物理読み物41 場の強さ S-4 No248
2010年12月23日(木)
万有引力の場が距離の2乗に反比例するということについては、前に触れました。点状(0次元)の電荷によって作られる電場や、長い棒状の磁石の一方の極(0次元)でつくられる磁場も、
距離の2乗に反比例します。白熱電球は点光源(0次元)と考えてもよいので、これによってつくられる明るさは、同じく距離の2乗りに反比例です。このように点状(0次元)のものが、その周囲につくる場の強さは距離の2乗に反比例することは、幾何学的にも理解できます。
電場を例にとってみます。点電荷(0次元)からは、その電荷に比例した本数の電気力線が周囲の空間に一様に出ていて、その線の密度で、その点の電場の強さを表してみましょう。点電荷からの距離における電気力線密度は、空間の一様性からして、その距離を半径とした球の表面積で電荷を割ればよいので、電気量をQとすると、電場の強さは Q÷4πr^2
に比例することがわかります。つまり距離の2乗に反比例です。
このように、点状(0次元)の原因量が3次元空間につくる場は、距離の2乗に反比例しますが、このような例を挙げてみます。“海の底には塩の湧きだしている壷があるので、海の塩は塩辛いのです”という童話がありましたが、このお話による海の塩の濃度場は、湧きだし点からの距離2乗に反比例です。煙突から出た有害ガスが一様に広がるとすると、汚染場は煙突からの距離の2乗に反比例です。においの場もそうです。
点状(0次元)の原因量が2次元空間(平面)につくる場は、距離に反比例です。利根川の堤防が決壊したしたとき、村に押し寄せる水の様子をTVで見ましたが、その速度場は距離に反比例するといえそうでした。駅の改札口を出た人の密度場もこんなものでしょう。
点状(0次元)の原因量が1次元空間(線)につくる場は、距離に無関係で一定です。この例では、回路の中の電流場、庭に水撒きするとき、水道の蛇口につないだホースの中を流れる水の速さ場、レーザーの強度場なんかはこれでしょう。前に挙げた、煙突からの排出物の汚染場は距離の2乗に反比例するという例は、それが一様に広がる場合で、実際には、拡散しない線状のまま遠方にまで到達することがあります。これに、疾風汚染と名付けられて、公害裁判で問題にされたことがあります。距離に関係しないというのは、距離の0乗に反比例(比例!)ということです。
線状(1次元)の原因量が3次元空間につくる場は、距離に反比例です。長い蛍光灯による照度場は距離に反比例です。冬、風で鳴っている電線の音(もがり笛?)の強度場はどうでしょうか。同じような例ですが、高速道路をひっきりなしに走る自動車のつくる騒音場もこれでしょう。“直線電流がその回りにつくる磁場は距離に反比例する”
というアンペール則はこの例です。
次は、ソースが1次元で、フィールドが2次元の例で、このときには、つくられる場は一様です。海嶺で湧きだしたプレイトの速度場はこの例で、生徒が一列に並んで草むしりするときの速度場もこんなものでしょう。
平面(2次元)に原因量が分布していて、それが、立体的な空間(3次元)に場をつくる場合も一様場です。例としては、壁面全体が光源になっている室内照明の照度場、広い並行平面コンデンサーの中(間)の電場はこれです。雨の強さは高さによって変わらないというのはどうでしょネ。
まとめの表
場 0 1 2 3
原因量 0 / 0 −1 −2 表内の数字 0 は一様
1 / / 0 −1
−1 は距離に反比例
2 / / / 0
−2 は距離の2乗に反比例