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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
物理読み物58   ローレンツ力  M-89  No283   2011年5月19日(木)
 
 電流は磁石の近くで力を受けます。これをローレンツ力といいます。この力はちょっと風変わりな力です。
 “水平に置かれた棒磁石の極の近くに、鉛直に導線を張って電流を流します。導線にはどんな力がはたらくと思いますか”と、生徒に問題を与えます。こういわれても、生徒は答えようがありません。第一、力がはたらくかどうかも知らないのですから。でも、それを承知の上で答えさせます。生徒は<丁か半か>で答えます。それは、近づくか離れるかのどちらかです。
 今まで学んできたニュートン力学では、力はものとものとを結んだ方向にはたらきました。そこにあるのは磁石と導線の二つですから、「きちんと」学習をしてきた生徒には、近づくか離れるか以外には考えうようがありません。答えは半々が期待されますが…そこで、実験します。ところが、導線は横の方へスライドしてしまうのです。全員がずっこけます。“これは事件だ”とみんなに思わせます。ここでは、全員に間違わせることが大切です。
 電流の向きを変えると、力のはたらく向きが変わります。磁石の極を変えると、力のはたらく向きが変わります。これは十分予想ができます。“逆・逆法則”とでも呼んでおきましょう。
 でも、基準になる一つだけは覚えなければなりません。その覚え方がフレミングの左手の法則です。磁力線の方向と、電流の方向と、電流が力を受ける方向の三者はお互いに直角なので、親指、人差指、中指の3本の指を直角に伸ばして、これを表すことができます。磁力線と電流の向きが、現在のそれのように決められたので、左手が具合よく使えるというわけです。
 電流というのは、ミクロに見れば、運動している電荷です。これが磁場から力を受けるのです。力を受けた電荷は導線から出られないので、導線に力がはたらくことになります。導線から出た裸の電荷が力を受けるを見ようというのが、クルックス管の中の放電電流の実験です。これを実験して見せます。
 イオン電流でもローレンツ力ははたらきます。この実験装置はみんなで考えてみましょう。
 真空の場では、磁場に垂直に走る電荷は、常に進行方向に垂直な力を受けるので、電荷は円運動をすることになります。ローレンツ力が円運動の向心力としてはたらいています。これの応用が加速器のサイクロトロンです。
 コイルに電流が流れると、その中に磁力線ができます。逆に、磁力線が走っているところに、荷電粒子が斜めに入り込むと、これはコイル状の電流になります。荷電粒子の速度の、磁力線に垂直な成分によって起きる円運動に、磁力線に平行な成分が加わって、コイル状の運動になります。
 極地帯には地磁気の磁力線が束になって出入りしています。ここに太陽から飛んできた荷電粒子が捕まると、コイル状の運動になって、これが上空の酸素や窒素を電離させてオーロラをつくります。