理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
高校生の物理 運動の種類(4)    仕事  M-112  No307    2011年8月11日(木)
 
先生 ピラミッドを造る現場の映画を見たことがあるかな。
和美 題名は忘れましたが、見た記憶があります。
先生 どんな具合だったか、思い出せる?
和美 大勢の奴隷が、よってたかって、大石を引いたり、押したりしていました。草臥れている奴隷を、監督が鞭でたたいたりして、悲惨でした。
一平 石の下にコロを入れていたんじゃない。
和美 コロって丸太のようなもの?
先生 そうそう、その前に、コロが沈み込まないように、道を造ることが先決だったと思われる。
一平 道を整備して、コロを使うのは、摩擦を減らすためでしょう。
先生 奈良に、石舞台という大きな石の建造物があるが、その石はどこからか運んできたと思われる。修羅(シュラ)という運搬道具が発掘されたことを知っているかな。
和美 それを再現して実験したのでしょう。新聞記事で見ましたよ。
先生 このように物体に力を加えて、物体を動かすことを、物理では仕事をするという。
和美 仕事は摩擦のあるところでするのでしょう。
先生 そうだね。人間は摩擦力に打ち勝って仕事をするのだ。
一平  石を摩擦力に打ち勝って建設現場に運んだら、次は、石を積み上げる仕事をするんですね。 
和美 重力に打ち勝って積み上げるんです。
先生 実際には、摩擦力と重力の両方に打ち勝って仕事をするんだ。
一平 斜面を造って、斜面に沿って石を持ち上げるんでした。
和美 ピラミッドが高くなると、斜面が急になってくるので、斜面の長さも長くしなくてはいけない…
一平 斜面の長さはどんどんながくなっていって…、
和美 ピラミッドの建設が終わったら、斜面の土を取り除くのが、また、大変ですね。
先生 そうだったろうね。
一平 先生、同じ仕事をしても、摩擦力に対して仕事をするのと、重力に対して仕事をするのとでは、結果に違いがありそうに思えますが…
先生 どういうことかな?
一平 重力に対して仕事をした場合は、石が積み上げられているので、その石を利用することで、また別の仕事ができるけれど、摩擦力に対して仕事をする場合には、もうそれだけのことで、仕事の結果が残らないでしょ。
和美 一平くん、もう少し説明して…
一平 石でなくて水で考えてごらん。高い所へ汲み上げられた水は、それで水車をまわせば発電できるだろう。つまり、高い所へ運ばれた水には、仕事が蓄えられているようなものだと思われるんだ。
和美 そうか。仕事の結果が残っているんだ。それに対して摩擦力に対してした仕事は何も残っていない。
先生 摩擦力に対する仕事は、摩擦熱で、地面や石を温めただけでなので、その後の役にはたたない。ところで、ものを移動させるのに、摩擦力を少なくするにはどうすると思う?
和美 コロや車を使うことでしょ。
一平 船で運ぶのはどうかな?
和美 そうだ。水の摩擦は小さいからね。
先生 大阪城の石垣には非常に大きい石が使われているけど、それを運んだときの記録があるようで、それには、“船で石を運ぶのではなく、石で船を運ぶ”とされているそうだ。和美 それ、どういう意味ですか。
一平 わかった!船の底に石を縛りつけて運んだのだ。
和美 そうするとどうなるの。
一平 ほら、水の中では石が軽くなるだろう。
和美 ああ、そうか。
先生 私が小さい頃、川遊びをしていて、水の中では石が軽くなるということを、知っていたね。
一平 そんなことをして遊べる川は、もうないな。そのおかげで、ぼくたちは物理が学びにくくなっているんだ。
先生 普通の石の比重は2と3の間くらいだから、水の中では浮力を受けて、例えば25キロの石では、水の中では15キロぐらいになってしまう。
和美 40%も軽くなってしまう。
一平 石の上に船が乗っているように思えるので、“石で船を運ぶ”といったのだ。うまい、言い方だな。
和美 ところで、先生は学校で仕事をしているんですね。
先生 そうだよ。授業するのが私の仕事だからね。
和美 力を加えて物体を移動させることが仕事なんだから、先生のようにチョークしか持たない人は仕事をしたことには、ならないじゃないですか。
先生 きついね。物理の仕事と経済の仕事は、どのように繋がっているのかね。仕事という概念はずーっと昔からあったんだが、その概念がどんどん拡張されてきてね…。
 

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