高校生の物理 運動の種類(1) 落下運動1 M-109 No304 2011年7月28日(木)
先生 地球上ではどんなものでもみんな同じように落ちてゆくことを知っているね。
一平 本当は軽いものは遅く落ちて、重いものは速く落ちる、と言いたいんですが…
和美 空気があって邪魔をしているので、チョークの粉はゆっくり落ち、チョークの塊は素早く落ちることになってしまうんです。
一平 丸めた紙はスーッと落ち、拡げた紙はひらひら落ちます。
先生 ガリレイの思考実験は有名だね。同じものを3個用意する。それは何でもよい。鉄の球でも何でも…
一平 思考実験だから何でもいいんだけど、ガラスのビー玉にしておきましょう。
先生 そうそう。2つのビー玉を、1個ずつ両手に持って、同じ高さから同時に落とすと、2つは同時に地面に落ちる。次に片方の手に1個、他方の手に2個のビー玉を持って同じ高さから同時に落とすと、3個は同時に地面に落ちる。次に2個の方をセロテープで貼りつけて2回目と同じ実験をする。勿論、同時に落ちる。2個の方は一つのものと見なしてもよいので、重さが1のものと2のものとは、同じ高さから同時に離すと同時に落ちることになる。以後、この実験を3個へ、4個へと拡張する。
和美
重ね合わせの原理でしょう。
先生 そうだね。
和美 でも先生、これは思考実験だから良いけれど、実際にやってみると同時に落ちたかどうかを判定するのが難しくありませんか。
先生 そういうときには、球が床をたたく音で判断するのだ。
一平 1/100秒くらいの差でも聞き分けられそうですね。
和美 ここに2つの球があって、一方は1kg、もう一方は2kgあったとします。地球は1kgの球を1kg重の力で引き、2kg
の球を2kg重の力で引くから、2kgの球の方が2倍の速さで落下するはずですが、2kgの球の方は質量も2倍あるので、つまり、動きにくさも2倍あるので、結局、1kgの物体も、2kgの物体も同時に落ちるということになるわけです。
一平 そうすると、質量といういのは、重力の原因になる量であると同時に、動きにくさの原因になる量でもあるんだ。一方は動かそうとする量で、もう一方は動かされまいとする量、それが同じ質量という名前でものの中に同居している。変なの!
先生 ここのところは、あまり気にしないで、将来にとっておこう。
和美 将来を、忘れないようにしておきたいですね。
一平 要するに、地球上ではどんなものでも同じように落ちるということです。それには質量が関係しているが、質量には二つの内容があって、そこにはなにがしかの意味があるというんですね。
和美 ところで、ものが落ちるときの速さはどうなりますか。時間に比例しますか。
先生 ここに面白い実験装置がある。<速球王>という製品だ。普通の公式野球の硬球のように見えるが、中にデジタルの時計が仕掛けてあって、この窓に1/100秒までの時間が3桁の数値で示される。この凹みがスイッチになっていて、スイッチを押さえると時計がリセットされ、手を離すと時計が作動して時間が刻まれる。球がどこかにぶつかってショックを受けると、時計が止まる仕掛けになっている。
一平 ピッチャーが投げた球の速さが、簡単に計算できるわけですね。
和美 アイデアですね。これで落下実験ができるという訳。早速やってみましょう。1mの木の物差を使って、1.0m 0.9m 0.8m 0.7m…の所から落として、その時間を測ります。それをグラフにすれば落ちる距離と時間の関係がわかりそうです。
一平
手を離すときが難しそうだね。
和美 2人で別々にやって、2回の平均値を出しましょうか。
先生 いやいや、平均しないで、出たデータを全部グラフの上にプロットするのがいいのだよ。時間と距離の関係の傾向を見るんだからね。
和美 わかりました。
先生 二人でデータをとってごらん。私はコーヒーブレイクだ。
和美 私がグラフにデータをプロットしている間に、一平くんはその結果を予想してみて。
一平 速さは時間がたつほど速くなるんだから、落下距離は時間に比例はしないね。多分、時間の2乗に比例するだろうな。そうすると、横軸が時間、縦軸が距離のグラフでは放物線が書けることになるのかな。
和美 グラフは見事な放物線になりましたね。
一平 予想通りだった。“落下距離は時間の2乗に比例する”でした。
和美 それでは、“速さは時間に比例する”ということになります。
一平 どうして?
和美 距離は速さかける時間でしょ。その距離が時間の2乗に比例だもの、速さは時間に比例でしょ。
S∝v・t S∝t^2 v・t∝t^2 v∝t
一平 和チャンは数学に強いね!
先生 重力のあるところで物体を静かに落下させることを<自由落下>というね。はじめに速度を与えないという意味、つまり、初速度0の運動ということ。
和美
それでは “自由落下する物体の速度は時間に比例し、落下距離は時間の2乗に比例する”ということいなります。
先生 みんな同じ運動をするので、
この比例定数を実験で測定しておけば便利だ。
和美 グラフができているんだから、比例定数はグラフの傾きから求められますね。
先生 落下距離をs、時間をt、比例定数をk、とすると s=kt^2 s
と t の組に数値を入れて k を計算してごらん。
和美 データを入れると、どれでも、殆ど k=5 という値になります。
先生 そうすると s=5t^2 となる。
一平 では、速さを v
とすると v=kt となります。こちらの比例定数はいくらになるのかな。
和美 速さはだんだん増していくので、平均の速さは v/2 と考えて距離を求めると
s=(v/2)t=(kt/2)t=k/2t^2 これを比較すると k=10 ∴ v=10t
一平 v=10t s=5t^2
簡単になったね。
和美 校舎の高さも測れそうね。屋上から石ころを落として時間を測れば…