エネルギーみたいな感じですね。
和美  それ、どういう意味?
一平 地球上で、高い所にあるもの、つまり、ポテンシャル・エネルギ−をもっているものは、離してやると落下運動を始めるように、電池の場合も両極をつないでやると電子が運動を始めるからさ。
和美 でも、落下運動の場合はどんどん加速するけど、電流の場合は加速しないわね。
先生 水の中の落下運動を考えればいいんじゃないか。
和美  ああ、そうか。回路には抵抗があるから…
先生 両方とも直ぐに終速度に達してしまうと思えばいい。
和美 でも、それじゃ、電気抵抗がなければ加速するのかしら。
先生 回路の中には電子が詰まっていて、全体としてローテイションしているのだった。だから、アッという間に定常流になってしまうんだ。
一平 先生。自由電子はお互いに反発しているんだから、電子過多の−極を広くしてやるとたくさんの電子がたまるんじゃないですか。
先生 電子をたくさんためようとすると、+極はうんと電子不足になって、電子移動の仕事を妨げるぞ。
一平 それじゃあ、電子をたくさんもぎ取れるように、+極の面積も広くしてやれば…
先生 なるほど。それはいい考えだ。面積の広い電極を向かい合わせにすればよい。
一平 そうか。そうすると、−側の余分の電子は+側の+イオンと引っ張りあうので、電子を移動させる仕事が楽になるっていうわけだ。
先生 それがコンデンサーだね。容量の極板面積を大きくする。極板間の距離を小さくしてもいい。
一平 また変なことを考えちゃったんですけど、コンデンサーを電池につないで、電気をためようというときには、この回路は閉じていないのに、電流が流れることになるんですね。
和美 そうだ、極板は繋がっていないのですよネ。
先生 いいことに気がついた。これは磁場のことがからむので、またの機会にしよう。
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

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