高校生の物理 音と振動 (2)音の性質 A-3 No316 2011年9月8日(木)
和美 先生、音が直進するということ、どうすればわかりますか。
先生 パラボラアンテナ型の反射板の焦点の所で話をすると、かなり離してこれに対置した、もう一つの所で話がよく聞こえるんだよ。科学博物館にあったような気がするね。
一平 円形の建物があれば、中庭で実験できますね。
和美 パラボラアンテナが二つあればできないかしら。
先生 やってみたいね。
和美 これは反射についても使える実験ですね。
一平 反射はやまびこで解るし、鳴き竜もそうですね。
先生 教室で静かな時の手を鳴らすと鳴き竜と同じ響きが起きるんだよ。
一平 ヘーッ!知らなかったナー。
和美 音が屈折する現象ってありますか。
先生 水と空気の間で光が屈折するような鮮やかな現象は見られないけれど、夏の夜、遠い駅の音が手に取るように聞こえたなんていう経験はないかな。地面は温まりやすく冷えやすいから、夏の夜には地面は早く冷えて空気は下の方が温度が低くなる。そうすると、上空の方が音速が速くなるので、ある点から出た音は、上空で弧を描いて、遠くの地点へ達するのだ。
一平 二人で棒を持って歩いて、一方の人の歩き方が速いと、曲がってしまうことになります。中学で実験しました。
和美 夏の夜の話が出たついでに、冬の夜、雪が降っている日は静かですね。今晩はばかに静かだなと思って外を見ると雪が降っていたりして…
先生 雨と違って雪が降る音は聞こえないことと、雪が他の音を吸収するためだね。
一平 森の中では葉が他の音を吸収するのかな。森の中が静かなのは…
和美 ホールでコンサートがあるとき、お客さんがいると音が吸収されるんですって。
先生 高速道路では騒音防止で金網が張ってあるね。
和美 カーテンも防音に役立ちますね。
先生 飛行機のジェットの音を水の霧で吸収するという技術もあるんだ。
和美 では、次に干渉のことを話してください。
一平 干渉っていうのは二つの波が来て、強めあったり弱めあったりすることですよね。
和美 そうすると、右から音が来て、左から音が来て、一緒になると、場合によっては音が小さくなってしまうとか…
先生 そういうことだよ。
一平 そんなこと、信じられない!
先生 では、やってみせようか。ここに手軽に手に入る圧電ブザーがある。これを二つ一緒に鳴らしておく。さあ、この辺で聞いてごらん。
一平 あれっ。ここでは強く聞こえるけれど、少し横に動くと音は小さくなる。また少し動くと大きくなる。
和美 二つの音が足されると小さくなってしまうんだ。
先生 それが、ものと波との違いだ。
和美 ヘーッ!光も波だっていうから、こちらから光が来て、あちらから光が来て、一緒になると打ち消しあって暗くなるってことありますか。
先生 あるよ。波だから当然。
一平 そんなバカな。光と光で暗くなるなんてことあるわけないよ。
先生 光の学習をするまでお預けだね。
一平 ?!
和美 先生、これを、圧電ブザーっていいましたね。どんなものなんですか。
先生 結晶のあるものはね、その両側から圧力をかけると、そこに電荷が現れる、別の言い方をすると、電圧を発生するんだ。要するに、力を加えると電気が起きる。自動点火に使われている圧電素子がこれだ。
一平 先生、これを逆に使ってこの結晶に交流電圧を加えると、結晶が鳴り出しませんか。
先生 素晴らしい。でも、それはすでにフランスの物理学者ランジュバンが発見してしまった。これを逆圧電効果というんだ。適当な方向に切った石英の薄板を高周波電流で弾性振動を起こさせて超音波を発生させたんだ。
和美 一平さん、残念だったわね。
先生 でも、それに気がついたのは凄いよ。
一平 いやいや、物理過程は逆の向きにも起きることが多いっていうことは、ここで学んだことの一つですよ。
先生 ランジュバンはナチスに対するレジスタンス運動にも参加したんだよ。
一平 5月27日には、僕も横須賀平和行動に参加しましたよ。“トマホークくるな”って
先生 私も参加したことがある。さて、次は回折なんだろ。
和美 そうです。回折っていうのは波が、例えば音が、ものの後に回り込むことですね。誰かが外から呼ぶ声は家の中にいても、聞こえるもの。
一平 それは回り込んだのかどうかわからないね。戸や壁も音を伝えるもの。
先生 この実験はビルの谷間でやるんだ。音は波長が長いので、大きく回折するので、波長の短い、つまり高音でやるといいんだね。
一平 早朝の丸ビルでなら実験できそうです。
先生 私たちに聞こえないほどの高い音を超音波というのだが、コウモリは70kHzの超音波を知覚するという。自分で超音波を出してその反射音をキャッチしてもののありかを知るんだそうだ。超音波は波長が短いのでものの後に回折しなで反射してくる。
一平 他の動物でも超音波を感じるものものがいるかもしれませんね。
先生 そうそう、人間に感じない超音波を知覚したり、人間の感じない紫外線や偏光を感知したり、人間に感じないにおいをキャッチしたり、人間が感じないくらいの温度差を感じたりする動物がいろいろいるのだろう。
一平 ぼくたちが感じない低周波が人間の身体に悪い影響を与えているんだそうですね。
先生 そうだね。私たちの環境のバックグランドにはブラックノイズという低音が充満している。これを私たちは感じないようになってしまっている。先日、無音室という所に入ったのだが、ここに入ると、耳にウーンという何かの音が聞こえるんだ!
和美 音がない世界で音が聞こえる?
一平 少し聞こえている状態を無音と思っているので、実際無音になるとマイナスの音を感じるのかも知れないですね。
先生 マイナスの音? 表現としては面白いがネ。さて、これでおしまいかな。
和美 もう一つ、共振があります。えーと、共振というのは音でいえば共鳴ですネ。
一平 共鳴音叉の実験は面白かったなー。一方を鳴らすと、もう一方の音叉も自然に鳴り出すですね。
和美 ピアノの高い方のドの鍵盤を押しておいて、低い方のドを鳴らすと、高い方のドも鳴り出します。
一平 太鼓の一方を打つと反対側の皮も振動しているんだね。
和美 楽器にはほとんどに共鳴箱がついているし…
先生 共鳴っていうのはカチンコボールみたいなものだな。繰り返し運動が交換されるという点で。
和美 人間だって共鳴しますものね。
一平 繰り返し意見が交換されるっていうことかな。