物理読み物48 永久運動 M-84 No273 2011年4月14日(木)
永久気体、永久磁石、永久電流、永久機関などという言葉がありますが、永久運動という科学用語はないように思われます。しかし、永久運動という言葉はときどき耳にします。
何もしないのに、繰り返し仕事が取りだせるという装置を第一種永久機関といいます。仕事はお金になるので、こ機関は打ち出の小槌です。たくさんの人がたくさんの永久機関を「創った」のですが、結局は、そのようなムシノイイモノはできないのだとうことがわかったので、それを法則化したのが、熱力学の第一法則です。
海のような大きな熱源から熱を取り出して、繰り返して仕事に変えようという装置を第二種永久機関といいます。しかし、これも経験上不可能だということがわかって、熱力学の第二法則にまとめられました。
永久機関という言葉には、永久に動き続ける運動というニュアンスがあるので、これから<永久運動>という「概念」が創られ、永久機関の存在が否定れたことで、永久運動するものはない、という「法則」が創られてしまったようです。
それが、地球上で運動する物体のすべてが、やがて止まってしまうという経験で裏打ちされて、この概念と法則はいよいよ確乎たるものになっていったと想像されます。
慣性の法則が理解されにくいのは、一つはここにあるように思われます。いくら、この法則を説明されても、“それでも物体は止まる”という信念は覆えせません。
良く知られているエネルギー保存則は、ものの運動のトータルは増えもしなけ減りもしないという原理をいっています。物質の最もラジカルな性質は<運動する>という性質です。物質の運動の形態は多種多様で、そのことが、ゆたかな物質界をつくりあげている原因になっています。
質量保存と同じように、運動保存も大切な法則です。走っていた物体が止まるときには、その運動はミクロの運動(分子運動)に引き継がれています。従来、質量を持つ対象を、<もの>と認識してきましたが、質量をもたない<もの>もあります。そして、質量を持つものの運動と同じように、質量を持たないものの運動も考えられます。更に、それの静止状態の運動形態―ポテンシャル・エネルギ−―も考えられます。例えば、静電場がエネルギーを持つなどです。
アインシュタインの特殊相対論によると、質量とエネルギーは同等であって、お互いに転換されるという関係にあります。その量的関係は E=mc^2 (E[J]はエネルギー、m[kg]は質量、c[m/s]光速度)です。“始めに光ありき”というのが、現在の宇宙観です。光というのは場です。運動する場のポテンシャル形態が質量だ、といえないこともありません。
始めに戻りましょう。永久運動という言葉に市民権を持たせるならば “すべてのものが変転極まりない永久運動をしているのが世界であり、その運動形態は益々発展してゆたかになっていく” という宇宙観、物質観、自然観、歴史観を持てるようになりたいものです。