高校生の物理 力4 作用反作用 M-100 No295
2011年6月30日(木)
一平 先生、机の上のリンゴには、机から上向きの力で押されていますが、逆に、机はリンゴから下向きに押されているんですね。
先生 そうだよ。引けば引かれる、押せば押される、ということでね。
和美 そうすると、今度は、机は床から上向きに押されていて、床は机から下向きの力で押されているんですね。
先生 その通りだ。
一平 そうすると、机にはたらく力は、下向きの重力と、リンゴから押される下向きの力と、床からの上向きの力の3つですね。
先生 その通り。
和美 それでは、リンゴにはたらく力をいってみます。まず、下向きの重力、次は机から押される上向きの力、最後に床から押される上向きの力。
先生 それは違うね。リンゴは床からは押されていない。
和美 でも、机は床から上向きに押されているんでしょ。その力がリンゴにはたらきませんか。床がなければリンゴは落ちてしまうし…
先生 床は机を押すが、リンゴを押すことはない。リンゴは机があるから落ちないのだ。
一平 床が机を押した力は、机でなくなってしまうんですか?
先生 机でなくなるのではなくて、その一部は、机がリンゴを押す力となってリンゴにはたらくことになる。
和美 机の力になっちゃうんだ!
先生 その言い方は不十分だけど、まあ、そういうことだね。
一平 机が床からもらった力は、もう、机の力になっちゃうんだ。
先生 一つ一つのものについて、力の収支計算がされるようにするのだ。そのためには、力は<又貸ししない>ことにする。力は自分に直に触れているものからだけ受けるのだ。和美 自分というのは、今、考えているものということですね。例えば、机とか、リンゴとか…
先生 そうそう。
一平 自分に直に触れているものを考えるとき、その触れているもの自身も、それが主役になるときには<自分>になれるんだから、お互い様で、<力は与えっこしている>ことになりますね。
先生 うまい言い方だ。リンゴと机は直に触れあっているから力の与えっこをしているし、机と床は直に触れ合っているから、力の与えっこをしていることになる。
和美 リンゴと床は直に触れ合っていないので、アカノタニンなんだ。だから、力の与えっこをしない。
一平 力は直に触れ合わないとはたらかないんだ。
和美 <袖触れ合うも多生の縁>でしょ。触れ合わないと縁がないのです。
一平 ちょっと待ってください。でも、そりゃおかしいよ。リンゴには重力がはたらいていたんですよ。重力というのは地球から引かれている力ということでしたが、リンゴと地球は直に触れていない場合もありますよ。
和美 磁石だって、直に触れていなくても、鉄を引っ張りますね。
先生 …!そうだったね。それは、例外としておこう。
一平 そういうのアリなの?ちょっとずるいナ!
和美 ご都合!強引!教員?
先生 地球と磁石と電気は当分、例外とすることをここに宣言する。
一平 先生が宣言するのですネ。何か魂胆があるな。きっと、そのうちに…
和美 後で、どんでん返しでもしようというんでしょ。
先生 そんなところかな。お楽しみに!
和美 ちょっと気持ちわワリーが、そういうことにして…、でも、いつか種明かしをしてくださいよ。
一平 先生、地球がリンゴを引っ張るのが重力だと、<お互いっこ>の方、つまり、リンゴが地球を引くのも重力ですか。
先生 地球とリンゴが引き合うのもお互いっこで、このペアが重力だ。
和美 でも、リンゴが地球を引く力は見えませんね。地球は動かないんだもの。
先生
残念だが、見えない。しかし、そうであるに違いない、と信ずるコトにするね。
和美 “ものはみんな対等”ということは格好がいいので、信じることにしてあげます。
一平 チョット待ってください。ものは地球に引かれて落ちていくけど、地球もものに引かれて上がってきているかも知れないヨ?
だって、僕が地球押さえているので、地球は上がろうとして僕を押しているのじゃないかナ。
和美 一平さんが逆立ちすれば、一平さんは地球を持ち上げたことにならないかしら。絵に描いてみると、特に、夜の絵にすると…
先生 夜の絵って、人の手の上に地球があるという意味?劇画チックなんだ!
一平 それじゃあ、地球の重さは55kgということになる。ヘルスメーターを逆さに置いて、その上で僕が逆立ちすると、地球の重さは55kgとメーターに出る。ぼくが持っているヘルスメーターに地球が乗っているんだから。
和美 地球の質量がとても大きくても、地球の重量は一平さんにとって55kgということですね。
一平 和チャンにとては何キロになるのかな?人によって重さが違うんだ!
和美 それでいいんじゃない。地球にとって、一平さんと私の重量が異なるんだもの。
先生 面白いアイデアだね。さて、2つのものがお互いに引き合ったり、押し合ったりするとき、その力の大きさは等しいことがわかっている。これはニュ−トンが発見した法則で、作用反作用の法則ということは知っているね。
一平 地球と僕の作用反作用は55kgの力ということですネ。
和美 中学でやった作用反作用の実験で、2つのバネ秤をつないで引きあうと、両方が同じ目盛りを示したんですね。
一平 バネの場合には納得できそうだけれど、リンゴと地球がお互いに引き合う力が同じだなんて考えにくいね。
和美 ダンプカーと小形乗用車が衝突した時でも、押し合う力は同じなんですか?
先生
そうだよ。これは力学台車という実験装置だ。1キロくらいあるかな。まさつ力が小さくて良く走るように作られている。車体には進行方向に穴があいていて、その中にバネがついた金属棒が収まっている。二つの台車を棒を介してぶつけ合うと、棒が引っ込んでバネを縮ませ、その長さで台車が受けた力の大きさを比べることができる。バネの縮みがわかるように、名刺程度の厚紙を棒に挿しておく。棒が穴に押し込まれると、バネが縮んだ長さが、紙の位置でわかるというのだ。では、やってみようか。
一平 台車の重さが等しい時には、バネの縮みは当然同じになりますね。
和美 片方の台車におもりを乗せて、ダンプカーのモデルにするんですね。そうして、何も積まなかった台車とぶつけ合うと!あれッ、バネの縮みは同じだ。
一平
衝突させても、追突させても、両方の台車を手で押しつけあっても、バネの縮みは同じだ。
和美 片方の台車に一平さんが乗ったらどうかしら。
一平 ぼくは55キロあるから、台車の重さは56倍にもなるね。
ぼくが乗っても大丈夫ですか。
先生 OK、丈夫にできているからネ。
一平 では、和チャン、ぼくが乗った台車に、空の台車をぶつけてみてよ…あれッ、やっぱり、同じだ。
和美 ダンプと軽自動車でも、加え合う力は同じなんだ。
一平 地球とリンゴが引きあう力も同じだということが、信じられそうだね。