理科実験についてのお問い合わせ等はメール・掲示板にてお願いいたします。
掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

物理読み物57   大気圧     M-88     No282   2011年5月12日(木)    
 
 注射器のピストンを十分に押し込んでおいて、注射器の口を指で塞ぎます。この状態でピストンを引き抜いてみましょう。いろいろの太さのものでやってみると、細い注射器では簡単にできますが、太いものになると大変だということがわかるでしょう。
 では、どのくらいの力でピストンが引き抜けるか測定してみましょう。ヘルスメーターに乗った人が、ピストンを下にして、その口を指で塞いだ注射器(太めの浣腸器も使える)の筒を握って鉛直に保ちます。ヘルスメーターに乗らない別の一人がピストンを下へ引っぱります。ヘルスメーターに乗った人は、注射器を介して下に引かれるので、ヘルスメーターの指針は増えます。その差を読み取ります。注射器を引く場合は、エキスパンダーを引くのとは違って、引っ張った距離によって力の大きさは変化しません。このようにして、ピストンを引いてみると、その力の大きさは、断面積5cm^2では5kg重、断面積10cm^2のものでは10kg重であって、断面積1cm^2について1kgの力が必要だということがわかります。このピストンを押していたのは大気圧で、その圧力が1kg重/cm^2なのです。
 断面積が1cm^2で長さが12mくらいの丈夫な塩ビのチューブを用意して、校舎の階段のふきぬけを利用して実験をします。1階に水を入れたバケツを置いて、それにチューブの一端を突っ込み、チューブの他端を4階に持ち上げて、真空ポンプにつないで排気すると、バケツの水面を介して大気圧が水を押し上げ、水の高さは10mに達します。この水は、断面積が1cm^2で高さが10mなので、体積は1000cm^3,質量は1kgで、大気圧は1kg重/cm^2ということになって、先の実験と同じ値が得られます。この実験では、チューブの太さはもっと太くてもかまいません。水の質量が断面積に比例すると同時に、これを押す大気圧も断面積に比例するからです。
 この実験は真空ポンプがなくてもできます。チューブをバケツの水の中に入れて、その中の空気を追い出します。チューブに水が詰まった状態で、その一端に栓をして、他端を水から出さないように注意しながら、栓をした端を4階まで持ち上げます。中の水は途中10mより少し下の所で、取り残されます。ただし、この場合には、水に溶けていた空気が出てくるので、チューブを何度かバケツに戻して、その空気を抜く作業をします。
 水を10mの高さに押し上げる大気圧は、同様な装置で水銀を76cmの高さに持ち上げます。この実験を初めて行ったのはトリチェリーで、大気圧の強さを76cmHgと表すこともあります。そもそも、大気圧というのは、断面積1cm^2の上に積もり積もった空気の重さのことですから、10mH2Oとしても、∞air (!)としてもよいのでしょう。
 大気圧が空気の重さなら、高いところでは、大気圧が小さくなるだろうと考えたのはパスカルで、トリチェリーの装置を使って、兄のペリエがそれを確認しました。この歴史的実験を、次のようにして確かめられます。
 コーヒーの空き瓶の口をゴム膜で蓋をして気密にし、これを持って山へ登るとゴム膜は
半球状に膨らみます。スナック菓子の封を切らないまま山に登ると、袋が膨らんで「かさ」が大きくなったように見えます。もっと、別の方法を考えてやってみましょう。