理科実験を楽しむ会

物理読み物7   重さ   M-50    No204   2010年5月6日(木) 

  古い神社の境内には, <力石>という重い石が置かれていることがあります. , 村の若い衆が集まって, この石をもちあげて, 力自慢を競い合ったのでしょう. 石には30貫などと彫られていたりします. 1貫は3.75kgですから, その石はおよそ113kgもあるのです. 力持ちであることは, 人の能力の中でも重要なものの一つだったことは,気はやさしくて力もち” という童謡があることからも伺われます. “ものの本質は重さであり, 人間の本質は自由である” とはヘーゲルの言葉です.

  すべてのものに重さがあります. そして, 重さがあれば, それがものであることの証拠です. ものであることの必要にして十分な条件が, 重さがあることです.

 ものはどのように変化しても重さは変わりません. 水に浮いても, 水に溶けても重さは変わりません. 三態変化しても重さは変わりません. 化学変化しても重さ変わりません. 生物であっても例外ではありません. ものの出入りがなければ, 重さは変わりません. 重さは発生したり消滅したりしません. それは, ものが発生したり消滅したりしないことの裏表です.

  秤の上で力んでみても重さは変わりません. 蓋をした瓶の中で, ハエが「飛んでいて」も重さは変わりません. 総ては<秤の上の出来事>で, 孫悟空がお釈迦様の掌の中であがいているようなものです.

  このことを応用してみます.秤に乗らないような大きなものは, 二つの秤にまたがせて乗せて, または吊るして, 二つの秤の目盛りの和を求めればよいということ, 更に, この秤の一方は秤でなくてもよくて, 適当なもので支えておいて, 秤を両側で二回使えばよいことになります.

  逆に言えば, ものが出入りすれば, その分だけ重さが変化します. 産科では赤チャンがどれだけミルクを飲んだかを知るのに, ミルクを飲む前後の赤チャンの体重を測って, 引き算をするのです.

  ここでいう重さとは質量のことで, 動き出したエレヴェーターの中では. 体重計の指針は変化してしまいます. 質量が変化したわけではありあせん.

  辞書などには, 質量とは物体が有する物体の分量”と書いてありますが, どうもピントきません. 体積だって物体の分量です. では, 何と言ったらよいのでしょうか?  重さで測れるものの量, おもしとしての働きを表したものの量, はどうでしょうか. 10kgの金塊と10kgの石ころとでは, 漬物のおもしとして使うときには等価である, ということです. この二つのものは地球から同じ力で引かれているので, いわば, 地球がものを愛する度合いの量, といいったものです. 万有引力の原因になる量ともいえます.

 ですから, ものの質量は, それに働く重力の大きさで表現できます. これを重力質量と呼びます. しかし, 無重力の世界でも物質は存在します. もちろん, 質量だってあります. そのようなところでは, 質量をどのようにして測ることができるでしょう.  重力がないので重力で表すことはできません. 重力がないので, ものは空間に浮いていますが,,大きいものは動かしにくいのです. この動かしにくさで質量を表そうというのです. これを慣性質量といいますが, この慣性質量が, あの重力質量と一致するのですから, 驚きです!
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