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掲示板 | 石井信也 |
物理読み物8 密度 M-51 No205 2010年5月13日(木)
密度というのは, 文字通りに解釈すれば<密なる度合>ということですから,
ものの詰まり方という意味です. この概念を生かしたいものです.
従来の密度, つまり,
体積中の質量と定義されたものを「比重」と呼ぼうという主張(極地方式研究会)には魅力があります. 空間が3次元なので, ものの詰まり方にも体積中の詰まり方, 面積中の詰まり方, 線状の詰まり方の3種があります.
比重, 即ち質量密度にも, いわゆる,
体積中の質量密度と並んで, 面質量密度と線質量密度があります.
デニールという糸の太さ(繊度)の単位があります. 長さ450mの糸の重さが50mgのとき,
その糸を1デニールといいます. いわば,線質量密度で
1.1×10^(-5)[kg/m] に当たります.
電荷の分布についても, 体電荷密度, 面電荷密度,
線電荷密度があります. 電束密度,
磁束密度は面密度です. 衝突に関する断面積という概念もあります.
人口密度はよく知られている概念です. 動物の棲息密度は, 野生動物の場合は面棲息密度ですが, 魚になると体棲息密度となりそうです.
稲作のコンテストは面収穫密度を競うものといえましょう. 日本のJRの, 電車の線密度は世界一だといいます. 絶対湿度は体水蒸気密度です. 圧力や応力は力の面密度です. 表面張力は力の線密度です.
重力と慣性力は体積密度的な力として現れます.
空間的な詰まり方を密度といのに対して, 時間的な[詰まり方]を速度といいます. 普通に使う速度は変位速度のこと, 加速度は速度の速度, 仕事率は仕事の速度, ケプラーの第二則は面積速度,
その他に角速度などもあります.ニュートンの冷却の法則は冷却速度の問題です.
化学では溶解速度,反応速度, 燃焼速度,
生物では成長速度, 地学では堆積速度などがあります. その他にも,
速度という概念は, 進化の速度とか,
経済成長速度とか, いろいろに使われます.
密度速度のような量もあります. 降下煤煙は1km^2につき1月に何トンというように表します.
空間や時間の詰まり方を考えたように, 単位質量当たりの量を考えることがあります. このとき, 単位質量としては1kgをとったり,
1molをとったりします. 比熱,
比体重, 燃焼熱などは, 特にmol単位で使うと便利です. 質量中に質量で詰まっているときの密度を特に濃度といいます.
含有率といってもいいでしょう. 海水中の食塩濃度,
金鉱の金含有率などがこれです. このときの単位は[kg/kg]だったり, [mol/mol]だったりしますが, これは約分されて, 割や%やパーミル(千分率)で表したりします.
膨張にも, 線膨張,
面膨張, 体膨張があって, それぞれ, 線膨張率, 面膨張率,
体膨張率があります.
普通, 密度(比重)は質量と体積で表し, 速度は変位と時間で表します. このような量を内包量といいます. ところが, ニュートンは質量を密度と体積の積として定義しました.
ニュートンがここで密度というときには, ものが原子でできていて,
それがコパクトに詰まっているイメージを持っていたからでしょう. 原子論者のニュートンには, 密度という量は内包量ではなかったに違いありません. 私たちが “初めに原子ありき” という主張をするときには, ものの詰まり方として密度を重要に考えなけえればなりません.
もし, あなたが原子論者なら,
外延量としての密度を主張しましょう. 速度も同様です.
それには, まず,
密度も速度も感覚的に把らえられるようになることと,
密度(比重)×体積=質量 速度×時間=変位(距離)
とう考え方に慣れることが大切です. はじめに密度ありき,はじめに速度ありき,です.
光の速さが[絶対的]な意味を持ち, 物理定数にもなっていることは, この考え方が当を得ていることの裏付けになっています