物理読み物50
蓄電 E-133 No275 2011年4月21日(木)
電気振り子や電気盆に電気をためておこうとしても、しばらくすると、その電気はなくなってしまいます。一体、どこへ行ってしまったのでしょう。
ヴァン・ド・グラーフ起電機を作動させておいて、そこに線香の煙を近づけると、煙は激しく起電機に引きつけられます。仮に、起電機の電荷をプラスとしておきましょう。煙の一粒一粒は、静電誘導によって起電機の近い方へマイナス、遠い方へプラスの電気を帯びますが、近くのマイナスの効果の方が、遠いプラスの効果より大きいので、煙は起電機に引き寄せられます。起電機に接触した煙は、そこからプラスの電気を貰い、同種の電気の反発力ではね飛ばされます。このようにして、起電機の電気は徐々に奪い去られていきます。特に、煙がなくなっても、空気中のほこりがその役割を果し、<よってたかって>電気を奪っていくのです。ちなみに、この原理を積極的に使って、ほこりや煙を除去するのが、電気集塵機です。
それでは、電気を奪われないようにするには、どうしたらよいでしょうか。二枚の金属板を用意して、一方の金属板に電気を与えておいてから、もう一方の金属板をその近くへ平行に置いてアースすると、こちらは異種の電気を帯びて(静電誘導)、両方の電気はお互いに引き合います。お互いに<ひもつき>になったこの電気は、ほこりなどに奪われることは少ないのです。このような、一組の金属板をコンデンサーまたはキャパシターと呼び、電気をためる道具として使います。金属板といっても、電気にとっては、板の厚さなどは問題にならにので、普通のコンデンサーは、2枚のアルミホイルの間に、例えば、油紙のような絶縁体を夾んで、小形に巻いて作ります。コンデンサーを充電するには、電池につなげばよいのです。コンデンサーの大きさを電気容量または静電容量といいますが、単に容量という場合もあります。
コンデンサーに電気をためるのは、円筒形のバケツに水をためるのに似ています。バケツに水をためるのに、大きな水槽と、連通管でつなぐと、バケツには水槽と同じ高さにまで水が入ります。水槽は電池、水位は電圧、バケツの底面積は容量、水量(水の体積)は電気量に対応します。
水量(体積)=底面積×高さ(水位) 電気量=容量×電圧 というわけです。記号で書けば 電気量はQ[C] 容量はC[F]
電圧はV[V] で Q=CV 単位はそれぞれ クーロン ファラド ヴォルト といいます。
底面積が決まっているバケツに、たくさんの水をためるには、水位が高い水槽につなげばよいことはわかりますが、あまりに水槽の水位が高くなると、バケツから水が溢れてしまいます。電気の場合には、充電する電圧が高過ぎると、電荷がリークしてしまったり、コンデンサーがパンクしてしまいます。高電圧で充電するときには、かなり激しく破裂する場合があります。この電圧の限界を耐電圧といいます。容量と耐電圧はコンデンサーに示されています。面白いことに、容量の小さいコンデンサーでは耐電圧が大きく、容量の大きいコンデンサーでは耐電圧が低いのが一般です。
近頃、容量が1[F]というような大容量コンデンサ−が100円程度で手に入ります。容量の大きいコンデンサーには、極性があって、電池につなぐ向きが示されています。容量はキャパシタンスメーターで測れます。
プラスチックシートの表裏にアルミホイルを貼ったキャパシター(面積は適当)では、高耐圧ですが、容量は100pF程度です。