物理読み物42 弾性変形 M-74 No249 2010年12月30日(木)
つるまきばねにおもりを下げると、つるまきばねは伸びますが、おもりを取り去ると、元の状態に戻ります。ゴム紐についても同じようなことがいえます。このようなものを弾性体と呼びます。力の加え方によって、伸び、縮み、曲がり、ずれなど種々の変形をします。
加える力のある範囲内では、変形の大きさは加えた力に正比例します。これをフックの法則といいます。加えた力の大きさを
f、弾性体の変形の大きさを xとすると、f =k x (kは比例定数)と表せます。普通、比例定数は正で表すので、f と
x の符号は一致しています。つまり、弾性体は加えた力の向きに変形するのです。引けば伸び、押せば縮むのです。曲がりとずれについては、ここでは省略しておきます。
弾性体はつるまきばねやゴム紐など特殊なものだけではありません。机の上に茶碗を置けば、机も変形しますし、東京タワーにあなたが登れば東京タワーはそれなりに変形します。変形が僅か、というだけのことです。変形しにくいものは
k が大きいということになります。固体の物体はどんなものでも弾性体であるという認識が大切です。「固体はみんあバネである」
という見事な表現があります。ちなみにいえば、固体ばかりでなく 「気体や液体も閉じこめればバネである」
といえます。
ゴム紐で実験してみると(考えるだけでよい)、ゴム紐が長いときには k は小さく(伸びが大きい)、ゴム紐が太いときには k が大きい(伸びが小さい)ことがわかります。ですから、k
を物質定数とするためには、同じ長さ、同じ太さの物質で比較しなければいけません。このようなときには、長さ1m、断面積1m^2、の物質で決めることになています。このような「ゴム紐」を想像してみてください。そのようなものはなかなか手に入りませんし、手に入ったとしても実験になりません。そのようなときにはどうすればいいのでしょうか。ゴム紐はどのようなものでもよいのです。勿論、ゴムの質は規格化されていて、断面積はどこでも同じでなくてはいけません。
ゴムの長さを X、断面積を S
とすると f/Sは1m^2のものに加えた力を表し、x/Xは長さ1mのものの伸びを表します。このような場合の比例定数を E
と書き、ヤング率といいます。上の関係は f/S=E・x/X となります。E は物質定数なので、つるまきバネの E
などというものはありません。
ある小学校で、理科の研究授業を見せてもらいました。その時間、隣のクラスは自習で(担当教諭が研究授業に参加しているので)、密度の実験・実習をしていたので、私はこちらの自習を見ていました。子どもたちは、直方体の木片を目の前にして、その1cm^3の重さを測ろうという計画です。小さいので、のこぎりで切ることは難しい、ということになりました。そのとき、一人の女子生徒がいいました。「のこぎりで切らないでも、頭で切ればいいんじゃない」
注1 ここでヤング率の値を示したおきます。
伸びの弾性率(ヤング率、単位N/m^2)
Al 7.0
鋼20~21 銅 13 ガラス(クラウン)7.1 木材(樫)1.3 ポリエチレン0.076 (以上 ×10^10)
弾性ゴム
(2〜5)×10^(−4)
注2 物質の弾性力は、それを変形させた物体にはたらく力(外力の反作用)をいいます。
従って、弾性力 f と変形 x
とでは、向きが逆なのです。 比例定数を k とすると、f=−kx となります。