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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
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物理読み物49   金属    R-4    No274                2011年4月14日(木)
 
 単体のうち固体の状態で展性、延性に富み、金属光沢をもち、電気と熱をよく導くものを金属という、と理化学辞典にあります。
 金属というのは物質の状態名で、一見して、すぐにそれとわかります。上の性質を易しく言うと、“たたけば延びて、ピカピカ光り、電気をよく通す”ということになります。これらの性質を金属性といいます。合金は単体ではないが、金属性を持つので金属の中に入れます。液体の水銀は金属ではありません。凍れば金属になります。
 これらの性質は金属に共通に存在する自由電子の振る舞いによります。単体で金属になる元素を金属元素といい、元素の中の約8割が金属元素です。周期表では、金属元素は、アスタチチン(At)とホウ素(B)を結ぶ線(ABライン)より左の方に位置しています。非金属元素は右の方に並んでいます。金属原子からこの電子をとってしまうと、金属のプラスイオンになり、その電子を受け取った非金属のマイナスイオンと結合して、イオン性物質を作ります。イオン性物質は<しお>や<いし>のように地球を作っている物質です。脆くて叩けば砕け、普通は電気を通しませんが、融けたり、溶けたりすると電気を通します。ちなみに、金属元素でない元素同士の結合でできる物資得は分子性物質で、一般に、融点や沸点が低くて、常温常圧で気体や液体のものは皆これです。生物が作ったものもみんなこれです。分子性物質は電気を通しません。
 金属が光をよく反射するのは、その自由電子が光を吸収してから吐き出すので、独特の色調を帯びます。いわゆる金属光沢です。光だけはありません。もっと広い範囲の電磁波を反射します。トランジスタラジオをアルミホイルで包むと、電波を反射してしまうので、ラジオは鳴らなくなります。果実の畑では、樹の下にアルミホイルを敷いて、下から果実に光をあてて、赤く実らせます。消防夫はアルミホイルの服を着て、輻射熱を反射させます。
 金属が反射率が良いといっても、幾らかは吸収します。それが90%であったとしても、20回も反射すると90%も吸収されてしまいます。
 計算器に 0.9 ×  とキーを押します。引き続いて = を押すと0.81と出ます。続いて 2,3,4…と = を20回押すと0.1に近くなります。つまり、90%吸収されたということです。
  ですから、反射が繰り返されるような状態では、金属は吸収のよい物質でもあるのです。金属の粉はみな真っ黒です。アルミニウムでも銅でも、金属工作をした後では、手が黒くなります。表面を多くして触媒に使用する白金やパラジウムの粉である白金黒(はっきんこく)やパラジウム黒などはそれです。針を束ねたものは、針の尖った方から見ると真っ黒です。剃刀の刃を束ねたものは、刃の方から見ると真っ黒です。物質が粉末状で黒いということは、電気伝導する必要条件のように思われます。   超伝導物質の発見について、次のような記述がありあす。“実際、酸化物高温超伝導体の場合も、試薬の調合を誤ると、超伝導どころか、絶縁体になってしまう。焼き上がりの色が黒くないと、電気超伝導が現れないのである”(超伝導 岩波新書)